Vina-GPU 2.0: Further Accelerating AutoDock Vina and Its Derivatives with Graphics Processing Units
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jcim.2c01504
1. 本研究の学術的背景と学問的「問い」は、現代の薬物探索が大規模な化合物データベースから目的の化合物を見つけるための仮想スクリーニングに直面しているという事実にあります。このプロセスは複数のドッキングツールを使用し、かつ効率性と精度を求められています。その中でも、AutoDock Vinaとその派生ツールは最も一般的であり、現代の薬物探索で分子ドッキングの標準的なツールとなっています。そこで本研究における学問的「問い」は「これらのツールをGPU(グラフィックスプロセッシングユニット)を用いてどれだけ高速化できるか」ということです。
2. 本研究の目的は、AutoDock Vinaとその一部の派生ツールを、新たなドッキングアルゴリズム(QuickVina 2およびQuickVina-W)と組み合わせて更に高速化する方法を提案することです。これにより、複合的なシーンや仮想スクリーニングの精度向上を目指し、大規模な仮想スクリーニングの普及をサポートします。また、それぞれ異なるドッキングアルゴリズムを持つこれらのツールに対して異なるGPUアクセラレーション戦略を取ることで、本研究の独自性と創造性が発揮されています。
3. 本研究の着想は、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)が大規模な計算問題を効率的に処理する能力を持つという事実から得られました。また、GPUはコスト効率が良く、ユーザーにとっての操作性が良いという利点もあるため、GPUを用いてドッキングツールを加速することで、薬物探索の効率性を大幅に向上することが期待できます。
4. 本研究ではVina-GPU 2.0という新手法を開発し、AutoDock Vina、QuickVina 2、QuickVina-Wという既存のドッキングツールと比較して、平均でそれぞれ65.6倍、1.4倍、3.6倍のドッキング加速を達成しました。その際、ドッキングの精度も維持しています。さらに、Vina-GPU 2.0の使用を容易にするためのユーザーフレンドリーなインストールフリーのグラフィカルユーザーインターフェースツールも開発しました。
5. Vina-GPU 2.0の有効性は実際の薬物探索のケース、つまりDrugBankデータベースからのRIPK1とRIPK3というタンパク質キナーゼターゲットに対する仮想スクリーニングによって検証されました。その結果、Vina-GPU 2.0は意義ある加速性能を示しながらも、既存のツールと同等のドッキング精度を維持していることが確認されました。