ほんとうに好きすぎると愛憎入り混じって崇拝どころではないファン心理
中学の頃、好きだった先輩が椎名林檎をやたら褒めていた。「無罪モラトリアム」はすごい! 天才だ!
私はこっそりCDショップで無罪モラトリアムを買い求めた。先輩が褒めるものを聞いてみたかったからだ。
先輩は才能豊かで面白い人だった。ユーモラスでユニークだった。人を笑わせることが得意で、ときたまぎょっとするようなブラックユーモアを口にしたり、それに凍り付く周囲の空気すら、大きな体を揺らして鷹揚にジョークにしてしまう不思議な人だった。私はひそかに先輩が好きだった。
丸の内