防湿庫の奥底から改造レンズを引っ張り出した話
軽井沢も紅葉の時期がほぼ終わり、冬が始まろうとしています。そろそろ昆虫の姿も見つけにくくなる季節です。たまたま公休が重なった土曜日、息子が落ち葉や朽木の中にいるアリを探しに行きたいというので、付き合うことになりました。
まずは庭の落ち葉を集めている場所で落ち葉や朽木をひっくり返します。するとアズマオオズアリのコロニーを発見。しかし小さい・・・。撮影倍率2倍でも満足な大きさには写りません。そういえば昔、拡大撮影用にレンズを改造したよなぁ・・・。という訳で、防湿庫の奥底に何年も眠っていたレンズを引っ張り出しました。
怪しげなコードが伸びるこのレンズは、フォーサーズ用の廉価版標準ズームを改造した物です。昔からマクロレンズでも足りないような拡大撮影には、レンズをリバース(前後逆向きに装着)する手法が使われていました。問題は拡大するとピントが合う範囲(被写界深度)がとても浅くなるので、レンズの絞り値を大きく(絞り込む)する必要があること。しかし絞り込むとファインダーは暗くなり、ピント合わせができません。そこで普段は絞りを開放して明るいファインダーでピントを合わせ、シャッターが切られる瞬間だけ設定した絞り値まで絞り込む「絞り連動機構」が必要になります。しかしリバース撮影ではレンズは逆向きですから、カメラとレンズの連動機構が繋がってません。昔はダブルケーブルレリーズなどのアクセサリーを駆使して、この問題を機械的に解決していました。
時は流れ、一眼レフもデジタルに。システムをデジタル化する際に私が導入したOLYMPUSは、カメラとレンズの連動を全て電子接点で行なっていました。するとどうでしょう。接点さえコードで繋いでしまえば、レンズをリバースしても絞りどころかオートフォーカスさえ動くのです。
もちろんこれは、私のオリジナルのアイデアではありません。参考にしたのはこちらの記事です。
それほど工作が得意な訳ではないので、あちこち簡略化して改造したのですが、コードのハンダ付けは頑張りましたよ。老眼となった今ではもう無理ですね。さて、改造に成功したのはいいものの、拡大撮影にはもうひとつ、露出倍数という壁があります。撮影倍率が高くなると、絞り開放でも一眼レフの光学ファインダーは暗くなり、ピント合わせが難しいのです。そのため何度か試用してみたものの、動く昆虫の撮影は難しく、あまり活用できないでいました。でも待てよ、ミラーレス一眼であれば、ファインダーは電子的に表示しているので、暗い環境でも明るく見ることができるはずです。
見える見える。でもあまりに暗いので、ゲインアップしたファインダー像はコマ落ちして動きがカクカクしています。それでも光学ファインダーとは雲泥の差です。
体長2mmほどのトビムシが何匹もいました。トビムシは6本足で翅がない昆虫に近縁の虫です。撮影してみると銀色の鱗のようなものに包まれた美しい姿をしていました。
トビムシは小さないきものなので、拡大撮影用のマクロレンズがないと大きく写すことはできません。
下から見ると、結構足が立派ですね。このアングルはちょっと新鮮。
全長1cm以下の小さなヤスデが、朽木の下に何匹もいました。触角の先とほっぺが膨らんで見えます。ちょっとカワイイかも。
近くの林に移動しました。落ち葉に埋もれた石や朽木をひっくり返してアリを探しますが、見つけたのはシロアリでした。
4-5mm程のヤマトシロアリが画面いっぱいに写ります。大きく長い頭部にハサミ状の大顎を持つ兵アリは、なかなかにカッコいいですね。
働きアリの頭部は丸っこく、大顎もペンチのようです。これで木材をかじるのでしょうね。
結局、林ではムネアカオオアリの初期コロニーを見つけて採集。ムネアカオオアリは大きいので、普通のマクロレンズで撮影しました。
こちらは自宅で落枝の裏にいたトビイロケアリ。アリノスアブの幼虫も一緒にいましたが、やっぱり大きすぎて普通のマクロレンズで撮影しました。
全長2.5mm程のアズマオオズアリ。働きアリには大型と小型の2タイプがあります。大型の働きアリは兵アリと呼ばれ、巨大な頭を持っています。でも数が少ない兵アリはさっさと物陰に隠れてしまったので、捕まえて白バックで撮影してみました。
巨大な大顎で食べ物の解体をしたり、餌場の防衛をするらしいです。大顎を動かすための筋肉で、頭部が大きく発達しているのでしょうね。でも兵アリという呼び名の割には、すぐ隠れてしまうのは何故でしょう?
バランスが悪いにも程がある。でもそれが意外とカッコ良い。ちなみに白バックはスーパーの食品トレーです。
このような拡大撮影では、ピントが合う範囲(被写界深度)を深くするために絞り込むことが多い上、露出倍数がかかるため暗くなり、自然光ではシャッタースピードが遅くなってしまうので、手振れや被写体ブレを防ぐにはフラッシュが必須です。今回はFL-LM3というカメラボディに付属の小型フラッシュと、ケンコー影とりの組み合わせで撮影しました。絞りはf6.3〜f14で調整してますが、倍率が高いだけに被写界深度が浅いですね。今度はもっと光量の大きなフィルム時代のマクロフラッシュを引っ張り出して、f16-22あたりまで絞り込んで撮影してみようかな。
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お腹がすいたら食事もどうぞ。
もう泊まっちゃいましょう。
それではまた。