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今年3度目の羽田低空飛行見直しのための議員連盟総会レポート

こんにちは。羽田問題解決プロジェクト(通称:羽プロ)です。「羽田問題って?」という方はこちらもご覧ください。

今回は、7月29日に行われた羽田低空飛行見直しのための議員連盟総会(通称:国交省レク)の報告です。ざっくりいうと国交省レクとは、羽田新ルート問題を解決したい議員が国土交通省と質疑応答をしつつ解決の糸口を探る場で、議員を通じて住民も事前質問ができ、当日も発言機会はあります。

一朝一夕に事態が動く問題ではありませんが、2024年はわりとハイペースで開催されており、7月29日が3回目でした。


なぜ今年は国交省レクが多めなの?

ひとことでいうと、あまりにゼロ回答が続くことを、住民だけでなく温厚な議員の皆さんもさすがに看過できなかったからですかね……あんまり責めるようなことは言いたくないけど……

  • 3月18日の国交省レクがあまりに不誠実だったので、4月11日にやり直しとなった(その前も不信感が募ってはいた)

  • 羽田新ルート問題解決策の検討会だということになっている「羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会(通称:固定化回避検討会)」が2024年8月で丸2年開かれておらず事実上の塩漬け状態

3回目はどうだった?

直近の国交省レクと比べて誠実な情報提供がなされ、得るものがあったというのが議員・住民に共通した感想でした。7月に着任された国土交通省側の室長の方針やお人柄もあるのかもしれません。

住民からの事前質問と国交省回答

細かい話は省きますが、住民からの事前質問と国交省回答、筆者のコメントを簡単に記載します。

Q1. 固定化回避検討会はどうなってるの?

「2機同時着陸の技術検証に終始」と回答するのみで具体的説明なし。議員が「進展がなくとも報告すべき」「座長のメンツにも関わる事態だ」と追及するも、なぜ2年間も開催できないのか、何がネックかも回答せず。
唯一、7月着任の室長が「個人的にはこの状況は良いとは思えない、次回検討会はお正月を迎えないくらいでと個人的には……」と個人的コメント。

これでも「前回までと比べて誠実」な対応です。
そもそも、固定化回避検討会は、対案検討のために始まったはずなのに「羽田新ルートと同じ滑走路の使い方で2機同時着陸する技術検証で、現在のルートを通らなくなるかは回答できない」そうで対案になるのかも怪しいのですが、さすがに2年間開かれず何も報告できない検討会って民間でもありえないですよね……。

Q2. 羽田新ルートによる増便効果は国交省が言ってきたほどないよね?

国土交通省は計画当初から「羽田新ルートによる増便効果は年間3.9万回」と説明してきましたが、4月のレク後に議連から羽プロの検証結果を文書で提出・質問したところ「羽田新ルートによる増便効果は年間1.1万回」という回答を得ていました。今回の国交省レクでは、その言質を取った形となります。

文書への回答がなかなか国交省から出てこなかったものの、議連事務局長である衆議院議員松原仁事務所が粘り強く回答を促した結果、上記の回答を得ていたと聞いています。増便効果盛りすぎという話に加えて、1.1万回というのは増加率にして2.5%なんですね。下図の通り、羽田新ルート運用開始の数年前まで国交省自らNGとしていたルートをわざわざ選ぶほどの効果ではないように見えるのですが、何なんでしょうね?

首都圏空港の機能強化に係る検討について(国土交通省航空局平成25年11月)より

(資料5)首都圏空港の機能強化に係る検討について(PDF形式:4.1MB)
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/kouku01_sg_000101.html

Q3. 管制官の強化・拡充に至った理由と将来計画との整合性は?

1月2日の羽田空港での衝突事故を受けて開催された、6月24日の衝突事故対策委員会中間とりまとめに「管制官の人的体制の強化・拡充」「将来的な航空需要の増大」との言及があったことを受けての質問。
退職や産休育休などによる欠員補充が主眼で、現体制でも安全性は担保されており「強化」ではない、成田・羽田は2020年計画で十分であり現時点では新たな需要は想定していないとの回答。日本全体での計画・目標は把握していないため別途回答するとの室長答弁。

とはいえ、2024年から2023年の19年間で管制官は16.7%減少、航空機は1.5倍、ひとりあたりの取り扱い機数は1.8倍という話もあり、現場は大変なのではとは思います。国家公務員は日本国籍必須なので民間企業以上に労働人口減少の影響を受けるはず。増便計画でも考慮されていればいいんですが。

Q4. 羽田新ルートじゃなくても目標値達成できてるよね?

羽田新ルートの必要性に関する国交省説明は以下。

  • 従来ルートでの発着回数は、増やせても82回/時。

  • あらゆる可能性を検討したが、羽田新ルート以外に90回/時発着できる選択肢はない

ところが、国交省が提示した2,3月の運用実績によると、3月に従来ルートで90回/時以上発着したのは3回(90回/時、95回/時、95回/時)。それに対し、羽田新ルートでは2回(94回/時、90回/時)。
羽田新ルート以外でも90回/時の運用実績が出ていることをどう説明するのか?」との質問に国交省は回答できず持ち帰り

思うところはありつつも、4月のレク以降ずっと羽プロ&議連が強く求め続けてきた(&拒まれてきた)運用実績を提出いただけたことはありがたい話です。

Q5. 東京都と千葉県とはどんな話をしてる?

国交省と千葉県自治体により構成される「羽田再拡張事業に関する県・市町村連絡協議会」に比べて、その東京版である「羽田空港の機能強化に関する都及び関係区市連絡会」が弱腰

具体的には、千葉側が「さらなる都心ルートの活用」「固定化回避の皺寄せが千葉に来ないよう徹底せよ」と強い申し入れを行いWebサイトにも公表しているのに対し、東京側は「騒音や部品欠落対策」「情報提供」「固定化回避検討会はまだかとの確認」などに留まる。都議会や区議会での個別説明依頼などもなく、住民説明会の開催要請も一部自治体のみ。

他方、固定化回避策が今後出てきた場合は関係自治体として千葉側とも協議するものの、千葉の要求が固定化回避策の検討前提になってはいないとの国交省回答。

個人的には、千葉の自治体は当たり前の仕事をしているだけで東京も動くべきではあるものの、本来は自治体間で対立するのではなく、地方空港や鉄道との分散も含めて協力すべきでは、と強く思いました。

国交省レクに参加したいと思ったら

そういうわけで今年3度目の国交省レクの報告でした。

もどかしさを感じる場面もありますが、問題解決の糸口を見つけるには不可欠な国交省レク。普段の生活では見えづらい議員の動きを見られる場でもあり、羽田新ルート問題にお困りの方には一度参加いただきたいと思います。

自治体議員や国会議員の紹介で参加する方もいますが、心当たりがない場合は、羽プロにお問い合わせください。


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