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ドラえもんの神回(なぜ大長編だけジャイアンはいいやつなのか?)

ドラえもんに最高のサイコスリラー作品がある。
この完成度は異色だ。

藤子先生は大人向けのピリっとしたSFも描くので、そのエッセンスが混じってしまったのかもしれない。

まず、この作品は、登場人物が異色だ。絶対に一度しか登場しないだろうレアキャラ、ジャイアンの叔父さんが登場する。

ジャイアンの叔父さん

ヒゲがぼうぼうのクマみたいな叔父さんだ。名のある柔道家らしく、ジャイアンはこの叔父さんを尊敬している。「俺、叔父さんみたいになりたいんだ」

ジャイアンは謎の人物にケンカで負けてしまい(※この箇所、覚えておいてください)、叔父さんにどうすればケンカに強くなれるか尋ねる。すると、「喝ーーーっ!」

一喝されてしまう。「おまえの言う強さは、ケダモノの強さだ。真の強さとは弱い者を助けるためにあるんだ」
「お、叔父さん……。俺が間違っていたよ」

ジャイアン、改心。

ニュージャイアンは、さっそくのび太のもとを訪ねる。「俺は間違ってた。俺はこれから弱いものを助けるんだ」

よし、これからは、いじめられなくて済む。うなずくのび太。だが、この改心は一瞬のきらめきにすぎなかった。

「一番弱いやつと言えば、のび太、おまえだ。いじめられたら助けてやるから、外に出てみろ」
「そんな……。なにも、わざわざいじめられに外に出なくても……」
「なんだと、せっかく守ってやるって言っているのに俺の言うことが聞けないのか!」

さすがだ。理はすでにどこにもなく、自分の欲望に完全に支配されてしまっている。

ここでドラえもんの名台詞。
「叔父さんの言っていることが、まったく理解できていないね」
前半のハイライトだ。

後半の舞台は、屋外。ジャイアンに脅されて、目的もなく街を歩くのび太。その後ろに少し距離を置いてジャイアン。

こういう日に限って、いじめられない。というか、普段いじめるのはジャイアンだ。スネ夫の線もなくはないが、スネ夫は動物的な勘で逃げてしまう。

「こ、こんなに俺が助けてやるって言っているのに……、おまえはよっぽど助けられたくないみたいだな……」

光と闇の二重人格者。ついさっきまで光の側にいたはずの心は、すでに向こう側にいる。

二重人格者のお話はぜひこちらもご覧ください(↓)

この変心、最高だ。極上のサイコホラー作品を思わせる。

のび太に襲い掛かろうとするジャイアン。けっきょくは本性にあらがえず、叔父さんの言うケダモノになりさがる。ここが物語のクライマックス。

物語にはオチがあり、ドラえもんがタイムマシンでジャイアンを過去に連れていき、自分自身と対決させる(「謎の人物にケンカで負けた」のくだりにつながる)。

そのオチがあってもなくても構わないくらい、サイコ作品として完成していた。

ジャイアンはそもそもが二重人格者だ。大長編(映画)のときだけいいやつなのは、その性質が関係している。

ドラえもんファンのわたしの大長編(↓)

わたしの理論では、悪いジャイアンがいいジャイアンに変身するためには、ある程度の時間を要する(15~30分)。

よって、10分程度の普段のお話では悪いジャイアンのままいるしかなく、尺の長い大長編では、いいジャイアンに変身した後のシーンまでたっぷりと描くことができる。

今回ご紹介した神回は、通常の短いお話のなかで、変身シーンが2回も出現したことになる(悪いジャイアン→いいジャイアン→悪いジャイアン)。大長編だって、こんなことは一度もなかった。

レア、かつ異色の作品になった理由はここにある!

わたしはこの二重人格者が気になって仕方ない。

わたしはドラえもんの中でこのキャラを一番愛しているのかもしれない。

読んでくれてありがとう! 感想もお待ちしてるね!

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