Comparative single-cell transcriptomic analysis of primate brains highlights human-specific regulatory evolution
本研究の学術的背景は、人間の認知機能の進化が大脳皮質の拡大と細胞多様性の増加によるものという仮説です。しかし、これらの形質の進化を推進するメカニズムはまだよく理解されていません。これは一部、人間と非人類霊長類の高品質な細胞解像度データが不足していることが原因です。学術的な「問い」は、これらの進化を推進するメカニズムは何か、ということです。
本研究の目的は、5種の霊長類(人間、チンパンジー、ゴリラ、マカク、マーモセット)から得られた単一細胞表現データを活用し、進化の過程で細胞レベルでどのような遺伝子の発現パターンの違いが霊長類の中で見られるかを解析し、その意味するところを理解することです。これは認知機能の進化に焦点を当てた新規のアプローチです。
本研究の着想は、霊長類の認知能力の違い、特に人間の進化過程での認知機能の向上は、脳のどの部分やどの細胞でどのような遺伝子の働きによってもたらされたのか、という点から得られたものです。
本研究では、57種類の同種の細胞タイプを特定し、細胞タイプごとの遺伝子共発現ネットワークを作成しました。その結果、遺伝子の発現パターンは一般によく保存されていますが、人間と非人類霊長類の間で大規模な違いが存在するということ(14,131のうち3,383、24%)を明らかにしました。
本研究で発見した遺伝子の発現の違いの機能的な意義を評価するためには、共発現ネットワークの変化を、19種の動物からのメタ解析共発現ネットワークを通じて評価しました。その結果、これらの遺伝子の一部が、非人類動物すべてで広範に保存されている共発現を持ち、人間では強い相関関係を持つことを示しました。
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