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Good -3.5
生理がくるとこの世の終わりみたいな気分になるのは、ひとりでいる日だけなんだと今更気づいた。忘れていて、久しぶりに思い出した、かもしれない。昨日までなんともなかった。予感と共に少しの痛みがあっても寒くても活動してても友達といればどうってことない。いくら好きな友達でも、少しくらいはお互いに気は遣う。気遣いがをなくなったら楽になりそうなものなのに、急にいきなり涙が止まらなくなったり気持ち悪くなったりする。おかしくない、なんにもおかしくない。真面目に生きて、働いて、悩んで、壊れて、もっと辛い思いをしている人がいる。そのことの方がずっとおかしい。
しんどくてもひとりでいれば誰にも気を遣わず好きなだけだらだらできるから今日は予定していた勉強も外出も取り止め、家で映画も見たし本も2冊読んだ。いい本と映画だった。たぶんそんなにどこも痛くない。けれど良くなんてならない。むしろ心には毒素みたいなものが増えている。何も出来なかった、何も役に立たなかった悲しさだけが蓄積し、汚い感じがし、仕方なくお湯をはる。明日の方が痛くてグロテスクで、想像しただけでぐったりくるけど私は朝早く起きて仕事に行くだろう。身体の痛みを我慢してにこにこと働いた方が、緊張感の負荷がかかっている自分の方が、まだマシだから。
生理痛だとかそれに伴うPMSだとかをいくら訴えても、どれだけ具体的に説明したり理不尽にあたったり病院でもらった薬を飲んでいる姿を見せたりしても、彼には一生この気持ちは分からないだろうと思う。そして、毎月優しく労りご飯を作り、それでも「あなたたちはいいよね、何も分からずのうのうと生きてて」と言い捨てられる彼の気持ちもまた、私は一生分からない。傷は癒しあっても治らない。でも、どんな精神状態の時でも、彼がいれば毎回、ありがとう、と思う。心底思う。心にもない言葉をぶつけてしまう日もあるのに、都合よく有難く感じていて、それが私が女に生まれてきて理不尽だから、だから男のあなたが優しくして然るべきだとは思わない。彼が私が彼に与えるより多く、くれているものだと思う。立場が逆のものもある。人と人の関係に、心に、平等とか、トントンとか、要るのだろうか。そんなバランスを考えてる暇があったらしたいことは相手にするし、してもらった事はありがとうと言った方がいい。
称えたいわけでも悲観したいわけでもないが、確かに悦ばしく、慈しみたくなる、なくては困る、そんな関係が溢れているといいなと思う。
女、男、そこに当てはまらない人、全ての人が自分の気持ちを分かってくれない誰かに対して怒っている。その事に絶望し、ある日は本気で取り組み、怒らない世界を作れるのではないかと希望を見る。なのにある日は自分もその怒りのかたまりの一部だ。矛盾に悲しむ。葛藤する。でも誰かの関係ない一言で笑えたり、世界を真面目に見ることを許してもらえた気がしたりする。すぅっと軽くなって、適度に忘れて、生きていける。その全てが、完璧ではない、傷をつけ合う誰かとの関係の中で生まれているんだろう。
優しい誰かと優しくなりたい誰かや、優しくないけど特別に優しくしたい相手同士や、馬鹿同士や、馬鹿を装った真面目同士。猫を被ったあなたと私。本当に心を開いてくれているあなたと、開ききれない私。そんな関係でもいいから、とにかく、誰かと誰かが繋がっていればいいと思う。本当にそう思う。それだけで死なない人が沢山いると思うから。
今日は早く寝なければならない。明日は朝早いし。どちらにせよ1人で大きな家で夜更かしは怖いし。今朝読み終わった「いつか月夜」という本でとても自分に似ている主人公に出会ったけれど、彼は夜の道が怖くないらしい。不思議だなと思う。男だからだと沢山の人がいいそうだが違うと思う。純粋に羨ましい。私は夜が怖いから。でもこちらの深夜なら、-3.5しても夜の数になる時きて、少し連絡をとれるチャンスがあるかも、くらいの理由でわざわざお昼寝をして、怖い気持ちを我慢して、夜更かしをするかもしれない。そんなもんだ。彼もまた、自分の体調よりきっと皆との時間を優先して今夜も夜更かしをするのだろう。次の朝起きた私は、最後のLINEの時刻から引き算をする。寝ぼけて何度も計算して、よく分からなくて、深夜に眠ったことだけ理解する。
私の脳内時計はこの一週間、-3.5の引き算をしすぎているが、計算はちっとも早くならない。人は人を求めていいし矛盾しててもいいのだ。今日は適当な一日だから、適当に、そしてなぜか威張って、こんなことを書いている。明日になって明後日になって、明明後日になって、ずっと進んで、早く終わって、でもそこで止まって、もったいないほどの、いつもの普通の夜を過ごしたい。