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『PM!!』 4話 世界中探したのか?!(ユウヒビール・ドライNEXT競合プレゼン)

万通堂の鬼の大沢CD肝いりの競合プレゼンが始まった。そのパートナーにラッセルフィルムが選ばれた。会議室にはフリーのプランナーや若手の演出がいる。皆、消耗している。かれこれ三週間以上堂々巡りの企画出しを強いられている。
ラッセルフィルムからは社長の武藤が後方支援、チーフ・プロデューサーの中西、プロデューサー中邑、プロマネの左庭がメインでついている。
小島・太田・山下・栗岡の外部スタッフ、万通堂のプランナー津田、コピーの田山誠司が大量の企画の山にげんなりしている。壁には企画が埋め尽くすように貼ってある。
「いつまで続くんですかね」太田プランナーが愚痴る。
「見えないね」小島ディレクターもぼんやり。
「終わらない仕事はないと」山下プランナー女子も遠い目。
「もう3回くらいループしてますよ」栗岡プランナーが企画の山を見てげんなり。
「大沢さんだからね」津田プランナーが諦め気味にいう。
「キャラメルマキアートは小島さんすよね」スタバの大袋を下げた左庭が元気に入ってくる。
「ああ。ありがと」
「カフェオレは太田さん」
「はいはい」と、ドリンクを買ってきた左庭が配る。
「どれもいい企画なのに」と、左庭。
「だよなー」中邑も続く。
そこに、大沢CDがユラっと予定外に現れる。緊張が走る。
「お疲れ・・・」大沢の声は凄みがある。
「お疲れ様です」皆、ビビっている。
「見せろ」大沢がどかっと椅子に座る。
「はい・・・」皆が企画を見せる。が反応がない。
いくつか壁にある企画を見ている中の一つが、大沢の目に止まる。
「これ」と、大沢が紙を剥がす。
「え?」と小島。
「なんとかなんねーか?」大沢が言う。
それは、スポーツ界のまだ見ぬ若武者を五人集めて、そのプレイをコラージュする企画だった。
「ああ、でも、それ大沢さん、ないなって・・・」と、中邑。
「ある」大沢が前言を簡単に変える。
「は?」
「10人にしろ!世間の人が見たことのない、10人の才能を持ってこい。それで次の時代を作るぞ」と大沢のテンションが上がる。
「・・・」シーンとなる会議室。
ホワイトボードに書きなぐる大沢CD。
「NEXT BEER 、NEXT DECADE. DECADE 10 ユウヒNEXT DRY ! どうだ?」
「いいですね!」と武藤社長。
「スケール感あるなぁ」と中西。
コピーライターの田山が書いたコピーがアレンジされた。
「DECADE 10って入るだけで、広がるな・・・。第一弾はスポーツで、第二弾はクリエーターとか、アクターとか、どんどん広げていけるかも」
皆、口々に頷く。
「この企画を軸にプレゼンする。表現に落とし込んだものを一人最低三つ考えろ。五つでもいいぞ!」
(え・・・)となるプランナーたち。
「田山、コピー、練り直せ。効くやつにしろ」
「はい」
「武藤社長、10人、見たこともない才能、探してくれ。次のプレゼンまでにな」
「はい。左庭!」と急に振られる。
「は?」
「頼むぞ!」武藤が言う。
「ええっ・・!」
大沢たちが去る。会議室に残された面々。どんより。
「各界のまだ見ぬ強豪か・・」
「どうやって探す?」
「今、検索かけてます。野球、サッカー、柔道、バスケ、卓球、バトミントン、バレー、ゴルフ、ラグビー・・・」
左庭がMacBook必死にかちゃかちゃ。左庭のMacBookはシールだらけで傷だらけだ。
「キリないな。それに20歳以上じゃないとビールだからNGだしな。そもそもスポーツなんだから十代から活躍してんじゃね?」と小島。
「ですよね」津田が相槌を打つ。
「時代を変える人ってどんな人なんだろう?」と山下女子。
「既成の枠組みを超えるってことだから、今までの成功の道筋とは違ってもいいんじゃない? 野球ならメジャー、サッカーなら欧州、体操ならオリンピックとかさ。そうじゃない、新しい価値観を持ってやってる連中だよね」と田山が言う。
「そのメンバーが決まらないと企画できないっすよ」と小島が代表でクレーム。
「そりゃそうだ」中西が頷く。
皆が左庭を見る。
「そんな〜」プレッシャーをひしひしと感じる。
「左庭くん、任せた。俺は眠りたい」と、机に突っ伏す小島。
「起きてくださいー」と揺らす左庭。
「なんかヒントくださいよ」と中邑。
「とにかくジャンル別に表現は表現で考えてみよう。野球、サッカー、バスケ・・・それに、並行して探す人物を当て込み、後で帳尻合わせて行くか、微調整するか・・」と中西が鼓舞する。
「やりますか」栗岡が伸びをする。
と、それぞれが白い紙に向かい、書き始め、時々、アイデアをぶつけ合う。深夜一時を回っている。
朝方、みんなが引き上げた後、左庭はリストアップしたスポーツ選手のことを調べている。SNS、FB、チームの公式HPなどなどを使って連絡先や成績・戦績などを表にまとめている。いつの間にか、寝てしまう。
 
翌日、その資料を持って、中邑と中西と左庭が万通堂を訪れている。すごい立派なオフィスビルである。クリエーティブがPCに向かって作業している。打ち合わせしている。忙しく働いている。
皆、スマートだ。ジーンズにパーカの徹夜明けの左庭は浮いている。
(なんかかっこいいなー。ていうか、別世界だ・・・)と眺めてる左庭。中邑に呼ばれて慌てて急ぐ左庭。
第一クリエーティブ(通称1CR)の部屋。奥に鎮座しているのは大沢CDだ。
ラッセルフィルムの持ってきた資料を睨みつけるように見ている。
「これだけか?」
「は?」と中邑。
「これだけかって聞いてるんだ!」
「はい」中西が答える。
「予備候補は・・・」と中邑が見せる。
引っ手繰るようにして資料を見る大沢。
「やり直し」
「でも、有望な選手は大抵マスコミに知られて・・・」中邑が言おうとすると、
「俺は、見たこともない才能を見つけてこいって言ったんだ。こいつら、見たことある連中ばかりじゃないか!」
「すいません!」直立で謝罪する二人。
凍りつく1CRの室内。
「お前ら、世界中探したのか!!!」
「・・・いえ、まだです」中邑が答える。
「世界中探してから来いって!!以上っ!!」
大沢は背中を向ける。怒りで陽炎が立っている。
震え上がる左庭。初めて見る人種だ・・・。
 
「ははは・・・。食らったかぁ」資料を見ながら、会社で武藤社長が呑気に笑う。
「参りました。久しぶりでしたよ」中西CPが苦笑する。
「でもどうしましょう?」中邑Pがげんなりしている。
「世界中探すしかないだろうなぁ」武藤が言う。
「ええっ?」左庭驚く。
「お前、本当に探したんだろうな?」武藤は疑うように言った。
「探しました・・・と、思います」左庭、少し自信がなくなる。
「探せ、もっと」
「は、はい・・・」左庭どんより。
 
会議室。中邑と左庭。MacBook。調べ物。検索。山ほどの資料。
「どうせ、何持っていっても納得しないんだよ、あのオッさんは」と中邑。
「中邑さんは、大沢CDは何度も仕事してるんですか?」
「定期的にな。お前が入社して来る前だけどな、最後は。あれもきつかったなー・・・プロデューサーなって日が浅かったし、毎日胃がキューっとなるんだよ。そのうち、吐いちゃって、胃液。病院行ったら、急性胃腸炎だって」
「えー・・・そこまで・・・」
「お前も、覚悟しとけよ。ここからだから狂ってくの、あの人が」
「そんなぁ・・・脅かさないでくださいよ」
デスクの里村が珍しくお茶をいれてくれた。松宮のおにぎりも差し入れ。
「ああ、すいません」
ちらっと企画の方向を覗く里村デスク。
「私、昔さ、弓道やってたんだー。やっぱりマイナー競技は選んでもらいないネェ」
おにぎりを頬張りながら、ふと、中邑が思う。
「どうせ、ありきたりじゃ、納得しないんだから・・・視点を変えて競技も少し幅見るか・・・。例えばアーチェリーとか、射撃とか」
「えー?今からですか・・・」
「例えばだよ。登山家とかさ。カヌーとか。マイナー競技も入れたら、なんかすごいやつ見つかるんじゃない? 野球とサッカー外さなきゃ、大丈夫じゃない? あの人、そもそもスポーツなんて見ないんだし。むしろ、マイナー競技の方が絵柄、面白いんじゃないかな、プランナーに表現考えてもらうにしても」
「ああ・・。なるほど」
「その線で、一回探ろうぜ」
「はい!」
 
翌日、遅く。大沢CDがラッセルフィルムにやってきた。壁中に貼られたA4やB4のコンテを次々と見ていく。あるかも・・・と思うのには付箋がたまに貼られる。ピリピリした空気。プランナー陣も口を開かない。
「どうですか。いけそうでしょう?」と中西が耐えかねて口を開くと大沢が、
「ジャンルはどうなってる?」と言った。
中邑がホワイトボードに、手書きで大きく書いてあるジャンル表を見せる。
左庭がお手元資料を皆に配る。
「まず、メジャースポーツから、野球、サッカー、ラグビー、テニス、バレー、柔道など。そして、マイナースポーツからプロレス、ダンス、トライアスロン、スカッシュ、縄跳び、ムエタイ、ロッククライミング、カヌー、射撃、カバディ・・・など」
「何だ、カバディって?」と小島。
「インドの人気スポーツで、なんて言うか鬼ごっこと格闘技が合わさったような・・・一応W杯もあります」動画を見せる左庭。
「面白いけど、地味すぎだろ」と山下。
「いや、あるかもな」と栗岡。
「誰がいいの?」と田山。と
「日本代表のインド人とのハーフの22歳テリー尾長です」と左庭。
「こういうよくわかんないけど肉弾的な激しいのがワンカット入るとバラエティ感が出ますね」
「うん、当たりが激しいのはいいよ」
「ビリー・アイリッシュのバックダンサーってのも良くないですか?」
「それなら、縄跳びの日本チャンピオンって、すごくね?ほら、すごいよ技とスピード・・」
「ソフトバンクの育成の160km/hのストレートもいいよなー、やっぱり外せないよ野球は」
プランナーたちの意見が活発になってきた。
「サッカーは?」と大沢。
「まったくの無名で、すごいのが・・・まだ・・・」と中邑。
「世界中探したのか?」大沢が言う。
うっ・・・また出た、との空気が流れる。
「あのー・・・実は、僕の後輩の選手が、実は今メキシコの一部リーグにいまして・・・」と、屈託なく手を上げて発言する左庭。
「え?」となる、中西。
画像を見せる左庭。技が切れ切れ。ドリブルからシュート。生き生きとした若者。
「背は小さいんでメキシコでやろうと思ったらしいんです。山田圭一といいます」
「幾ら何でも無名過ぎないか?サッカーだからなぁ・・・」と田山。
「・・・こいつだ」と大沢。
「は?」と中西。
「無名の奴が世界を変える、だからおもしれーんじゃねーか。お前ら、普段からタレントや有名人に頼りすぎなんだよ」と、大沢。
「お前、連絡取れるのか?」中西が聞いた。
「はい、さっき、一応、名前出させて欲しいってスカイプしといて、OKはもらいました」左庭、段取りがいい。
「中西、こいつのシュートシーン撮れねーかなぁ?カメラに向かってボールが飛んでくるような、すごいのをよ。もちろんVコン用にだ」と、無茶振りする大沢。
「撮れますか?・・・ですか。・・・撮りますよ。もちろん。中邑、これからメキシコ行って撮ってこい。現地のコーディネーターは俺が手配する。まだ、最終間に合うだろ? LAに行け、そこからメキシコへ入れ」
「は? えぇ・・・?・・・はい」中西の言葉に、さすがに慌てる中邑。
「いーから、早く行け!」中西、命令。
「はいっ!」と、中邑、とりあえずダッシュで会議室を出て行く。
「近日中にはお見せできるかと・・・」と中西がニヤリとする。大沢もニヤリ。
周囲、このやり取りに、ちょっとビビるくらい引いている。
「じゃ、みんな他のジャンルの選手を決めて、コンテに落とし込んで」と中西。
「はい」誰も逆らえない。
「コピーは?」と、大沢が言うと
田山が四つ折りの紙を一枚、ポケットから出して見せる。
『次の時代、掴め。YOUHI NEXT DRY』
そこに、赤で『。』を『!』に直す。
「遠慮しなくていいんだ、こういうのは」と大沢が言い、その紙が、ホワイトボードに貼られた。
『次の時代、掴め!YOUHI NEXT DRY 』
 
●編集室。Vコン作業中。
『Vコンとは、プレゼンする際にクライアントに企画をわかりやすくイメージしてもらうため、その企画に近い映像資料をだいたいの尺(30秒から60秒)に編集し、音楽やナレーションを仮に入れたものだ。この作業が本末転倒なのは言うまでもないが、今や、慣例化してしまっている。プロダクションとしてはかなりの消耗戦になる、地味で辛いギリギリの作業である。』
監督の小島がケラケラ笑っている。
「このカバディって競技、馬鹿みたいに面白いなー。一度、生で見てみたいよ」
「いやー、僕も今回で初めて知ったんですが、W杯まであるんですもんねー」
「この日印のハーフのやつかっこいいなぁ。決まったら人気出ちゃうんじゃない、左庭くんのおかげで」
「いえー。そんなー」
二人ともほぼ寝ていない日が続いているので、やたらとハイだ。
「中邑ちゃんの分、空けて待ってるんだけど、大丈夫なのかなぁ・・」
「いやー、連絡ないんですよ。さっきからLINEしてるんですが」
「しかし、中西さんすごいよね。あの流れで、今すぐ空港行けって」
「いや、俺もビビりました」
「しかも、行くしね、中邑ちゃんが」
「それも、まじビビりました。すごいですよね、二人とも」
「長いからね、あの二人。とはいえ、Vコンのためにメキシコ行くってなぁ・・・」
「ですよね」
「勝負してるよなぁ、大沢さんと」
「え?」
「こっちも引かないから、必ずプレゼン勝てますよね、ってさ」
「ああ・・・」
その時、 LINEが来る。
『今、データ、送った。Wi-Fi全然飛んでない!ここ!』
「来ました!」
データを読み込む左庭。MacBookに映し出される映像。
『中邑です。現地より送ります。ちなみにめちゃくちゃ暑いです。左庭の後輩めちゃくちゃいい奴で、しかも相当上手いです。では、山田選手お願いします』
アングルが変わり、山田がデフェンスを交わして綺麗なシュートを決める。それを何パターンか。おまけにビールの飲みカットも撮ってくれている。
(商品まで持っていってるのか・・・さすがだ中邑さん)左庭は驚いていた。
『ありがとうございます!さすがです』
『中邑ちゃん、さすがー!(コジマより)』
「さ、つなぐぞ」
小島が、データを読み込み、映像を加工してコントラストをつけ、さらにざらっとさせる。それを組み込み、曲に合わせるとVコンは、力強く仕上がった。
「できたぁ・・・!」
「いい感じですね」
「うん、これなら大沢さんも文句言わないだろ」
 
一時間後・・・。大沢が編集室に来て、モニターを見ている。
「なんで、ボレーシュートじゃないんだ? こんな綺麗なシュート見たくないんだよ、俺は!」と吠える。
「ええっ?」となる小島、左庭。
「中邑は何撮ってんだ! 中西! 今すぐ撮り直させろ!」
「左庭!」中西が左庭に振る。
「え? はい!」
中邑にスタジオから電話する左庭。いったん、編集室から出る。
「マジかよ!もう空港向かってるし!スタッフ、バラしたし。つーか、わがまますぎねーか、それ!はじめから言ってくれよ!」ビール飲みながら中邑移動中。ブチ切れている。
「ですよね・・・」
「あー、もう! とにかく戻って山田くんに頼んでみる。お前も連絡してくれ」
「はい」
電話を切った後、慌てて山田選手にLINEをとりあえず送る左庭。
編集室。中西がいる。大沢はいない。
「中邑さん、撮り直しに戻ってくれるそうです」
「おお。(歌舞伎揚をかじる)・・お前、カツ丼は好きか?」
「はぁ・・好きです」
「お前は、カフェのランチプレートで食べるカツライスと蕎麦屋のカツ丼とどっち選ぶ?」
「蕎麦屋です」
「そういうことだ」
「は?」
「がっつりカツ丼を味わえってことさ」
「・・・(意味わかんない)」
「中邑ちゃん、間に合うかなぁ・・・」小島監督が遠い目をした。
歌舞伎揚げの2枚目に手をつける中西。
「大沢さんがプレゼンしたいのは熱量なんだよな。熱量が高いCMは、今でもやっぱり視聴者に届くんだよ。ワンカットも手を抜いてない血の通ったものはな。目に見えないものも映っちゃうからなぁ、映像は。ま、それをVコンにも求めるのが、あの人らしいっていうか」
「中邑さん・・・」心配そうな左庭。
「大丈夫さ、任せておけば・・・」と、中西が笑う。
 
メキシコ・・・。スコールの中、待っている中邑。
ため息をつく中邑。
「メキシコ、雨季にはスコールあるんですよ。もうすぐ止みます」と山田選手。
「そうですか」と中邑。
「左庭先輩、頑張ってますか?」
「ああ。はい、目一杯走ってますよ」
「はは・・・変わんないなぁ。あの人、高校の時も運動量はんぱなくて、攻め上がりも、戻ってのディフェンスも全力で。ボランチだったから」
「今も変わらないですよ 」中邑は笑った。
雨・・・スコール。
「あ、雨上がるな」と、空を見上げる山田選手。
やがて日差しが射し、濡れたグラウンドがキラキラ光る。虹。
中邑にアイデアが浮かぶ。
 
「届きました!」と左庭が中邑からのメールに反応。
「送って」と小島監督。
届いた映像は、山田の髪もユニフォームも濡れていて、泥だらけになってボールを追う姿。そしてボレーシュートというよりは倒れこむようにしてゴールに蹴り込む泥臭いシュートだった。ワンバンして、スリップしたボールが、キーパーの指先を弾いてネットを揺らすと、ネットから水飛沫が飛んだ。
「おお、いいじゃん!じゃ、ストレッチして、山田選手がジャンプしてからHS、蹴る瞬間からノーマルに戻して、着地寸前でまたHSに戻して・・・」と小島がイフェクトをかけて編集を始める。
しばらくして・・・。編集室に戻ってきて、仕上がりを見ている大沢。
飲みカット。シズルカット。10人の若武者の分割画面からDisplayカット。
「ご苦労様です!(立ち上がってスタッフに一礼!)さ、プレ行くぞ!」
ぞろぞろついて行く万通堂の部下。
「ふぃ〜っ・・・」ぐったりする小島。
左庭もぐったりするが、すぐに「すいません、データとDVD4枚お願いします」とスタジオのアシスタント氏に指示。微笑んで見ている中西。
 
ひと月くらい後・・・。
定食屋・松宮のカウンターで、ビールを飲んでいる中邑、中西、左庭。カツ丼ならぬカツ煮をつまみにしている。テレビでYOUHI NEXT DRYのCMが流れている。わりに普通のタレントCMで、こんなの初めて!とか、ユウヒ史上最高品質とか、いっているような感じの仕上がりだ。
左庭たちのプレゼンは負けたのだ。
「こんなのに負けたっていうのが悔しいですね」と左庭がブツブツ言いながらビールをゴクリ。
「まぁ、時の運さ、競合プレなんてな」と中西もゴクリ。
「しかし、あれは疲れました。メキシコ弾丸ツアー」と中邑がグラスを飲み干す。
「中邑もまた鍛えられたなー」と中西がビールを注いでやる。
「はい・・・(苦笑)」と、ビールを受ける中邑。
「マスター、厚揚げあります?」と左庭が頼むと、そこに、大沢CDが武藤社長と入ってくる。
「あ・・・」左庭、驚く。
「お疲れ様です!」と、直立の三人。
「大沢CDから、次の仕事をいただいた。お前らのチームで頼む」
「え?」
照れたようにニヤリとする大沢CD。
「ありがとうございます!」頭を下げる中邑、中西。遅れて左庭も。
「大沢さん、どんな企画ですか?」と、中西。
「まず、一杯くらい飲ませてくれよ」と、苦笑いする大沢。
「いや、企画見せてもらってからです」中邑が言う。
笑い声。グラスが触れ合う。企画の話をしている面々。
ビールの追加を運びながら左庭は「この人たち、懲りない大人だなぁ・・」とクスリと笑う。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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