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スリランカに魅せられて、1週間の旅に出る

首都コロンボに降り立つと、蒸し暑い空気が肌にまとわりつき、街にはスパイスの香りが漂っていた。赤土の道を進み、街の喧騒から少し離れると、そこには静かに佇む石造りの古代遺跡がある。

スリランカは、古代の歴史と現代の生活が絶妙に調和する国だ。数千年にわたる波乱の歴史、そしてその中で育まれてきた豊かな文化が息づいている。内戦や植民地時代を乗り越え、今もなお未来へと歩んでいるスリランカの人々。その暮らしや文化には、他のどの場所にも見られない独特の空気が漂っている。

僕がスリランカに魅了された理由はいくつもある。その中でも特に心に残る理由をいくつか紹介したい。



歴史

スリランカを旅する理由の一つは、その土地に根付く「歴史」に直接触れたいと思ったからだ。内戦の傷跡が残る場所では、人々がいかにして平和を取り戻し、どのように再建を果たしているのかを知りたかった。戦争で失われたもの、そしてそれを再び築き上げるために歩んできた道のり。それは、ただの観光地では感じられない深い学びをもたらす。

僕はタクシーの運転手に当時の気持ちを尋ねた。彼はしばらく黙ってから、ゆっくりと話し始めた。「戦争の頃、街中は怖かった。家族を養うために働きながら、毎日が不安だったんだ。」運転手は遠くを見つめ、遠い記憶をたどるように続けた。「夜になると、何度も爆発音が響いて、朝になるとニュースが流れてくる。どこかで戦闘があったり、攻撃を受けたりしてる。タミル人とシンハラ人の対立が強くなって、互いに疑い、憎しみ合っていた。」

彼の顔には、あの時代の苦しみが色濃く残っていた。「でも、僕たちのような一般の人々は、どちらの側にも立てなかった。戦争が終わるまで、ただ毎日を生きることが必死だった。」運転手の声は、どこか切なく、そして深いところで自分の痛みと向き合わせられているように感じた。「今はシンハラ人とタミル人が手を取り合って、少しずつ平和に向かおうとしている。でも、戦争の傷跡は深くて、まだ心の中ではお互いに距離を感じることもある。」運転手はそう言いながら、町を走る車の窓を少し開けた。車の脇を通り過ぎる人々の姿を見ながら、「最近、シンハラ人とタミル人が協力して村を再建する姿をよく見かけるよ。お互いの言葉が通じるようになり、助け合うようになった。でも、心の底では、戦争の記憶がまだ残っているんだ。」彼の目には、過去を乗り越えようとする強い意志と、時折見せる切なさがにじんでいた。彼はそう言って、車の窓を少し開けた。風が頬を撫でる中、あの時代の痛みが、静かに流れ去るような気がした。

タクシー運転手の車窓から。この国の抱える悲惨な歴史にも思いを馳せる。


多様な文化と宗教の調和

スリランカのもう一つの魅力は、多様な宗教や文化が共存し、調和していることだ。仏教、ヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教がそれぞれの文化や習慣を持ちながらも、同じ空間で共に息づいている。この宗教的多様性は、スリランカならではの独自性を形成しており、旅人に新たな視点を与えてくれる。特に、仏教の聖地であるキャンディの仏歯寺では、祈りを捧げる人々の姿に宗教が持つ力強さと、その影響を強く感じることができた。

仏歯寺の僧侶

圧倒的な大自然

スリランカの自然美は圧倒的だ。東京の都会生活では決して味わえない、広大で力強い風景がここにはある。山岳地帯に広がる茶畑を、登山鉄道に乗って見渡す。そして茶畑の中で味わう一杯のスリランカティーは格別。さらに、シギリヤ・ロックの頂から広がる熱帯林の壮大さは、言葉では表現できないほどの感動をもたらす。

道中の熱帯林


スリランカ料理の魅力

食の体験もまた、スリランカを旅する際には欠かせない。スリランカ料理のスパイシーな香りと味わいは、口に運ぶたびにその土地の歴史と文化を感じさせる。多様なスパイスがふんだんに使われた料理は、人々の生活に根付いており、料理を通じて彼らの日常に触れることができる。スパイスを求めてかつてポルトガルがこの地にやってきた歴史が、料理を通して今も息づいているのだ。


人々のホスピタリティ

スリランカの人々の温かいおもてなしは、仏教的な精神から来るものなのだろうか。彼らの親切さに、何度も驚かされた。そして内戦を経験し、そこから立ち直ってきた彼らの話を聞くことで、僕自身も深い学びを得ることができた。

彼らの日常に触れ、その価値観を共有することで、スリランカという国の本質に少し近づくことができたと思う。

カメラに気づくと、無邪気にポーズをとる。「俺たちのこと、撮ってよ。」と。



スリランカで経験した一つ一つの瞬間が、僕にとってかけがえのない記憶となり、新たな視点をもたらした。そんなスリランカ旅行の模様を全10回程度に分けて書いてみようと思う。


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