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落乱元ネタ探し その6 潮江文次郎の得意武器・袋鎗

『落第忍者乱太郎』を読んでいて、これアレじゃないかなと思ったもの、他の本を読んでいてたまたま見つけたものなど、元ネタっぽい色々をメモする記事です。

 今回は、六年生の得意武器のうち、潮江文次郎の袋鎗(袋槍)について書いてみました。

※公式にこれだという発表がない以上、単なる個人の感想ですので、疑いながらお読みください。

※今回もとても長いです。引用部分や画像をザーッと見て、疑問があったら周辺を読んでいただくくらいがいいかもしれません。不要な情報とは思いませんが、余談も多めです(余談おまけのように、見出しや太字で示していますので、読むか飛ばすかお選びください)。また、目次から飛ぶ方法もお試しください。

※この記事には環境依存文字が含まれます。縄鏢の「鏢(金へんに票)」の字ですが、環境によっては表示されません。読みづらいとは思いますが、おつきあいください。

困るやつです(文字の画像はGlyphWikiからお借りしました)

【修正履歴】
 2022.05.23 「2.出典と思われるもの」に、名和弓雄 著『忍びの武器』の情報を追記

六年生6人の得意武器再確認

 最初に、六年生6人全員分の得意武器をまとめておこうと思います。

六年い組 立花仙蔵……宝禄火矢(ほうろくひや)・火車剣(かしゃけん)
六年い組 潮江文次郎……袋鎗/袋槍(ふくろやり)
六年ろ組 七松小平太……苦無(くない)
六年ろ組 中在家長次……縄鏢[金+票]/縄標(じょうひょう)
六年は組 食満留三郎……鉄双節棍(てっそうせっこん)
六年は組 善法寺伊作……?

~~ちょっと補足~~

 仙蔵の得意武器、宝禄火矢はわかるけど火車剣もだっけ?と思われた方もおられるかもしれません。『落第忍者乱太郎公式キャラクターブック 忍たまの友 天之巻』の仙蔵の紹介文に以下のような部分があるので、そこを見て上のように書きました。

忍術学園の中で火薬火器を扱わせればナンバーワンで、得意な武器は宝禄火矢や火車剣。

『落第忍者乱太郎公式キャラクターブック 忍たまの友 天之巻』(朝日新聞出版)p.73

“宝禄火矢と火車剣”ではなく、“宝禄火矢や火車剣”なので、他にも得意な火器があるのかなとも思います(火器全般得意で、代表的なのが宝禄火矢と火車剣という解釈がいいかもしれません)。仙蔵が火車剣を使うシーンは、第40巻p.241、アニメの該当回は、第16シリーズ第18話「水軍の作法の段」になります。

~~補足ここまで~~

 ではここから、文次郎の得意武器・袋鎗(袋槍)について書いていきます。

潮江文次郎の袋鎗(袋槍)

原作の登場初期は木へん、途中から金へんになったようです

 文次郎の袋鎗(袋槍)は、第34巻p.109が初登場でしょうかね。どういう武器であるかという説明は、第36巻p.39にあります。

 武器名の表記に「袋槍」(ヤリの字が木へんに倉)と「袋鎗」(ヤリの字が金へんに倉)がありますが、これについては、記事の後ろのほうにまとめて書きました。

1.原作の説明文

第36巻の説明の部分を引用します。

《しんべヱ》
潮江しおえ先輩せんぱいがなにかした

《団蔵》
袋槍ふくろやりだよ
やり穂先ほさきでね
なかにぎりかくしてたたかったり つえやありあわせのぼうにはめこんでやりとして使つかうんだ

出典:『落第忍者乱太郎』(朝日新聞出版)第36巻p.39

※ アニメのこのあたりの話は、第13シリーズ第10話「忍者の正しい心の段」なのですが、袋槍の穂先の形が原作と違う&特に武器の説明もありません。

 それから、作中ではないのですが、第49巻PREMIUM版の特別付録内「潮江文次郎のキャラ設定時のラフスケッチ」にも、先生手書きの説明がありましたので、そちらも引用します。

袋槍。鎗の穂先.懐中や筒に入れて腰などに下げておく。
   敵に出くわすと、杖や木の柄にとりつけて戦う。
   また、穂先を左手の中に握りかくして使う。

出典:『落第忍者乱太郎』(朝日新聞出版)第49巻PREMIUM版特別付録p.19

2.出典と思われるもの

 袋鎗(袋槍)の出典と思われる本は、『隠し武器総覧』名和弓雄 著(壮神社)です。この本は初版が1998年で、1977年に新人物往来社から出た同じ名和弓雄先生の『図解 隠し武器百科』の増補改訂版にあたります(実際、先生がどちらを使われたかはわからないのですが、今回は新しいほうを参照しました。隠し武器の部分の内容は、ほぼ同じと思われます)。

 両方とも絶版か版元品切れ状態なので、入手は古書になりますが、めちゃくちゃたくさん落乱の武器や道具が出てくるのでおススメです。今の相場は(状態次第ですが)5千~1万円くらいです。図書館でも探してみてください。

 袋鎗の部分を引用します(※目立たせたいところを太字にしました)。

腰さげの袋鎗

 中里介山先生の『大菩薩峠』に登場する、容貌魁異な小男、宇治山田の米友という人物は、淡路流の短槍の使い手で、 いつも四尺ほどの杖をたずさえて旅をしている。強敵に出くわすと、懐中から短い鎗の穂先をとり出して杖の先にとりつけ、無類の働きをする……という快男子である。鎗の穂先を左手の掌の中に握りかくして使うのだそうである。
 この米友は、もちろん架空の人物であるが、 このような方法は、昔から各流派で研究されていたらしい。
  槍術、 一指流では、懐中から取りださぬが、煙管キセル筒のような細長い丸筒の中に、袋鎗の穂先を入れて、腰にさげて歩くのである。
(中略)
 この点、袋穂は便利で、ありあわせた棒でも、竹竿でも自然木でも、筒ロの太さに削ってはめこめば簡単に柄がついてしまう。
(中略)
 昔はこの腰さげの袋鎗をもって旅行しているときは、四尺ほどの杖で、そのまま鎗の柄に合うものを持って歩いたらしい。が、杖をもたぬ場合は、山の自然木でも切りとって柄にしたのであろう。
(後略)

出典:『隠し武器総覧』名和弓雄 著(壮神社)p.159~161

 太字にしたところあたり、落乱の内容、ラフスケッチ内の内容とよく似ていますよね。この本では、ヤリの表記は「鎗」(金へんに倉)です。

 略した部分には、袋鎗の構造と、柄にする棒や杖に固定するための工夫について書かれています。ざっくり図にしてみました。

▲ 袋鎗の柄のつけ方
▲ 袋じゃない鎗はこんな感じ?

 袋ではない方の鎗のほうが、柄に固定する時の工程が多いんですね。だから、いざという時までは穂先と柄をバラバラに携帯しておくという手が使えない。

●2022.05.23追記

 『図解 隠し武器百科』のさらに前に名和先生が書かれた『忍びの武器』(人物往来社 1967年)という本があります。実物未確認で書けなかったのですが、このたびの個人向けデジタル化資料送信サービス開始にともない、登録さえすれば誰でも自分のPC、スマホから閲覧ができるようになりました。

 上の書名(太字下線部)クリック/タップで、未登録の方でも目次までは見られますので、どんな内容かご覧になってみてください。こちらにも、袋鎗の他、寸鉄、万力鎖、微塵、つぶて(印地打)、南蛮鉤(南蛮鈎)、鳥の子、打ち根などが載っています(『図解 隠し武器百科』『隠し武器総覧』にある鉄双節棍はなさそう)。武器以外では、遠眼鏡の兎の話などが読めます。

 この他にも、落乱の出典と思われるもの、忍者関係のものがたくさん読めるようになりました(スクショのアップ・送信禁止など、登録なしで利用可のものより規約は厳しいですが)。未登録の方は、ぜひ登録をご検討ください。

追記ここまで

(長めの余談)引用資料の元の元の……

※ そこまでは要らんという方は、3.原作の袋鎗(袋槍)の形状まで飛ばしてください。

●中里介山『大菩薩峠』

 引用部分の最初で紹介されている中里介山『大菩薩峠』についてもちょっと探してみました。大長編で未完なのでなかなか買うのも、と思っていたら、テキスト化されて青空文庫に入っていたので使わせていただきます。

 中里介山の公開中の作品リストがこちらで、『大菩薩峠』は全41巻丸ごと読むことができます。槍使いの米友(よねとも)は、テキスト検索をかけたところ第六巻「間の山の巻」からの登場でした。

 米友の天性は小兵こひょう敏捷びんしょう。この網受けに割振わりふられるものは、まず槍の使い方を習わせられるのを常例とする。米友はその常例によって、旅に来た浪人から淡路流あわじりゅうの槍の一手を教えられたが、三日教えられると直ぐにその秘伝こつ会得えとくしてしまいました。
 淡路流の槍は穂先が短い、てのひらつかむと隠れてしまう。穂先を左の掌で掴んで、右手で槍の七三のあたりを持つと、それで構えが出来る、その構えたところを相手が見ると、槍を構えているとは見えない、棒か竿か? と敵が当惑した瞬間に、短い穂先は掌から飛び出して咽喉元へプツリ。実に魔の如き俊敏なる槍であります。

出典:中里介山『大菩薩峠』第六巻「間の山の巻」第九章

箱惣はこそうの家にいる時分に、ひまにまかせて米友は自分で工夫して、自分が名をつけた杖槍つえやり。槍の穂だけを取りはずしてこみのところをり上げ、それをいつでもの中へめ込むことができるようにして、穂を懐中に入れておき、柄は杖にしてついて歩き、いざという場合には、それを仕込んで咄嗟とっさの間に槍にしてしまうという武器が出来たから、米友はそれを持って、頭には笠をかぶり首根ッ子へ風呂敷包を背負って、お絹とお松との駕籠のすぐあとへついて出かけました。

出典:中里介山『大菩薩峠』第十巻「市中騒動の巻」第十五章

 武器の描写のある部分を2か所引用しました(※目立たせたいところを太字にしてあります)。この引用部分にはありませんが、名和先生の米友紹介文にある「四尺」は、彼が持ち歩いている杖の長さではなく、身長の話のような気がします。

 袋鎗(袋槍)という呼ばれ方はしていませんし、柄との接合部分が袋なのかなかごなのかもわかりませんが(“柄の中へ嵌め込む”とあるのでなかごのような気も)、似た武器が使われているシーンは面白いですね。

●松浦静山『甲子夜話』

 淡路流の槍術というものは実在するのかなと思って、更に探してみたところ、こちらのブログに『甲子夜話』に出てくるという情報がありました。松浦静山という平戸藩の藩主が、隠居後に書いた膨大な量の随筆の中の一つのお話です。

>《巻之1目録の25 木下淡路守公定、槍術の事》
とあります。

『甲子夜話』ではなく『甲子夜話抄録』なのですが、同内容の文章が載っている史料が国立公文書館デジタルアーカイブで公開されていましたので、翻刻してみます。『甲子夜話抄録1』の、20~21コマにかけての部分です(※これも目立たせたいところを太字にしてあります)。

足守侯ノ先代木下淡路守公定ト云シハ槍ノ達人ナリ其槍穂殊ニ小ニシテ柄長シ即今ノ足守侯出行ニ持ス所ノ槍是ナリ予カ先加藤氏ノ(大洲侯)先モ皆ソノ門人ナリ世称シテ淡路流ト云シト予此人ノ事跡ヲ聞ニ槍ヲ以テ技ヲ抗スルトキマツ槍刃ヲ掌中ニ握テ露サス人因テ戦ヘキ物ヲ知ラス突進テカヽルニ輙其刃ヲ發シ遠ク刺ス人因テ當ルコト能ハスコレヲ無形ノ構ト謂フトソ

出典:『甲子夜話抄録1』松浦静山 著(国立公文書館デジタルアーカイブ)
合字、略字は開いてあります
(文字の画像はGlyphWikiからお借りしました。シテトキコト

(この当時の)足守藩主の先代(一代前の藩主)、木下淡路守公定という人は槍の達人で、使っている槍の穂はとても小さく、柄は長かった。(中略)世の人はこれを淡路流と呼んだ、と書かれています。

 で、ここからが槍術の具体的な内容です。正確に訳せそうにないのでふんわりですが、手の中に槍刃を握って見えなくする、相手は武器が何かわからないまま突進してくる、ここで初めて刃を出して遠くから刺す(柄が長いので、まだ相手と距離があるうちに攻撃可ということでしょうかね)、相手は避けようがない、みたいなことかと思います。「無形ノ構」という名前がついているんですね。

 武道家の方のブログでも『甲子夜話』のこの話が紹介され、“敵が何を持っているかわからない場合に敵に近づき、急に遠くから穂先を突き出されれば避ける事は難しいと思います”とありました。

『甲子夜話』のこの槍も、穂先の柄との接合部分が袋状かはわからず、柄もあらかじめついているように書かれているため、袋鎗(袋槍)のこととしてとらえてはいけないかもしれません。でも、穂先がそんなに長くないことや、先端を手の中に隠しておいていきなり刺す攻撃方法など、『落第忍者乱太郎』『大菩薩峠』の内容に類似した部分もありますよね。

 隠し武器(暗器)としての袋鎗(袋槍)の威力や怖さがちょっとわかった気がしました。

●日夏繁高『本朝武芸小伝』

『甲子夜話』の内容で更に検索をかけたところ(次世代デジタルライブラリーの全文検索機能を使いました)、この足守侯の話が『古事類苑』の武技部にも引用されていて、更に同じ流派について、『武芸小伝』という史料からの引用もあることがわかりました。

出典:古事類苑. 第25冊 - 国立国会図書館デジタルコレクション
※ 見開き画像の中央右が『武芸小伝』、左が『甲子夜話』からの引用です

『武芸小伝』も『本朝武芸小伝』という題名で国立国会図書館デジタルコレクションにありました。巻之七 槍術の『古事類苑』に引用されていた部分が下の画像になります。

出典:『本朝武芸小伝』巻之七 槍術

 木下淡路守利當(木下利当)の、出自、槍術、亡くなった年について書かれています。

 利当の祖父が木下二位法印家定(木下家定)で、父が家定の次男の宮内少輔利房(「淡路守」「二位法印」「宮内少輔」は官位)。利当の名前に豊臣がついているのは、祖父・家定の妹が豊臣秀吉の正室になったことから家定も秀吉に取り立てられて、木下、羽柴、豊臣の姓氏を授けられたからのようです。

 この方は幼いころから槍術を好んで、(ここからまた正確には読めないのですが)「精妙」「刺穿神ノ如シ」とあるので、物凄い達人だったんじゃないでしょうか。流派の名前は木下流。最後に、寛文元年十二月二十九日に亡くなった、享年五十九とあります。

 木下流については、コトバンクに載っていました。木下利当が創始者とあります。

木下流(読み)きのしたりゅう
精選版 日本国語大辞典「木下流」の解説

きのした‐りゅう ‥リウ【木下流】
〘名〙 江戸初期、備中国岡山県)足守藩主木下淡路守利当(としまさ)が創始した槍術流派

出典:木下流とは - コトバンク

 それから、木下利当のところにも、槍術について書かれていました。利当が開いたのは一流、のちに心流と言われ、一般には木下流・淡路流とよばれるとあります。

木下利当(読み)きのした としまさ
デジタル版 日本人名大辞典+Plus「木下利当」の解説

木下利当 きのした-としまさ
1603-1662* 江戸時代前期の大名
慶長8年生まれ。木下利房長男。寛永14年備中(びっちゅう)(岡山県)足守(あしもり)藩主木下家第2次2代。幼少のころから槍術(そうじゅつ)をこのみ,一流をひらく。のち心流,一般には木下流・淡路(あわじ)流とよばれ,木下家家伝の術となった。寛文元年12月28日死去。59歳。通称は熊之助。官名は淡路守。

出典:木下利当とは - コトバンク

 流派の名前、開祖利当公ご本人が名付けたのが一流、そこから心流へ変化、一般の人からすると、木下家のご当主が開いたから木下流、同じく淡路守様が開いたから淡路流と呼ぶという感じだったんでしょうかね。

 ちなみに、『甲子夜話』で紹介されていた木下公定のところに槍術についての内容はありませんでした(元禄赤穂事件関係のことが載っていて、それはそれで面白い)。

 淡路流槍術についての話はここまでにします。

おまけ・足守藩木下家の系図

 足守藩の木下家の人が何人も出てくるので、ちょっと図にしてみました。出典はコトバンクです。図の下にリンクを張ります。

足守藩木下家のざっくり系図(出典:コトバンク)

出典:足守藩木下家定木下利房木下利当木下利貞木下公定
出典:高台院(北政所)/小早川秀秋木下長嘯子
※八の下に白の文字の画像はGlyphWikiからお借りしました

 実は足守藩という藩の名前も木下家についてもまったく知らなかったのですが、ねね(?)さんや小早川秀秋というNHK大河ドラマでも常連の方々が出てくると、わかった気になれちゃいますね。

 余談はここまでにして、落乱の袋鎗(袋槍)の話に戻ります。

3.原作の袋鎗(袋槍)の形状

 原作の袋鎗(袋槍)、形状が何パターンかあったようなと思って、ちょっとまとめてみました。全部模写になります。

・水色…実物の写真が元
・オレンジ色…文字情報から明確に袋鎗(袋槍)であると判断できるもの
・黄緑色…文次郎が持ってはいるが作中に武器名の情報がないもの
(白黒環境で見ておられる方は図中の文字から読み取ってください)

抜けがあったらすみません。こっそり教えてください

 初期設定、第49巻PREMIUM版特別付録の袋鎗は下のような感じです。ラフ画からなので、先生の想定通り模写できているかわかりませんが、刃の部分が三角形っぽいタイプなんですね。

描かれた時期が正確にはわからないんですが

 思ったより色々でした。ざっくり3種類くらいでしょうか。いくつか持っていて使い分けているという解釈でいいのかな……?

4.アニメの袋鎗(袋槍)の形状

 アニメのほうからも拾ってみました。チェックしたのは(1)上でまとめた原作の袋鎗(袋槍)登場シーンのアニメ化部分、六年生の得意武器が印象的だった(2)第20、21シリーズエンディング、(3)25年SP「さらば忍術学園の段」、(4)30年SP「100%勇気!ドクタケ出城をやっつけろの段」です。作中で袋鎗(袋槍)とは言われていませんが、たぶんそうだろうというもののまとめです。

  • 第12シリーズ第19話「風魔の悪党の段」(第34巻p.109)※出ず

  • 第13シリーズ第10話「忍者の正しい心の段」(第36巻p.39、43)

  • 第15シリーズ第18話「予算会議の乱の段」(第37巻p.235)※出ず

  • 第16シリーズ第47話「照星と佐武衆の段」、第48話「はずむ砲弾の段」(第42巻p.142)

  • 『劇場版アニメ 忍たま乱太郎 忍術学園 全員出動!の段』(第42巻の園田村分)

  • 第20シリーズ第82話「兵庫水軍のオーディションの段」(第50巻p.109)

  • 第20、21シリーズED『風をきって』内(アニメオリジナル構成)

  • 第22シリーズ第64話「雨が降るのは誰のせい?の段」(第52巻p.226~227、229、232~234)

  • 25年SP「さらば忍術学園の段」(アニメオリジナル回)

  • 30年SP「100%勇気!ドクタケ出城をやっつけろの段」(アニメオリジナル回)

・ピンク色…アニメオリジナルの話やシーン

ほぼ文次郎が持った状態で出てくるので、目釘穴の確認はできていません

 アニメのほうも、結構バリエーションがありました。袋の部分が茶色く塗られていることが多いんですね。チェックした中では劇場版の「全員出動」と25年SP「さらば忍術学園の段」のみ、刃先から袋まで全部金属っぽい色でした。「さらば~」の袋鎗(と思われるもの)は、立体感が凄いです。実物(写真や映像含む)を参考にされているのかもしれませんね。

 あと、袋の部分が袋に見える(穴が開いている)のが確認できる回と確認できない回がありました。上の模写ですと、柄が装着されているものと、袋の下端が二重丸で描かれているものが確認できた回になります。

 上のは下手くそな模写ですし、色味もだいたいなので、ぜひ本編をご確認ください。とはいえ、Blu-ray化も配信もされていないものが含まれるので、録画がお手元にない方は「どう見ろと!」ってなっちゃうんですが。

5.袋鎗(袋槍)の分類について

 落乱に出てくる武器・忍器等を集めてある『落第忍者乱太郎公式忍器編 忍たまの友 地之巻』では、「袋槍(この本では木へん)」は暗器の章に分類されています。

『隠し武器総覧』では、「袋鎗(この本では金へん)」は投物篇、握物篇、鎖物篇、打物篇とある中の打物篇の中です。

『隠し武器総覧』には、隠し武器という名称は古文献にはなく、研究用の分類であること、暗器というのは中国で隠し武器をいう言葉であることが書かれています(p.13)。

 歴史の本などを見ていると、今は(便宜上?)そう呼ぶけれども、当時なんて言ってたかはまた別の話!という用語が多いですね。昔の言葉はそれはそれで気になるので、古辞書の類も見てみたりはするのですが、難しい。とても難しいです。

余談・ネット上で見られる古辞書

 古辞書については、素敵なまとめがありますので活用させていただくと良いと思います。

 下のは古辞書で見つけた可愛いやつです。リッス。ネットスラングっぽい(※ この『伊京集』は、昔の方が綴じるときに失敗したのか、ページ順がバラバラなので注意です)。

出典:伊京集 - 国立国会図書館デジタルコレクション

6.袋鎗(袋槍)の漢字表記について

 ふくろやりの漢字表記、2種類ありますのでまとめてみました。あんまり作中で説明されてないのですかね、他にもあったら是非教えてください。

上から時系列順になっています
※ 第49巻PREMIUM版の出版は2011年ですが、ラフスケッチの描かれた時期に合わせました

 サンプルが少ないのでなんとなくですが、先生は設定時に出典と思われる名和先生の本通り金へんを使われ、連載が新聞という媒体のためか、新聞の主な読者が小学生であるためか作中では木へんにすることになったのかなと。新聞には使える文字、使えない文字の決まりが各社にありますよね。「経営破たん」「思わく」など、一部だけひらがなになったところが気になりすぎる、例のあれの原因です。それとは別で、義務教育中のみなさんにあわせた基準というのもあっておかしくない気がします。

 その後もしかすると新聞社側の基準が変わって、金へんでもOKになったのではと考えています。長次の得意武器・縄鏢(金へんに票)も、初登場時の第34巻p.159、第45巻p.90では木へんの縄標でした。

 こちらの金へんのヒョウの字は、環境依存文字(JIS第4水準)でもあり、金へんのヤリよりも更に使用ハードルが高かったと思われますが、第47巻p.166ではちゃんと金へんになっています。同じヒョウの字を使う鉢屋三郎の得意武器・鏢刀(ひょうとう)は、初使用の第46巻p.183からしっかり金へんで説明されているため、第45巻と第46巻の間あたりでなにか変化があったのではないでしょうか。

 だいぶ後に出た『地之巻』のヤリが木へんなのは、作中でおそらく唯一説明のある第36巻から情報を引っ張ってきたからだと思われます。『天之巻』『地之巻』ともに、先生ご本人が最初から最後まで全部作られた本ではなさそうなので、多少の齟齬はあるかなと(作中で使われている文字なので、もちろん間違いではないですが)。

おまけ・ラフスケッチの描かれた時期はいつ?

 第49巻PREMIUM版特別付録のラフスケッチの描かれた時期を、ちょっと考えてみました。

  • 文次郎の原作初登場は第29巻p.26。第29巻の連載時期は、2000年10~12月。

  • 同じ特別付録内のラフスケッチには小平太、長次、仙蔵のぶんもあり、文次郎も含めて全員ゼッケンをつけている。4人の描かれた時期が同じと考えていいかもしれない。

  • 4人の中で原作初登場が一番早いのが長次の第23巻p.211(単行本化に合わせて描かれていると思われる章の扉絵も含めると、長次と仙蔵同時に第23巻第8章扉絵)。第23巻の連載時期は、1997年10~12月。単行本発売は、奥付ベースで1998年5月20日。

  • ゼッケンおよび仙蔵のラフスケッチにあるしんべヱのハナ水や喜三太のナメクジで火薬がシケるという内容から思い出した、アニメの六年生初登場、第6シリーズの春の大運動会話(出演したのは小平太、仙蔵、長次のみで、ゼッケンをつけるシーンもないのですが)の初回放送は、1998年4月20日~4月24日。

  • ラフスケッチは、アニメの運動会話に六年生を出したいという要望に合わせて描かれたものかもしれない。

  • 絵本の六年生初登場巻『あわてるにんタマ、テストでコケる!?』は1997年11月1日発売(文次郎、仙蔵、小平太、長次、伊作が登場)。

 というわけで、1997年のなかば~後半くらいには、六年生(留三郎以外?)の最初の設定ができていたのではないか、よって、ラフスケッチも同時期に描かれたものと推測します。

まとめ

 文次郎の得意武器・袋鎗(袋槍)の出典は、『隠し武器総覧』(もしくは、増補改訂前の『図解 隠し武器百科』)ではないかということを書きました。

 最初は武器3つほどをまとめて1本の記事にしようと考えていたのですが(同じ本からですし)、文字数が増えすぎたため1つずつに分けました。縄鏢(金へんに票)と鉄双節棍はまた今度にします。

 回し者かというくらい毎度コトバンクを使っていますが、辞書・事典類の情報が出典別に整理されており、万一情報が古かったり違っていたりした場合にも確認がとりやすかろうと考えてのことです。

事典・辞書の一覧 - コトバンク
 一部、元の紙の辞書にはある情報が載ってない等もありますが、文字検索一発で、これだけ多くの資料から手がかりを引っ張って来られるのは便利でしょうがないです。今後も使わせていただきます。

 今回の記事は以上です。最後まで読んでくださってありがとうございました。

【お願い】
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【お礼】
 この記事の参考資料は、主に『隠し武器総覧』名和弓雄 著(壮神社)ですが、2008年の暮れ、二た鈴様に情報をいただかなければ、たどり着くのはだいぶ遅れたと思います。お陰様で、やっと少しずつまとめたものを出し始めることができました。

 当時、鉄双節棍の出典探しに行き詰まっていたのですが、その旨メールでお伝えしたすぐ後に「見つけた」とご連絡いただいて、びっくりしたり喜んだりしながら購入したのが『図解 隠し武器百科』です。

 開いてみて、この本はかなり強力な落乱の参考資料!と確信を持ちました。増補改訂版にあたる『隠し武器総覧』のほうも、その後手に入れまして、今ではそちらを主に参照しています。

おススメです!

 また、アニメ第12、13シリーズの内容確認で、ひろひこ様に助けていただきました。第3~15シリーズは、本当に一部しかDVD化されていないので、当時の録画や感想メモなどをお持ちの方々に頼りきりです。ひろひこ様には、お母様が録画されていたものからの情報をいただいています(お母様が私の友人なのですがかわりに)。

 お二方とも、いつもありがとうございます。末尾になりましたが、お礼申し上げます。