『レーザー』になれなかった電力の行方
前記事からひき逃げにより、本記事はレーザへの変換効率3部作の最終作となる。
めぐりあい宇宙であり、星の鼓動は愛であり、邪神〈イリス〉覚醒である。
心してエンディングを飾らねばなるまい。
先の記事で電力からレーザへのエネルギ変換効率ランニングを実施し、映えある1位に半導体レーザが輝いた。
その変換効率は60%を超える。
だがしかし、残りの40%の電力はレーザになれないことになる。
残りの電力は、どこにいったのだろうか。
その行方こそが3部作のラストを飾る。
レーザになれなかった電力もまた、電気から姿を変えている。
レーザでもなく、電気でもないその姿を想像すると理系諸氏はアレしかなさそうと想像されているだろう。
正解だ、それは熱である。
レーザになれなかった電力は、ほぼ全てが熱エネルギになっているのだ。
出力100WのCO2レーザの場合、エネルギ源の電力は2000Wで、そのうち1900Wが熱エネルギになり、100Wがレーザになることになる。
エネルギー保存の法則である。
ソーラレイにあてはめると、161.5PWが熱になる計算だ。
この熱エネルギを兵器に使った方が効率良さそうとかは、絶対に言ってはいけない。
それと宇宙空間で161.5PWをどうやって処理するのかという疑問も、愚問である。
それはユメ溢れる宇宙世紀の技術がクリアしてくれるに違いない。
ソーラレイでなくても、レーザ発振器の熱処理にはしっかりとしたケアが必要になる。
多くの熱はレーザ発振媒質にエネルギを与える時に発生する。
その熱はレーザ発振媒質内部の密度を不均一にして、できあがるレーザの形やエネルギ分布に影響を及ぼすので、温度の一定化が必要になる。
ここで重要になるのが、冷却水や冷却エアによる温度調整である。
そのため、レーザ発振器内部の光学系とそれが乗るベースプレートには、シムシティの道路のように冷却水やエアの配管が張り巡らされている。
この配管はアートのようで、内部光学系とあわせて眺めていると、時間は光のように過ぎ去っていく。
内部光学系とその温度制御こそがレーザ発振器の性能を決めるのだが、内側が美しいレーザ発振器は出てくるビームもまた美しい。
内面の美しさは、レーザも人類も重要なのである。
安定した温度制御と美しいビームを維持するため、レーザ発振器には必ずと言っていいほどチラーがもれなくついてくる。
チラーはレーザ発振器本体と同じくらいの大きさになることもあるが、その理由はレーザになれなかった電力の変身したあとの熱エネルギなので、どうか優しく受け入れてあげてほしい。
受け入れてあげれば、機械加工では想像すらできない加工を、しれっと実現してくれるのだから。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?