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私は字を書くことが好きだし、人が書いた字を見ることも好き
毎日配達される新聞は、主に義母が読んでいる。私が新聞に目を通すのは、気が向いたときだけ。夫も家では読まず、仕事場で経済新聞と地方新聞を毎日読んでいるらしい。だから新聞はいつも義母のリビングに置かれている。
義母が脳外科治療のため1週間ほど入院することになり、新聞の行き先は私たちのリビングになった。普段新聞を読まない私でも新聞が目の前にあると、隙間時間に新聞に目を通すようになる。
昔からの癖で、新聞はテレビ欄から開く。その後は気になる記事に目を通していく。最後の(本来は最初かもしれないけれど)一面にたどり着き、コラムに目が留まりこう思った。
「懐かしいな。」
4年前、仕事を辞め、時間に余裕ができた頃、義母のリビングに置いてある新聞に目を通す機会が増えた。そんな私を見て義母は、1面に掲載されているコラム専用の書き写しノートを私に買ってきてくれた。
コラムを読むのもさることながら、私は字を書くことが好きだ。
手書きのメッセージや気になったことをまとめてノートに書くとき、文字を書いたときの感覚がその時によって違う。えんぴつやペンによって書き心地も違うし、筆圧も違う。書き上げた文字を見て、納得するときもあれば、全て消して書き直したくなることもある。
書き写しノートではお手本に沿って丁寧に字を書いていると、はねや線の長さ、文字のバランスを改めて知ることができるし、同じように書いているつもりでもなにかが違うような気がして、何度も消しゴムで消して書き直し、ついつい夢中になってしまう。
自分流ではあるけれど、書くことに集中することで、書き始める前には波打っていた気持ちが穏やかになり、書き終えるころには、おおらかな気持ちにさえなっている。「鷹揚に構える」とはこういう感覚なのかも。
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私は自分以外の人が書く文字にも興味がある。
文字を見て、その人らしいと感じることもあるし、意外性を感じることもある。文字から、その人の芯の強さ、清さ、包容力、思いやり、柔軟性、潔さなどさまざまな個性を感じ、勝手にイメージを膨らませる。
特に目を惹く文字には、人間的深みを感じ、書いた人の人柄や辿ってきた道のりをもっと知りたくなる。
最近では手紙のやり取りをすることがめっきり減ってしまったけれど、手書きの年賀状を送ってくださるある方の文字をみるのを、毎年楽しみにしている。
傘寿を迎えたその方は、お目にかかるときは常に笑顔を向けてくださり、張りのある声で話しかけてくださる。懐石料理店の女将で、今も現役。数年前に私が悩んでいたときに、ふとその方のお顔が浮かび、以前に梅干しをお裾分けしていただいていたこともあって、手土産をもってお店の昼休憩時間に伺ったことがあった。
家族でそのお店を訪れたことはあったし、夫からもその方のこれまでのことを話に聞いたことはあったけれど、二人だけでお話しをするのは初めてだった。
その方の終始笑顔で明るい姿勢の中に、茨の道を切り抜けてきた強さ、人への思いやり、そして誠実さを肌で感じることができ、お店を出るころには靄がかかっていた私の心も晴れていた。
その方の書く文字に憧れ、さらに人柄に憧れる。
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字を書くことで、程よい向上心を味わうことができるし、その上心の落ち着きも得られる。人が書いた文字を見ることで、その人のイメージを膨らませ、多面的な魅力を見つけることができるし、目を惹く文字と出会えた時は、心の奥に嬉しさ感じる。
だから私は、自分で字を書くことも、自分以外の人が書いた字を見ることも両方好きだ。
ヘッダーは4年前に書き写したもの。先日久しぶりに書き写ししてみたら、コラムの1行の文字数が変わっていて、やや混乱した。
残り10記事分を書き切ってから、ノートを新調しよう。