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子どもの成長に合わせて“進化する家”をつくる~ハンディハウスプロジェクト10周年インタビュー vol.1

ハンディハウスプロジェクトは、今年、結成から10年になります。

建築家やハウスメーカーが家の間取りやデザインを決めていくのではなく、住む人が自分好みで決めていけるように。「どんな家にしようか」という最初の妄想から作る過程まで、住まい手となる施主と、一緒に作業をしながら家づくりを楽しむ。「世界にひとつだけの家」が完成したときに、喜びとともに家への愛着も自然とわいてくるはず。そう信じて、私たちたちは、「妄想から打ち上げまで」を合言葉に、“施主参加型の家づくり”を提案してきました。

※ハンディはお施主さんが中心となって家づくりを進めるといった考えに基づいて、お施主さんを「プロジェクトオーナー」と呼んでいます。

でも、ハンディ流の家づくりって、実際には、プロジェクトオーナーさんたちのその後の生活に何かしらの影響はあったのかな…。勝手に自分たちが盛り上がってただけじゃ…。

そんなことが気になり、10年目の節目となるこの機会に、メンバーが担当したお施主さんに会いに行き伺ってみることにしました。

第一回目は、2016年にテラスハウスのリノベーションを行った前田さんご夫婦と、担当したハンディ荒木の対談です。

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前田拓哉さん、愛さん(写真右から2人目、3人目)
2016年、ハンディと中古住宅のリノベーションを行う。当時、娘さんは小学1年生、息子さんは4歳。愛さんは元々DIYが好きで、ハンディの考え方にも共感。物件購入から1年後のリノベーションだったため、住みながら工事を行った。
荒木伸哉(写真 右から1人目)
ハンディハウスプロジェクトの立ち上げメンバー。フットワーク軽く施主の要望を形にすることをモットーに、全国どこへでも駆けつける。子どもと一緒につくるプロジェクトkoproのメンバーとしても活動中。
寛野雅人(写真 右から4人目)
2021年、大学を卒業後ハンディハウスプロジェクトに参画。様々な現場で設計施工をしながら勉強中。特に、"モノを再利用すること"に興味があり、それを個性として活動に活かしたいと考えている。将来は、地元東北でハンディハウスのような活動を広めたい。

自分好みの家にして変わった生活スタイル

荒木:久しぶりですね。

愛さん:ほんとに。工事終わった後も、時々遊びに来てくれたりしてたけど、久しぶり。忙しい?

荒木:ボチボチです。おかげさまで忙しくやってます。

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ーー自宅のリノベーションが終わってから5年経ちますが、いかがですか?ハンディと家を作り上げてから、以前と比べて生活とか変わりました?

愛さん:とにかく片付けるようになりましたね。花とかも飾るようになりました。以前住んでいた賃貸は、子どもが小さかったのもありますが、散らかっていることが多くて。でも、このリノベーションした部屋だけは気持ちよくしてたいっていう気持ちが生まれましたね。すごく気に入ってるので。

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(写真)一番のお気に入りのソファ。内部にはキャンプ用品を収納している。家族4人で座れる小上がり席のような大きな作りにした。

愛さん:あとは、夫がよく料理をするようになりました。

ーーそうなんですか!キッチンも新しくリノベーションしたんですよね。キッチン変えたことと何か関係はあったんですか?

拓哉さん:かっこいい空間で気に入ってて、そんなところで料理をすると気分よくって。楽しいです。

愛さん:作業台もすごく大きくなったし、食洗器もつけてもらったし。使い勝手もあがってるしね。

ーー気に入ってる空間かどうかで生活スタイルも変わるんですね。

拓哉さん:変わりますね。以前のようなキッチンだったら今もあんまり料理やらないかも。

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(写真)少し高い位置にあるキッチン。カウンターに料理を並べてビュッフェ形式で食事することも。

暮らしながらのリノベーション まさに“ライブ”のような現場

荒木:実は、最初にお話いただいたとき、ご要望と予算が合わなくて、一度お断りしたんです。

愛さん:そうそう。今思うと、あの予算じゃ足りないですよね。当時はその辺わからなくて。その後、1年ほどでお金貯めてもう一度お願いしたんです。

拓哉さん:スゲー節約しました(笑)。

ーーもう一度お願いしてくれたんですね。どうしてハンディに依頼くださったんですか?

愛さん:自分がDIYとか、ちょっとしたものを自分で作ったり直したりっていうのがもともと好きだったのもあって、リノベーションも自分でやってみたいなっていう気持ちがありました。住宅関連の雑誌を読むのが大好きで、ハンディを何度か見て、住む人と一緒に家を作るっていう考えにも共感して、いつかお願いしたいと思ってたんです。

ーーで、実際ハンディと家づくりをやってみてどうでした?

荒木:住みながらのリノベーションでしたね。

愛さん:そうなの。家具とかものがそのままある状態で荒木さん大変だったと思う。

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(写真)工事中の夕食。即席で作ったテーブルで楽し気に食べる子どもたち

荒木:大変ではありましたが、ちょっと聞きたいこととかあるときに、いつも近くにいてくれてよかったです。

愛さん:当時、自宅でライターの仕事をしていて、段ボール箱を机にして構成を練ったりしていました。ちょうど忙しい時期で、一階にこもったりもしていましたが、お昼ご飯一緒に食べたりしながら、家のことや家族のこと、色々話しましたよね。

荒木:いつも自宅でお仕事されていたので、寸法どれくらいがいいかなといったちょっとしたことも、「愛さんお願いします!」って呼んだら来てくれて、相談できたのは僕にとってもよかったです。

愛さん:そうやってリアルタイムで対応してもらえるのは普通じゃありえないと思う。これか、“ライブ感”って思ったね。

工事佳境に起きた間取りの大幅変更

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拓哉さん:実は、キッチンカウンターは逆だったんですよ。

ーーえ?そうなんですか?

愛さん:それが大事件なんだよね。

拓哉さん:工事は進んでいたんですが、途中からイメージと違うって妻が泣き出して。荒木さんにちょっと相談がありますって電話したら、急いで飛んできてくれたんです。

愛さん:その日にきてくれた。

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(写真)最初はキッチンがリビングから見て横向きになる予定だった。水道工事まで終わった段階の変更の相談だった。

愛さん:自分が思っていた以上に、リビングの方までキッチンが迫ってくるなと、作っている途中に見えてきて。圧迫感が出そうだなって不安に思い始めたんです。荒木さんはちゃんと計算して想像していたと思うけど、自分にはそのとき想像できていなかった。

荒木:でも、結果今の状態でよかったと思いますよ。モヤモヤしたまま出来上がるよりも言ってくれてよかったです。

ーー最初の仕様だったら、家族がリビングで過ごす方を見ながらキッチンに立つこともできてなかったってことですね。

愛さん:そうですね。ほんと申し訳なかったけど、今の形にしてくれてよかった。相談したらすぐに飛んできてくれて。結果、お気に入りの場所になりました。このカウンターに食事を並べてビュッフェ形式で夕食を囲んだり、夫婦でカウンターで晩酌をしたり、とても楽しい時間を過ごせてます。

ーーそういった臨機応変に相談できるのも、一緒につくる醍醐味かもしれませんね。

愛さん:そうですね。特に、ハンディの皆さんは、相談しやすい雰囲気があります。友だちっていうと言い過ぎかもしれないけど、すぐに無理って言わないで、「じゃあやれるためにはどうする?」みたいな空気感もある。それを、会社に持ち帰らないで、現場で判断して私たちがいるところで決めていってくれるのも信頼できたし安心感がありました。

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(写真)当時の図面を見る荒木

荒木:前田さんたちは、子どもが成長することで、部屋の間取りとか必要なものが変わってくると思うから、変えていける家、“成長にあわせて進化していけるような家”にしたいって、最初の打ち合わせで言ってたんですよ。

ーー家を進化!?ですか?

愛さん:そうなんです。出来上がった当時は、子どもも小さかったので、家族みんなで一緒にいられる家がいいと思いました。一番気に入っているソファも、4人が一緒に座れるものを作ってもらったし。でも予想通り、変化していきましたね。

ーーどんなふうに変わりました?

愛さん:2人とも大きくなって、自分の部屋とかプライベートの空間を欲しがり始めましたね。3階は、2部屋に分かれていたものを、広い一部屋にリノベーションしてもらって、子どもたちが走り回ったり、ダイナミックに遊べるようにしてもらいました。でも、今は区切って分けて使っています。

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(写真)家が完成した直後の家族写真

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(写真)二部屋に分かれていた部屋を、トイレの位置を動かして一つの広い部屋につくり変えた。

ーーコロナで自宅にいる時間も増えたので、生活スタイルも変わりますよね。

愛さん:家族全員が家にいることが多くなったので、そういう意味でも個室がほしくなりましたね。ずっと一緒にいるから一人になれる場所がほしくなった。家づくりに参加して、子どもの成長だけではなく、その時々の状況に合わせて変えられることがわかってよかったなって思ってます。

ーー自分で色々変えているんですか?

愛さん:そうですね。子どもたちの本が増えてきたから、棚を自分たちで付け加えたり、壁も塗り替えました。

拓哉さん:よくいじってますよ、ほんとに。

愛さん:特に去年、コロナで自宅にいることが多かったのもあって、階段の壁とか全部塗り替えたりしてました。何かいじるとこないかって探してましたね(笑)。

ーーもともとDIYってしてたんですか?

愛さん:もともと好きでしたが、ハンディとやってからはさらにハードルが下がりました。実際に現場を見て、ビスの打ち方を教えてもらったり、トイレに漆喰を塗ったりする中で、自分でもここまでやれるんだなっていうのがわかって、色んなことにチャレンジしやすくなりました。

拓哉さん:毎月いじってるよね。

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(写真)2人の子どもたちもDIY参加

ーーお子さんもDIY参加したんですよね?

愛さん:やりましたけど、すぐに外に遊びに行っちゃいました(笑)。

荒木:でも、断熱材運んだり、けっこうお手伝いしてくれてましたよね。近所の子どもたちとか、前田さんちのお子さんじゃない子も手伝ってくれました(笑)。

ーー家づくりの過程を間近で見た子どもたちに変化はありました?

愛さん:家を大事に使ってくれるようになるかと期待していたら、「汚してもまた塗ればよくない?」って言うようになりました(笑)。

ーーそれ新しい発想かも!

拓哉さん:家を変えたり直したりするのが身近になりましたよね。リノベーションを体験しながら暮らした影響は大きい。2か月間、家が変わっていく過程を見てきたので、どんな風に変わるのかを知って、家を変えることに抵抗がなくなりました。

愛さん:子どもが大きくなったら、ここ直せばいいじゃんとか、直すには予算はこのくらいかなとか、想定もできるようになりましたね。変えられるから、間取りにとらわれすぎないのも気楽ですね。

荒木:あぁ、そうやって家づくりを柔軟に考えてくれているのがすごく嬉しい。僕たちもハンディをやってきたかいがある。

ーー今日はこの春ハンディの仲間に加わった、寛野くんからも質問があるんですがいいですか?

愛さん:どうぞどうぞ。

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寛野:ハンディのオーナーさんは、小さいお子さんがいるご家庭が多い印象なんですが、オーナーさんから見て、頼みやすい建築家の年齢層とか特徴とかあるものなんですか?

愛さん:自分たちと世代が近いっていうのは頼みやすいですね。今ではハンディのメンバーにも子どもができたり、結婚して家庭を持ったりした人が増えてきていますよね。だから、より一層同世代の家族からの依頼が増えると思いますね。

寛野:なるほど。同世代だとオーナーさんから要望を言いやすいっていうのもあるんですね。

愛さん:そうですね。実体験として提案してくれると、よりいっそう嬉しいかなっていうのはありますね。ぜひ、友だちのファミリーの家に出かけてみたり、自分のおばあちゃんの家の様子を見てみたり、実際に住んでいる人の話も聞いてみてください。

寛野:はい!ありがとうございます!色んな方の経験談も聞いてみようと思います。

荒木:あれから5年たちますが、ハンディハウスプロジェクトがこれからどんな風に進化していってほしいですか?ぜひ僕たちを育ててくれた前田さんに聞いてみたい。

愛さん:どんどん会社として大きくなっていってると思うんですが、ハンディのことは、一緒に家をつくった仲間だと思っています。その仲間感は、今後もずっとキープして大事にしていってもらえると、私たちも嬉しいです。

拓哉さん:そうですね。私たちも参加させてくれて相談しやすい雰囲気を作ってくれたので、会社が大きくなってもそこは変わらないでいてほしい。

荒木:わかりました!ハンディへの愛情をたくさん伺えて励みになりました。今後もよろしくお願いします!

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(写真)完成後の“打ち上げ”の写真。妄想から打ち上げまで、ともに走り抜けた後のビールは格別。

間取りにとらわれず、家族の変化や成長にあわせて家を変えていけばいい。前田さんご夫婦のように柔軟に暮らしていければ、家への愛着が歳を重ねるごとに深まっていきそうですね。
愛さんは、自身のインスタグラムで、ハンディハウスプロジェクトと一緒に自宅をリノベーションする過程をあげてくれていました。そして、その後の家様子も更新してくれています。陰ながらハンディを応援してくれてるお施主さんたちの期待に応えられるよう、ハンディも進化し続けていきます!

※前田邸の詳細はこちら 

取材・文 石垣藍子

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