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ソロモンが焼かれている

めぐりあい宇宙編はいい。
戦場が地球から宇宙に移り、上下左右のどこからでも命を狙われる可能性のある空間戦闘は、焼酎を煽っているはねいぬまで緊張してしまう。
とんがり帽子のビットやジオングのオールレンジ攻撃は、恐怖と緊張から焼酎を飲み忘れて、ロックのはずが水割りになるほどだ。

めぐりあい宇宙編を観ながら、改めてソーラシステムが非常に良く考えられた兵器であると感心させられた。
ソーラシステムとは、角度可変ミラーを超たくさん宇宙空間に配置して、各ミラーで反射した太陽光を一点に集め、太陽光のエネルギ密度を高めることで、照射対象を加熱溶融させて破壊するという、とってもシンプルな兵器である。

虫眼鏡で太陽光を集めて、黒い紙を焦がすことと少し似ているが、だいぶ違う。
虫眼鏡のようなレンズは、レンズへの入射角度と照射位置、そして焦点距離の3セットで動くので、集光点のサイズやエネルギ密度や常に一定にした状態で走査するというのがとても難しい。
集光点の位置を動かすために、レンズの角度と照射対象への距離を連動して動かさないといけないからだ。

その点、超たくさんのミラーで構成されたソーラシステムは、各ミラーの角度を独立して動かすだけで、照射位置を自由に走査できる。
焦点距離の制限から解放されるので、配置場所やレイアウトの自由が高く、劇中ではジオン軍に気付かれることなく、こっそりと準備を進められた。
また、最小集光サイズはソーラシステムを構成しているミラー1つのサイズになる。

こっそりと準備されたソーラシステムは、いよいよソロモンに照準を合わせる。
宇宙空間では、地球圏のように大気による減衰は大幅に減り、太陽光を遮るものは小惑星や戦闘で生じたデブリくらいになるだろう。
そんな遮蔽物でさえも、複数の方向から太陽光を集めることで減衰のリスクを抑えられるソーラシステムにとっては、些細なものでしかなくソロモンは焼かれていった。

ソーラシステムで焼かれていくソロモンにいるジオン軍兵士達の混乱も仕方のないことだ。
ソーラシステムには超たくさんのミラーがあり、それ自体が光源の役割を果たす。
1個2個破壊したところで、何の効果もない。
しかも発光源の場所を絞ろうにも、光を散乱する物質が限られた宇宙空間では、照射されている光軸上にいない限り光を見ることができず、見えた瞬間には焼かれている。
結果として、発光源に気づいた者は気付いた瞬間に消え去り、混乱は混乱を呼び、ソロモンは大ダメージを負った。

ソーラシステムは超威力でありながら、高い隠匿性と自由度によって不意打ちを実現できた戦略兵器なのである。

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