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それな、ふろりだ

 「最近の言葉はよく分からん」
 10代20代の頃は、そう嘆く大人が嫌いだった。しかし30代真っ只中の今はどうだろう。
 それな、ふろりだ、エモい、チルい…。
 何なんだその言葉は!初めてそれらの言葉を聞いた時、「最近の言葉はよく分からん」と嘆く大人たちのように、怪訝に思う自分に気づく。
 それな→それ納得の略
 ふろりだ→お風呂入ってくるから離脱するねの略
的な意味で使われる言葉のようだ。
 なぜわざわざ略すのか。「ふろりだ」って、どこかの国の都市の名前のような言葉にしなくても、「お風呂入ってくるから離脱する」と言えば、あるいは書けばいいではないか。
 「それな」も、「それ納得」と言ったり書いたりすればいいだけではないか。どちらもそんな長い言葉でもないんだし。
 「エモい」はまあ何となく分かるが、「チルい」に関しては、どういう時に使えばいいのか今だによく分からない。
 このままでは言葉がどんどん短くなっていって、最終的には記号化されてしまうのではないか。そう思うと、物書きという言葉を生業にしている身としては、とても恐ろしいことである。
 だがその一方で、最近そのような言葉をじつはよく使っていたりするのも事実だ。
 ラインなどのチャットで、仲間の意見に共感を覚えた時に、「それな」と返す時がある。「それ納得」と書くよりも、「それな」と書く方が3文字で済むから楽なのだ。
 またつい先日もとあるツイキャスの配信を聞いていて、そろそろお風呂に入りたいからと配信から落ちるタイミングを見計らっていた。すると他のリスナーの方が、「じゃあ僕は離籍します。」とコメントを打った。よし今だと、私もそれに続いて、「私もふろりだ。♪」とコメントした。
 べつに「私もお風呂入ってくるから離脱します」と書けばよかったのだ。しかし配信内での話がかなり深刻だったため、あまり長いコメントを書くと、コラボ者の声と、コメント読み上げの音声とが重なって、会話が聞き取れなくなる恐れがあった。なので「ふろりだ」と書くのが適切だろうと思ったのだ。
 「それな」も「ふろりだ」も、リアルな人との会話ではほとんど使わないが(というかチャラいと思われそうなので使いたくない)、ネットではそれらの言葉は使い勝手が良いのでつい使ってしまうのだ。言葉がどんどん短くなっていくのはそういうことかと思った。最近の言葉も案外悪くないのかもしれない。

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