とまどい
君が簡単にドアを開けて入ってくるから
戸惑った私は、後ろを向いて逃げ出した。
こっちに来ないで。
私を脅かさないで。
君は弱いからキライ。
私の弱さが共鳴してしまうから。
倍音の端と端。
一番低い音と高い音で繋がりあった脆い心。
繋がるのは心の深いところじゃなくて、簡単に掬えそうな上澄み。
そこに浮かんでる、甘ったるい弱さ。
「楽になれるよ、潜ってみたら?」
いやだ、きっと溺れてしまう。
それ以上こっちに来ないで。
どうか私を迷わせないで。
そう言いながらも、ずるい私は
逃げる背中で、落し物をひとつ。
あの人がきっと、拾って届けてきてくれる未来に
走っていく。
戸惑いながら、走っていく。