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仕事つくる#45 流行り物が嫌いな僕が温泉宿にサウナを入れた理由
流行り物に手を出すのが嫌いで、比較的アウトローな人生を生きてきたと自負している。たとえば、今拠点にしている西粟倉村は岡山にある人口1300人の村だ。地方創生界隈ではそこそこ有名な村なのだが、ここに移住した理由は使われていないものを価値に変える仕事を見つけるため。今も続けているが木質バイオマスという未利用間伐材をエネルギーに変える仕事をするためにこの村にやってきた。
西粟倉村に来て1年も経たずにボロ戸建を買った。西粟倉は田舎のわりに入居需要がそこそこある。住宅事情は需要過多の状況だ。しかしながら当時は家を買ってまで商売をしようとする者はほとんどおらず、誰も気づいていないビジネスチャンスだと思った。はじめて買った戸建ては40万円だった。それを自力で直して賃貸して小銭を稼いだ。そんなことを繰り返して全部で4軒購入したが、今では購入側の需要も高まり金額が高騰。なかなか手を出せなくなった。
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レスリング専門のウェアブランドを立ち上げたのも人と違うことがしたかったという根っこの性格が大きい。元を正せば僕は指導者になる予定だった。同級生の多くも指導者の道をすすんでいて、みな立派な先生になっている。しかし、僕はそんな立派な同級生たちを羨みながらも、人とは違った形でレスリングに関わりたいと思った。いろんな理由はあれど根底にはこの天邪鬼な性格が影響している。
そう、僕は昔からずっとこんな感じだ。noteの第一号はまさにそんな内容。変態思考なんですよ!w
そんな変態思考でアウトローな僕が何を思ってかここ数年トレンドになっているサウナを、なぜ、すでにアウトローな宿屋である「あわくら温泉元湯」に導入することに決めたかをこのnoteで書いていこうと思う。
全裸待機しときます
— とののベーコン。岡山の燻製屋 (@tononobacon) December 6, 2024
えーじさん、もう少しだけ待っててくださいね。今書いてますよ。
サウナは必要ないと俺は言い切っていた
言い切った。確かに言い切った。それは温冷交代浴(以降、温冷浴)という化け物に先に出会ってしまったからだ。人気YouTuberのレッツゴーなぎらさんに1日密着取材をしていただいた際に全国ネットにはっきり発信している。それくらいに温冷浴は化け物だ。
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温冷浴とは、温かい湯船と冷たい水風呂を交互に入る入浴法のことだ。ちなみに、広義でいえばサウナも温冷浴の一種になる。僕の温冷浴との出会いは元湯に来たユニークな経営者2人組がきっかけだ。
一人は尾道の人気チョコレートブランドUSHIO CHOCOLATL代表の中村さん。もう一人は中村さんの相棒で松江の人気コーヒーショップ・イマジンコーヒー代表の岸本さん。4年前だったか、共通の友人の紹介でふらっと元湯に遊びに来られたお二人と翌朝会話した時のこと、「なんで水風呂がないんですか?」と本当に不思議そうに尋ねられた。
「こんなにいいお湯なのに水風呂がないなんてもったいない!」
にしても急やな…
その後、この二人の熱により温冷交代浴に興味を持った僕は、二人に各地の名所に連れて行ってもらうことになる。(色々端折ります)そして、温冷浴の素晴らしさを身をもって知った僕はこの二人に出会って2年後に源泉掛け流しの水風呂をつくるに至るのだった。
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ちなみに、温冷浴の決め手は水にある。各所をめぐってわかったことは、水は塩素0の掛け流しで、設置する場所は露天。この2つの条件が揃うと最高の温冷浴環境が整う。元湯の源泉は冷泉であり掛け流しの水風呂をつくる条件はクリアしていたが、露天エリアは新たに開拓する必要があり、そのためにわざわざ壁をぶち抜いてつくった(笑)。
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いや、でも本当にやって良かったと思っている。それくらい元湯の温冷浴場は完璧だ。ととのうだけなら温冷交代浴で事足りる。サウナなんていらないぜ!
あの夜の大戦略会議
さて、そんな感じで温冷浴に塩漬けにされていた僕であるが、その温冷浴場をつくってくれた村の先輩経営者のJPさんとほぼ毎晩経営談義をしていた。JPさんについてサクッと説明しておくと、元々は姫路の美容院のオーナーで、弟子に事業譲渡した後に世界一周をしてその後西粟倉に不時着した人。そして西粟倉村ではDIYユーチューバーとなりあれよあれよの間に15万人まで登録者を増やしたちょっとおかしい人。僕はこのおかしい人が大好きで、経営者の後輩として酸いも甘いもいろんなことを教えてもらっていた。僕からもJPさんが悩んでいることがあれば率直に意見を伝えるようにしていて、そんな感じで毎晩楽しく経営談義をしていた。
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そんなある日のことである。ユーチューバーとしての活動を一旦終えて、次に何をするかを吟味していた夜。すでに1件所有している一棟貸しの宿を複数展開するのか、ユーチューバー×リフォーム屋としてネット芸人を続けるのか。いろんな案が飛び交う中で、僕が最終的に推したのが卵サウナをプロダクト化することだった。卵サウナはJPさんがリフォームして運営していた一棟貸切宿に設置する目的でつくられたオリジナルサウナ。元々サウナ好きのJPさんが面白いサウナを作れないかと思考を巡らせていた時に冷蔵庫の卵を見て閃いたという神話がある。
製作の工程もずっと見ていたし、完成後何度も入らせていただいているが、クオリティへのこだわりが尋常ではなく、サウナめっちゃいいなと思わせてくれた初めてのサウナだった。
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JPさんの次なる事業として卵サウナを推した理由は、他の事業案よりも数字予測が固かったことと、そして先述した通りに世界唯一無二の見た目とそのクオリティで、後発参入でありながらもサウナメーカーとして勝負できるのではないかと素直に思ったからだ。JPさん自身も他の事業よりも手応えを感じていた。サウナを案内した人全てから最高のリアクションをもらっていたからだろう。そして何より、好きなものをこの手で作って、それを世界に広めていくモチベーションは何にも変えがたい幸福だ。そうと決まれば、あの夜の熱量のまま超特急で事業計画がすすめられていった。
ちょっと待て!第一号は俺だ
半年経った頃、卵サウナのプロダクト化に向けた大方の改善が終了されていたこのタイミングで、あらためてJPさんと酒を飲む機会があった。その時JPさんの思考は製作から営業・マーケティングに切り替わっていて、第一号の売り先を探していた時期だった。話を聞くに、まず手始めに近隣の宿屋に声を掛けてみようとしていたようだ。その時に具体的に名指しで出てきた宿は僕もよく知る人気のところだった。たしかに、あそこに卵サウナが導入されたらめっちゃ映える、、、、、
ん、ちょっと待てよ。なんだこの胸騒ぎは。なんか悔しいなあ。卵サウナ第一号を取られるのなんか悔しいなあ。
飲みながらそんなことが脳裏によぎり出した。やっぱりなんか悔しい。
JPさん、第一号はウチでしょ。ウチ以外ないでしょ。
気づいた時には口に出していた。
過去の発言なんてどうでもいい。
僕は
元湯に
卵サウナが
ほしい
ごくり…
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たしかにきっかけは酒の席の一瞬の悔しさだったかもしれない。しかし、翌朝目が覚めても迷いはなかった。元湯の玄関口に卵サウナがそびえ立っている景色をイメージすればするほどワクワクが抑えられなくなった。
早速常連の絵の上手い女の子に、元湯に卵サウナが設置されているイラストを描いてもらうことにした。
出来上がったイラストを見て再び電流が走った。
これだ、僕はこの景色が見たかったのだ。
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流行り物が嫌いな僕が温泉宿にサウナを入れた理由
そう、男の二言を言ってでもあわくら温泉元湯に卵サウナを導入した理由は、この景色を見たかったからのだ。飲み会の席で言ってしまったことも、次の日に「ごめんなさい、昨日はついつい勢いで言ってしまいました」と断ることはできた。そんなことで怒るJP先輩ではない。
あの夜から、ずっと見たい景色だったのだ。元湯の玄関に聳え立つ卵サウナを見たくて仕方がなくなっていたのだ。設置する場所には当時パン工房が建っていた。数年使われていなかったとはいえ、まだ使うことのできる有休施設だ。その所有者さんにもご迷惑をかける形になった。本当に申し訳ないと思っている。
それでも僕はあの景色が見たかった。
そしてこの冬。大好きな人がつくった大好きなサウナがついに完成した。世界唯一無二は形だけの話ではない。僕にとっては卵サウナの存在自体が特別であり格別なのだ。イラスト通りのインパクト。可愛らしさだ。元湯に一輪の花が添えられた。
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これが、流行り物が嫌いな僕が温泉宿にサウナを入れた本当の理由。
ちょうど昨夜はじめて有料サービスとして卵サウナに入浴していただいた。ご年配のご夫婦だったので少し心配な要素はあったが、2時間しっかり楽しんでいただき大満足で上がられた。嬉しさが漏れ出して夜遅い時間にかかわらずJPさんに電話して喜びを分かち合った。
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たくさんの人にこの世界唯一無二の卵サウナに入ってほしいと思っている。もちろん、温冷交代浴は引き続き素晴らしいので、夜はサウナ、朝は温冷浴と、両者入り比べをしてスーパー仕上がった状態で GO HOME してもらえるとなおのこと嬉しい。
以上
解散!
僕のアウトローな温泉宿が見たくなったらこっち来てね。