Polyamine detergents tailored for native mass spectrometry studies of membrane proteins
1. **本研究の学術的背景,研究課題の核心をなす学術的「問い」は?**
メンブレン(膜)タンパク質の複合体とその他の分子との相互作用を検討するための強力な手法であるネイティブ質量分析(Native MS)には、生物学的な構造や非共有結合の相互作用を保持する能力が必要ですが、洗剤の選択によってはそれが難しい場合があります。そこで本研究の科学的な「問い」は、ネイティブMSのために設計された新しい洗剤が、メンブレンタンパク質の研究にむかって新たな可能性を開くかどうかということです。
2. **本研究の目的及び学術的独自性と創造性は?**
本研究の目的は、ネイティブ質量分析におけるメンブレンタンパク質の調査のための新しい洗剤を合成し評価することです。これらの洗剤はスペルミン(一種のポリアミン)に様々なアルキル尾部が結合した化合物で、高い電荷還元能力を持つことが特徴です。
3. **本研究の着想に至った経緯や,関連する国内外の研究動向と本研究の位置づけは?**
ネイティブ質量分析では、タンパク質複合体から洗剤を取り除くための衝突活性化というプロセスがあり、そのエネルギー要求は使用する洗剤によります。これまでの研究では、電荷密度が増えるに従ってタンパク質複合体はより不安定になり、褐色洗剤に含まれるメンブレンタンパク質からにじみ出る電荷還元洗剤を探す努力が行われてきました。この課題を解決するため、ポリアミン(電荷還元分子)を持つ洗剤を設計するという着想が得られ、これが本研究の立ち位置です。
4. **本研究で何をどのように,どこまで明らかにした?**
本研究では、ネイティブMSのために設計された新種のスペルミン洗剤を合成しました。様々な構造及び細胞膜通過ヘリックスの数を持つ一部のメンブレンタンパク質を用いて、ポリアミン洗剤がネイティブMS研究に適切な特性を示すかを評価しました。結果として、これらの洗剤は非常に強力な電荷還元分子であり、スペルミンを用いた際の約10倍の効果性を示しました。
5. **本研究の有効性はどのように検証した?**
本研究では、新たに合成したポリアミン洗剤が、ネイティブ質量分析において効率的に電荷還元をする能力を有しているかどうかを評価しました。具体的には、抽出したメンブレンタンパク質をマルトシド洗剤で溶解し、その後ポリアミン洗剤を添加して分析を行いました。その結果、ポリアミン洗剤を添加することで、タンパク質の電荷還元と非共有結合の保持が改善していることが確認されました。