一瞬でスイッチが切り替わる
私はだいぶ笑い上戸な人間である。
友達といるとキャッキャはしゃぎがちだし、何かにつけて爆笑しがちだ。
(ただし根は暗い。)
愛するおじさまの前ではついついおすまししてしまうが、それでも例えば一緒に食事している時にお店の人が面白いことを言ったりすると、素に戻って爆笑してしまう。
「あはは」と可愛く笑うだけならいいのだが、私の場合は文字通りの爆笑で、更に相手がたたみかけるように面白いことを重ねてくると涙が出るぐらい笑ってしまうのだ。
そうなると、ただでさえ貴重なおじさまとの逢瀬でロマンティックなムードが崩れちゃうんじゃない?と思うのだが、意外にそこは心配いらない。
どんな時でも、彼がちょっと腰に手を回してきたりするだけで一瞬でスイッチが切り替わってしまうからだ。
物陰で軽くキスされただけでもすぐに声が出てしまう。
一瞬でエロモード一色。
笑いの「わ」の字も出てこなくなる。
とはいえ元が笑い上戸なので、エロモード一色の最中に笑ってしまったこともある。
もう何年も前の話だが、おじさまと久しぶりに会えることになり、浮かれた私はデート用の洋服でも買おうかなと思って出かけた。
あれこれ見て回る内に、めちゃめちゃ素敵な濃い菫色のランジェリーを見つけた。
ブラ+タンガに加えて、お揃いの色のガーターベルトまで並べられているのを見て、
(これ絶対おじさま喜んでくれるな)
と思い、高価もいいところだったがウッキウキでまとめて買って帰ってきた。
非常にどうでもいい話で恐縮だが、私はタンガ以外のショーツは一枚も持っていない。
以前は生理用にサニタリーショーツを持っていたが、子宮筋腫により子宮を全摘してからその必要も無くなったので、今は正真正銘クローゼットに入っているショーツは全部タンガだ。
だからブラ+タンガを買うところまでは日常なのだが、ガーターベルトを買ったのは初めてだった。部屋で試着しながら、
「超・可愛い‥‥!!すっごい似合ってる‥‥!!」
と一人で自画自賛をして、あー早くおじさまに見せたいなと思った。
当日。
ベッドの上でおじさまに服を脱がされている時に、ちょっと恥ずかしいような、ちょっと甘えるような気持ちになって、おじさまの目を見つめながら、
「私、今日いやらしい下着なんです」
と言うと、おじさまは「いいね」と言いながら更にスカートに手をかけた。
そしてガーターベルトを見ると「おっ」と微笑んで頭を撫でてくれたところまではよかったのだが、
「でも花野、着け方が間違ってる」
と言われてしまった。
エッ!?
「ベルトした後にパンツをはくんだよ。これじゃパンツ脱がすことができないじゃない」
そう言われて思わず吹き出してしまった。
「あれ?おかしいな」
と笑いが止まらなくなりながら指摘された箇所を見て「なるほど確かに」と思った。
おじさまも笑って「直しておいで」と言ってくれたので、バスルームで着け直した。
これ、あとで調べたらガーターベルトあるあるらしいじゃないですか。
やだ、言ってよ〜
と思った。
でも着け直した後バスルームを出ると、おじさまが真面目な顔で私の全身を見て
「おいで」
と手を広げて言ってくれたので、私も一瞬でエロモードに戻った。
そしておじさまは、
「すごく興奮する」「花野はなんでそんなにいやらしいの」
などと言いながら、いつも以上に激しく責めてくれて幸せだった。
一瞬でスイッチが切り替わるのはおじさまも同じなのだよな。
いつも真面目にお仕事のことばっかり考えていたって、普段は優しくたって、セックスの時は別の人みたいにすごくエロくなったり苛めてくれたりするから、とってもいいなと思う。
‥‥っていうか当たり前のことか。
それはそれ、これはこれ、だもんな。