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『レーザー』を導いてくれ
これまでの記事でちょいちょい出てくるワードの「光学系」。
「光学系」の説明をしっかりとしてくれるレーザ加工屋さんは意外なほどに少ない。
加工装置の操作は分かっていても、加工装置内部のレーザ光をレーザ発振器から加工点まで伝送してくれる光学系の中身や機能を知らないからだ。
レーザ光をただただ伝送するだけであれば光学系はレンズ1枚で十分だが、ほとんどの光学系はそうはなっておらず、複数のミラーとレンズに偏光素子、パワーメータやビームプロファイラにアッテネータなど電気的に制御する光学機器も組み込まれている。
光学系保護や作業者の安全のため、レーザ光が通る光路にはホコリなどが入ったりしないようにカバーをつけることもある。
センシティブな加工をする場合には、光路のパージや真空化、ミラーやレンズの温度安定化のための冷却機能をつけることを検討する。
量産装置であれば、光軸が多少ずれても自動で光学系調整をしてくれるオートアライメント機能だってつけることもある。
全部つければフルアーマー化したRX-78-7なみにコテコテの光学系になり、結果として抜群な加工安定性を発揮してくれるが、その分コストも上がるし、作れる会社や有識者も限られる。
そして光学素子や光学機器が増えれば増えるほど、もともとのレーザ発振器から出力されるレーザの出力は減衰していく。
強くするためにフルアーマー化したら、ジェネレータ出力が足りなくなってビーム兵器が使えなくなるからジェネレータを大型化し、重量増加で機動性が下がるのを補うために追加のバーニアやスラスターをつけなければいけなくなるという、永遠に終わらないサイクルに突入する。
そのためMSも光学系も目的を明確にしないといけない。
レーザで鉄板をシンプルに切断することと、内部にリチウムが入った電池缶を貫通することなく封止するセンシティブなレーザ溶接を24時間365日安定して続けることでは、光学系に必要な機能は大きく異なる。
24時間365日の安定稼働を求められるのであれば、故障しにくく安定稼働するレーザ発振器を選定し、光学系にはパワーメータやビームプロファイラは不可欠だ。
鉄板のレーザ切断を簡単な加工というのではなく、目的に合わせてレーザ発振器の選定と光学系の設計をすることが重要なのだ。
レーザ加工を産業で活用してもらうためには、それぞれの用途に適した機能とコストが当然のように求められる。
鉄板の切断は、レーザ以外にも実現できる加工方法はたくさんある。
ライバルが多いのだ。
しかも市場はほぼできあがっている。
その市場で後発のレーザが戦うためには、切断面の美しさよりもコスパで勝たねばならない。
バッテリー缶の封止溶接だって、今はレーザ溶接だがこの先は分からない。
レーザが主役であることは変わらないでほしいが、レーザの中でもライバル関係は存在する。
同じアナハイム製のMSであるνガンダムとサザビーが敵対するのと同様、レーザ発振器の種類の違いで競合する場合もあるのだ。
光学系は目的とレーザ発振器に合わせて、常に最適化を要求される。
まさに職人レベルの技術と学者レベルの知識が必要とされるのだ。
もう少し注目して見てみてもよいのではないだろうか。