星の降り注ぐ茶畑にて、国内最高峰の茶師が守る八女の伝統文化「玉露」
<お茶の王様「玉露」とは>
モノづくりの話に入る前に、そもそも「玉露」とは何でしょうか。
玉露は「お茶の王様」とも呼ばれ、なんとなく「高級茶」というイメージはあるものの、実際には飲んだことがないという方も多いのではないでしょうか。
玉露と一般的な煎茶の違いは、その栽培方法にあります。
一般的な煎茶は、日光を浴びて育つのに対し、玉露は早ければ新芽が出始めた頃から、寒冷紗と呼ばれる布などで覆いをして日光を遮って育てます。
日光を遮ることで、光合成が進まなくなり、カテキンの生成が抑制されます。これにより、渋みや苦味が抑えられ、甘味と旨味が感じやすいお茶に仕上がります。
また、玉露より被覆期間が少し短いお茶に「かぶせ茶」と呼ばれるものもあります。
玉露の生産量は日本茶全体のわずか0.3%。京都の宇治、福岡の八女、静岡の岡部が三大産地と言われています。
栽培に手間がかかり、生産量も少ないため、他のお茶に比べて希少かつ高価なお茶になっているのです。
<作り手について>
福岡県八女市星野村。
面積81㎢・人口約2,600人。周囲を山林に囲まれた静かな村。
この霧深い山里にある茶畑で、伝統製法を守った最高品質の「玉露」がつくられています。
なぜ「最高品質」と言えるのか。
その答えは、産地と作り手に。
まずは産地。
八女を中心に栽培される福岡県の茶生産量(2019年)は1,780トン。
静岡県、鹿児島県、三重県、宮崎県、京都府に次ぐ全国6位で、比率としては国内生産量のわずか約2%に過ぎません。
しかし、全国茶品評会(各年の全国No.1=最高品質の茶葉を各種別ごとに審査・決定する場)の玉露部門では、福岡県八女の生産者は例年上位に入賞し、12年連続で全国No.1を獲得したこともあります。
また、2020年の玉露部門では上位1位~20位を全て八女の生産者が独占。八女玉露の圧倒的なクオリティが伝わると思います。
なぜ、八女の玉露はここまで高品質なのか。
それは、生産量が少なく、全国的な知名度も高くない八女が茶産地として生き残るために、他の産地を圧倒する玉露づくりとブランド化に力を入れてきたからです。
地理条件もさることながら、先人から連なる努力と研鑽が、今日の最高品質の地位を支えます。
次に作り手。
幸運なことに、日本一の玉露生産者が集まる八女には、国内最高峰の茶師がいます。
茶師の技術を競う場に、全国茶審査技術大会というものがあります。
そして、ここで優秀な成績を積み重ねた者だけが、「茶師十段」と呼ばれる資格を取得します。
約70年という大会の歴史のなかで、茶師十段は全国に15名のみ(2022年現在)
そして、八女市星野村には、2年連続日本一、また史上最年少で茶師十段となった星野製茶園の山口真也氏がいます。
当店では、星野製茶園さんとご縁をいただいて以来、同店より玉露原料を仕入れさせていただき、お客様へお届けしています。
<モノづくりについて>
「玉露」と表記された商品は多数あります。
その中でも、最高級品である「八女伝統本玉露」の基準は明確です。
一方、当店からお届けするのは、その伝統文化の一端をよりリーズナブルにお楽しみいただける「八女玉露」です。
「伝統本玉露」との違いは、栽培期間中、ときに茶樹の成長を助けるためその一部を剪定すること。また、直射日光を遮る素材には、人的負荷を下げるために寒冷紗を使用します。
ただし、玉露の特性を生み出すため、伝統製法の棚掛け被覆(間接被覆)は行います。
玉露の持ち味はそのままに、より多くのお客さまにお楽しみいただくため、創意工夫された商品です。
高級品がすべてでもない。
大切なのは、良品適価であること。
当店よりお届けする「八女玉露」も、星野製茶園のたしかな技術によってつくられています。
最後に、山口真也氏とのお話で最も印象に残ったことを。
伝統とは、まず守ること。
そのうえで、その間口を広げ、皆様へ体験していただくこと。
皆様にも、八女の誇る伝統文化の一端をお試しいただけますと幸いです。
<プロダクトについて>
直射日光を遮る被覆栽培によってつくられた茶葉の特徴。
それは、新芽が養分を蓄えようとして生まれた力強い旨味。
加えて、光合成が抑制されることから、渋みのもとになるカテキンの生成は進行せず、とろりとした甘味が強調されます。
この、旨味と甘味の凝縮感。
これが他のお茶にはみられない、一番の「玉露らしさ」です。
この特徴は、夏目漱石の有名な小説『草枕』の一節にも。
<販売ページのご案内>
単品(30g)の販売ページはこちらです。
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