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感情を押し殺すだけじゃない!感情労働を乗り越えるプロの技

感情労働――心を使う仕事の現実と向き合い方

皆さんは「感情労働」という言葉を聞いたことがありますか?
感情労働とは、仕事をする中で自分の感情をコントロールし、求められる感情を演じることが必要とされる労働のことです。接客業や医療、教育など、人と直接関わる仕事で特に求められるスキルですが、その一方で心に大きな負担を抱える原因にもなり得ます。

教師として働く私自身も、感情労働の重みを日々感じています。子どもたちや保護者との関わりの中で、時に自分の本音を抑え、プロフェッショナルとして「正しい感情」を表に出す必要がある場面が多くあります。

この記事では、感情労働の実態やその影響、向き合い方についてお話しします。もし感情労働に疲れを感じている方がいれば、少しでも力になれると嬉しいです。

1. 感情労働とは?

感情労働という言葉は、社会学者アーリー・ホックシールドによって提唱された概念です。彼女は感情労働を次のように定義しました。

「自分の感情をコントロールし、仕事の役割にふさわしい感情を表現すること」

具体的には、次のような仕事が感情労働に該当します:
• 接客業:お客様に対して常に笑顔で接する。
• 医療・福祉:患者や利用者に安心感を与える態度を保つ。
• 教育:子どもたちや保護者に対し、冷静で落ち着いた対応を続ける。

これらの仕事では、自分の本心とは異なる感情を表現することが求められるため、「心のエネルギー」を多く消耗するのです。

2. 教育現場における感情労働の実態

教師の仕事は、典型的な感情労働の一例です。毎日、子どもたちや保護者、同僚と向き合う中で、以下のような感情労働を経験することがあります。

① 子どもたちに対する感情労働
• 本当は怒りたいけれど、冷静さを保つ
子どもたちがルールを破ったり、教室内でトラブルを起こしたりした時、教師は感情に任せて怒るのではなく、冷静で建設的な対応を求められます。
• 常にポジティブな態度を見せる
子どもたちが安心して学べる環境を作るため、教師はたとえ疲れていても、笑顔で授業を進めたり励ましの言葉をかけたりする必要があります。

② 保護者に対する感情労働
• 厳しいクレームにも冷静に対応する
保護者から厳しい言葉を受けても、感情的にならずに誠実に向き合う必要があります。
• 期待に応えるプレッシャー
保護者から「もっとこうしてほしい」と要望を受けるたびに、その期待に応えようとする姿勢を見せることが求められます。

③ 同僚や上司との関係
• 意見が合わなくても協力する
教育現場では、教師同士がチームとして動く場面が多いため、自分の意見と異なる方針にも柔軟に対応する力が求められます。

3. 感情労働が引き起こす問題

感情労働は、仕事を円滑に進めるためには必要なスキルですが、それが過剰になると次のような問題を引き起こします。

① 感情の枯渇

本心と異なる感情を表現し続けることで、**「自分の感情が分からなくなる」**状態に陥ることがあります。この状態を「感情の枯渇」と呼び、ストレスや倦怠感の原因となります。

② 燃え尽き症候群(バーンアウト)

感情を抑え込むことに疲れ果て、仕事への意欲を失ってしまう状態です。教師や医療従事者など、人と関わる仕事に従事する人々に多く見られる現象です。

③ 人間関係の摩擦

感情を押し殺し続けることで、他者とのコミュニケーションがぎこちなくなり、職場の人間関係が悪化する場合もあります。

4. 感情労働と向き合うためにできること

感情労働を完全に避けることは難しいですが、適切に向き合うことで負担を軽減することができます。以下のポイントを意識してみましょう。

① 自分の感情を言葉にする

感情労働が求められる中でも、自分の感情を無視しないことが大切です。一日の終わりに、自分が感じたことを日記やメモに書き出すことで、感情を整理できます。

② 同僚や上司と悩みを共有する

感情労働に悩んでいるのは、決してあなただけではありません。同じ立場の同僚や上司に悩みを相談することで、心の負担が軽くなることがあります。

③ 自分を大切にする時間を持つ

仕事以外の時間にリフレッシュすることも大切です。趣味や運動、家族との時間など、自分をリラックスさせる活動を意識的に取り入れましょう。

④ プロフェッショナルの助けを借りる

感情労働によるストレスが深刻な場合は、カウンセラーや心理士に相談することも選択肢の一つです。専門家の助けを借りることで、心の負担を軽減できます。

5. 職場全体で感情労働を支える仕組みを作る

感情労働の負担を個人だけで抱え込むのではなく、職場全体でサポートする仕組みを作ることも重要です。
• チームでの情報共有:児童や保護者対応について共有し、負担を分散する。
• 定期的な振り返り:教員間での振り返りや気持ちの共有を行い、相互理解を深める。
• 研修の実施:感情労働に関する研修を通じて、全員で対応力を高める。

6. まとめ ― 感情労働を乗り越える力を育む

感情労働は、人と向き合う仕事において避けられない部分です。しかし、それを無理に我慢し続けることは、やがて心の健康に悪影響を及ぼします。
• 自分の感情を大切にする。
• 職場や専門家の助けを借りる。
• チームで感情労働を支える。

こうした取り組みを通じて、感情労働に負けない力を育んでいきましょう。心の健康が守られることで、仕事のパフォーマンスも向上し、より良い教育やサービスが提供できるようになります。

今日はここまで。
感情労働の大切さと向き合い方についてお話ししました。
また次回。

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