ラジオに求める物が変わってきた

 丁度1年前のことだろうか。
 NHKラジオ第2で、毎週日曜日の夜7時30分からやっている『視覚障碍ナビラジオ』という、視覚障碍者向けの情報番組で、静岡県内にある視覚障碍に特化したとある作業所を特集していた。
 そこでの利用者さんへのインタビューに、高校の同級生だったmちゃんが出演していたのだ。
 mちゃんがその作業所に行っていることは知っていたのだが、まさかインタビューに出てくるとは思わなかったので、出てきた時は本当にビックリした。
「ナビラジオ聞いたよ」
番組終了後、私はすぐに彼女にメールを送った。
「どこでその情報知ったの?もしかして県視協(静岡県視覚障碍者協会)のメールで回ってた?」
彼女からは少し驚いたような返信が返ってきた。
「いや違うよ。ナビラジオはちょこちょこ聞いてるから」
と返事を返した。
 すると彼女からこんな返信が返ってきた。
「ひかちゃんAM聞くんだー」
「うん。ここ数年はむしろAMの方がよく聞いてるかも」
「へえ、意外。ひかちゃん高校の頃は私はFMしか興味ないって言ってたから」
そうなのだ、私はここ数年FMよりもAMをよく聞くようになった。
 FMも全く聞かないわけではない。
 最近はiphoneのアプリで、地元はもちろん、様々な地方のコミュニティFMを聞いている。
 しかしJFNやJFLといった民放のFM局はあまり聞かなくなったような気がする。

 私がラジオを聞くようになったのは、小学2年生の頃だっただろうか。
 地元の盲学校への送り迎えの道中の車内で、母がかけていたカーラジオのK-mix(静岡FM放送)が、それまでカセットテープでは聞いたことがないような音楽がたくさん流れてくるのがおもしろかったのだ。
 小3になってからは、珠算検定に向けた勉強で、毎日カセットテープを使わなければならなくなったので、自分のラジカセを買ってもらった。
 それにより車の中だけではなく、家でもラジオを聞くようになった。
 その時から30代になるまで、ほとんどFMを聞いていた。
 冒頭のmちゃんも言っていたように、学生時代から20代にかけての私は、FMしか興味がなかった。
 音楽がたくさん流れるFMに比べて、AMは話ばかりでつまらない。
 それにAM特有のあのこもったようなモノラルな音もあまり好きではなかった。
 言い方は悪いが、AMはじじくさい文化だと思っていた。
 30代になるまでは。

 そんな私が本格的にAMを聞くようになったのは、体調を崩して仕事に出られなくなった頃だった。
 日中やることがなくて、何となくミニコンポのラジオのつまみをAMに合わせてみた。
 するとその時にSBSラジオでやっていた午後のワイド番組『ラブラジ』がとてもおもしろくてはまったのだ。
 その流れでNHKラジオ第1や、東海ラジオや、CBCラジオも聞くようになっていったのだ。

 先日友人とスカイプでラジオについて話していて改めて思った。
 ラジオを聞くようになった10代から20代にかけての自分と、現在の自分は、ラジオに求める物が変わったのではないかと。
 10代から20代にかけての自分は、パーソナリティのトークよりも、最新の音楽を求めていたように思う。
 周りにはまだあまり知られていないようなアーティストや楽曲を知ることで、良くも悪くも優越感に浸ったり、音楽から自分の生きる糧を見出していたように思う。
 前前回の記事で書いたエルレやアジカンはもちろん、ペンネームの由来にもなっているグレープバインなど、私が好きなバンドやミュージシャンの多くは、FMを聞いていて出会った人たちがほとんどである。
 ところが30代になってから、最新の音楽に疎くなってしまった。
 いや、疎くなったというか、興味が無くなったのかもしれない。
 このこともFMをあまり聞かなくなった大きなきっかけだった。
 ここ最近の曲は、歌詞にも深みが無いし、アレンジもごちゃごちゃしていてどうも落ち着かない。
 そんな最新曲ばかりが流れてくるFMを聞いていても、現在34歳のおばちゃんにはついていけないのだ。
 音楽と同じように、ここ最近のFMパーソナリティのノリにもどうも落ち着かないと感じるようになった。
 年を重ねているので当然かもしれないが、ここ最近自分よりも若いパーソナリティが増えてきたように思う。
 そんな今時の若い子のノリや勢いにも、音楽同様ついていけなくなってきたのだ。
 それだったら最新曲があまりかからなくて、FMに比べてどこかのんびりした雰囲気のAMの方が、今の私には聞いていて心地良いのだ。
 現在の私は、勢いのあるトークや最新のいけてる音楽よりも、安定感があるトークと様々な情報をラジオに求めるようになったのかもしれない。

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