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西果ての国、ポルトガルへ2週間の旅に出る|サウダーデの心に思いを馳せる

ついに、ポルトガルへの旅を決めた

ポルトガルへの旅を決めた時、遠い異国の情景を夢に見た。

青と白のタイルで彩られたアズレージョ、悠然と流れるドウロ川、

そして歴史が刻まれた石畳の道やオレンジ色の屋根で統一された街並み。

この国の持つ豊かさと奥深さを知りたいという思いに突き動かされ、

僕はポルトガルへの旅路に立つことを決めた。

振り返ると、僕は結構前からポルトガルに行きたいと思っていた。

東欧やアジアをバックパッカーで旅をしている時に、

何人もの旅人が「ポルトガルはいいぞ。」と口を揃えて言っていた。

さらには、僕が愛してやまない「関口知宏のヨーロッパ鉄道の旅」でお馴染みの関口知宏さんも「日本以外のどこかの国に住むとしたらポルトガル」と話していた。

___これはますます気になる。



旅の目的

ポルトガルへの旅を決めた時、僕は旅の目的を考えた。

この旅では、ポルトガルの栄枯盛衰の歴史に触れ、カトリックの文化を見つめ、写真でこの国のmotifを一つひとつ収めていきたい。

そして何より、ポルトガルが生み出した「サウダーデ」という心に思いを馳せること。それが、この旅を通して僕が感じたいものだった。

この国には直行便がない。
機内ではポルトガルの詩や音楽、小説に触れ気持ちを高める。


栄枯盛衰の歴史に触れる

ポルトガルは、その歴史を通じて栄華を極めた時代もあれば、衰退を余儀なくされた時代もあった。

大航海時代、ポルトガルは地図にない土地を求めて海へと繰り出し、アジアやアフリカ、南米にまでその影響力を広げていった。

その航海は、世界の交易や文化に新たな価値をもたらした__。

リスボンのベレン地区に立つ発見のモニュメントやジェロニモス修道院は、この国が海に挑んだ栄光と苦難の象徴であり、当時の繁栄と宗教の力が凝縮された場所でもある。

これらの歴史的建築物を訪れるたび、僕はその背後にある数々の物語を想像する。海を越えて新天地を探し求めた彼らの冒険心、時にはそれが侵略の形をとり、過酷な歴史をも生んだという矛盾に、ただ感慨にふけるのではなく、問いかけを続けながら歩みたいと感じる。

1996年に世界遺産に認定されたポルトの歴史地区。
ポルトガル第2の都市として知られる。
オレンジ色の屋根の街並みが素敵だ。


カトリックに触れる

ポルトガルの文化は、カトリック教会との結びつきが深い。

大航海時代のポルトガル人は、宗教の広がりも目的のひとつに掲げ、新天地へと旅立った。日本もその一つだった。

リスボンやポルトに建つ数多くの教会、そして巡礼地として知られるファティマの聖地では、カトリックの精神が今なお根強く息づいている。

僕は、ポルトガルにおけるカトリックの影響力がいかに人々の生活や価値観に根ざしているのか、その一面を自分の目で確かめたかった。

リスボン大聖堂で聞こえる聖歌、薄暗い礼拝堂に並ぶろうそくの光、その場の静けさの中で私たちが立ち止まり、祈りや贖いといったカトリックの本質に触れることで、この国の精神に迫れるのではないかと感じる。

滞在中に参加したミサにて。
彼らの暮らしにはカトリックが根付いている。
それを実感することができた。


写真で切り取るポルトガルのMotif


僕はこの旅でもまた写真を通して、この国のモチーフを収めていくことを楽しみに旅の準備を進めた。

ポルトガルは、魅力的な被写体で溢れている。

ポルトガルの風景や文化を、どの角度から切り取るか、どの瞬間を収めるか。それは、この国の歴史や文化に対する自分自身の視点の表れでもあると思う。

写真を通して、歴史の積み重ねと今を生きる人々の姿が交差するところを写したい。

市場で見かけるおばあさんの柔らかい笑顔や、ポートワインを楽しむ若者たち、石畳を行き交う人々の歩み。

そんな一瞬一瞬を収めることで、この国の魅力を自分なりに伝えたいと思う。

そしてシャッターを切ることで、ポルトガルのモチーフを僕自身の記憶としても刻んでいく。

街を彩るアズレージョ。
このアズレージョはイスラム教徒、キリスト教徒、
その双方に占有されていた歴史のあるポルトガルだからこそ生まれた文化だ。


サウダーデという感情に思いを馳せる

ポルトガルには「サウダーデ」という言葉がある。

直接的な意味は「懐かしさ」や「哀愁」に近いが、言葉以上の奥深さを持つ概念だ。

この言葉には、失われたものへの憧憬、戻らない過去への想い、そしてそれらがもたらす甘くほろ苦い感情が含まれている。

ポルトガルの人々は、歴史の栄光と喪失、遠くにあるものへの憧れを「サウダーデ」として表現してきた。

日本で言うと「侘び寂び」に近いかもしれない。


ファドの音楽を聴きながら、そして海沿いの街を歩きながら、私はこのサウダーデの心に思いを馳せる。

リスボンの小さなタベルナで流れる哀愁漂うメロディーと歌声は、ポルトガルが歩んできた歴史の重みや、彼らが抱き続けてきた望郷の念を表現しているようだ。

サウダーデとは、失われたものをただ悲しむだけでなく、その喪失をも人生の一部として受け入れ、生きる力に変えていく心の在り方なのだと感じる。

大西洋を眺める老人。
大航海時代、大海原に家族を送ってきたポルトガル人。
毎日海の彼方に大切な人を想う日々があっただろう。

終わりに

ポルトガルでの旅は、ただの観光に留まらず、この国が歩んできた歴史や人々の心に触れる時間でもあった。

ポルトガルの街を歩き、写真で風景や暮らし、芸術を切り取り、教会の静寂の中で祈りに耳を傾ける。

その体験を通して、僕はポルトガルの魅力を少しでも知ることができたように思う。

そして何より、サウダーデという感情を通して、人がどのように過去と共に生き、未来へと歩んでいくかを学ぶことができた。

この旅で得た体験は、きっとこれからも僕の中で色褪せることなく残るだろう。

ポルトガルは、歴史とともに生き、哀愁と希望を抱き続ける国。

そんな愛おしい国の、2週間の旅模様を綴る。


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