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知らない人から声をかけられること
先日銀座を歩いている時、見知らぬ人から、褒め言葉とともに「よかったらお茶でも飲みませんか」と声をかけられた。
「あ、いえ‥」と断って歩き続けたが、そんなことは久々だったため心の中では(ありがたいことだのう‥‥)と、昔話のお婆さん口調で思った。
まあ、単なるキャッチセールスだった可能性も否めないが。
昔の私はこういう事に対して非常に警戒心が強く、わずらわしく思うのが常であった。
断るのが当たり前というマインドで生きていた。
大学生の夏休み、女友達5人で伊豆の白浜に泊まりがけで行ったことがあった。
夜の浜辺をキャッキャはしゃぎながら散歩していると、同世代の男の人達に声をかけられた。
向こうもちょうど5人ぐらいだったのだが、私は完全に警戒モードが発動し、(みんなのことも私が守らなきゃ!)ぐらいの気持ちで一歩前に出て「いいえ、結構です」と断ろうとしたところ、「いいえ」の「い」ぐらいの時に私以外の4人が「えーどうする?」みたいなムードになった。
全然まんざらでもないムード。
エッ?!
そのあと結局みんなで遊ぶことになってしまった。
私は途中でもういいやと思って一人で部屋に戻ったが、友達はみんなで普通に楽しくおしゃべりしてから帰ってきた。
その内の一人に至っては、帰って来てから相手の中で一番カッコいいとか言われていた人とお付き合いを始めて、その5年後に結婚までした。
また、別の女友達と2人で新宿を歩いていた時のことだ。
ちょっと年上風の男の人に声をかけられて、お茶に誘われた。
その時も私が「結構です」と断ってすたすた歩いていたら、友人に
「ねえ、一応私にも聞いてから断ってくれる?さっきの人結構感じよかったよ」
と言われてしまった。
‥‥まじ?!
良かれと思って率先して断っていたのだが、むしろみんなに迷惑かけてたっぽい。
知らない人に対する警戒感は、私とみんなの間で度合いが違うのだなと思った。
でもみんな、もっと警戒した方がいいんじゃない?
危ない目に遭ったって知らないからね、もう。
などと思っていた。
が。
その後のある夜、私は当時恋していたおじさまと日比谷にある超素敵な老舗ホテルで待ち合わせをしていた。
1階のロビーのソファで彼を待っていたら、隣に西洋人のおじいさんが座って英語で話しかけてきた。
穏やかなしゃべり方ながらも大袈裟なぐらいあれこれ褒めてくれるので、私もにっこり笑って「ありがとう。良い人ね」などと応じていたら、
「僕は○○号室に泊まってるんだけど、あなたも来ない?お腹が空いてるなら部屋で食事しようよ」
と言われた。
いきなり部屋か。
かの地では普通なのだか、年齢から来る余裕なのだかわからないが、さすが〜と思った。
私は思わず笑いながら「今、彼を待ってる所なの」と断ると、おじいさんも笑って「どうせそんなことだろうと思った」と肩をすくめた。そして、
「万が一彼が来なかったら○○号室に来てね」
と、もう一押ししてから席を立ったので、私はまた笑った。
‥‥‥‥ハッ!!
私‥‥全然警戒してなかった!!
たとえ知らない人に声をかけられても、相手が感じの良いおじさんとかおじいさんだったら別に悪い気がしないことに気づいた。
ごめん、みんな。
警戒心の有無とかじゃなくて、相手の年齢の問題だったっぽい。
好みが関係あったっぽい。
みんなも、好感の持てる相手だったからこそ応じてたんだよね。
気づかなくてごめん。
あと。
表参道のアメリカンなレストランで友達と2人で食事をしていた時のことだ。
食後にそのお店の名物デザートであるチョコレートサンデーを頼もうかと話し合っていた矢先、店員さんがそのサンデーを2つ運んで来た。
私達が驚いて、
「あれ?!(まだ)頼んでませんけど‥‥」
と言ったら、
「先程お帰りになった、あちらの席にいたお客様からのプレゼントです」
と私達から離れた空のテーブルを指差して教えてくれた。
エ────ッ!!!!
「なに??この最高のプレゼント!!」
「『あちらのお客様からです』ってカクテルが届くみたいな事って本当にあるんだ!!」
「しかも自分が帰った後に届けてくれるなんて!!」
「この世にそんな良い人がいるなんて!!」
もう大興奮である。
警戒も好みもあったもんじゃない。
いまだに私達の間で伝説になっているエピソードだ。
知らない人が声をかけて来るのが悪いのではなく、悪い人が悪いだけなのだよな。
若い頃は一緒くたに考えちゃってました。
短慮でスミマセンでした。