【スリランカ】 ポソン・ポヤデー 〜月と共に生きる人々〜
2024年6月20日。
この日の街はいつもとは少し違う雰囲気に包まれていた。街中にはランタンが準備され、仏旗が風にはためいている。人々の足取りもどこか浮き立って見える。
観光ガイドやタクシー運転手など、観光業に携わる人々もまたその空気をまとっていた。「明日は飲食店はどこも開いてないから、ホテルで過ごすことになるよ。」と、観光には不向きな日であることをあれこれ理由を挙げて話している。
そんな中、私たちはポソン・ポヤデーの聖地アヌラーダプラへ行く予定があることを告げると、皆が驚いた顔をして「いつもならシギリヤから1時間だけど、明日は4、5時間はかかるだろうね。向こうに着いたとしても、とんでもない人混みだよ。」と話す。
どうやら、彼らは私たちを止めたいようだ。覚悟はしていたものの、少し不安がよぎる。しかし、すでにアヌラーダプラの宿は予約してしまっているのだ。旅人の冒険心が疼く。
私は早朝に出発することを決意し、心を落ち着けるために早めに床に就いた。
ポソン・ポヤデーの前日、その聖地に入る緊張感がありました。少しその緊張感、味わって頂けましたか?👀
街も人も明らかにその日に向けて変わってゆくのです。仏教、そして月と共に生きる人々の暮らしを感じられる日です🌕
ポヤデー:満月の日
2024年6月21日。
スリランカの仏教徒にとって「ポヤデー(Poya Day)」は、特別な意味を持つ聖なる日です。ポヤデーとは満月の日に当たる祝日で、毎月の満月ごとに仏教徒は「信仰に立ち返り、自己を見つめ直す機会」としています。仏教徒たちはこの日を重要視し、各地の寺院を訪れ祈りを捧げたり、断食や瞑想、戒律を守る日として過ごします。
ポソン・ポヤデーの歴史と意義
中でも6月の「ポソン・ポヤデー」は、仏教がスリランカに伝来した歴史的な日として、他のポヤデーとは一線を画す特別な日です。約2,300年前、インドから来た僧マヒンダがアヌラーダプラでスリランカの王に仏教を説き、これがスリランカにおける仏教信仰の始まりとされています。そのため、ポソン・ポヤデーはスリランカ全土で仏教徒が集まり、マヒンダの教えを偲びながら信仰を再確認する日として親しまれています。
アヌラーダプラでの祈りと菩提樹
ポソン・ポヤデーの中心地は、スリランカ最古の王都アヌラーダプラです。この地には、マヒンダが仏教を広めたことを記念する聖なるボー・ツリー(菩提樹)があり、仏教徒たちが祈りを捧げる神聖な場所として知られています。
アヌラーダプラのボー・ツリーは、仏陀が悟りを開いたインドのブッダガヤの菩提樹から分枝されたもので、スリランカの仏教信仰において非常に重要な存在です。ポソン・ポヤデーには、この聖地に多くの信者が訪れ、瞑想や礼拝を通じて仏教の教えに心を向けます。
ダンサラ:「施し」の心
ポソン・ポヤデーのもう一つの特徴的な行事が、「ダンサラ」です。ダンサラとは、ポヤデーの日に各地で行われる無料の食事や飲み物の提供で、仏教の「徳を積む」精神に基づいています。この日は地元の人々が食事を用意し、訪れる人々に惜しみなく振る舞います。
ダンサラは、貧富の差にかかわらずすべての人に施され、分け与えることで慈悲の心や善行の意義を実践する大切な機会となっています。ダンサラに参加することで、スリランカ人は仏教の教えである「布施」を体現し、他者の幸せを願う心を育んでいます。
街を彩るランタンと満月の夜の光景
ポソン・ポヤデーの日には、街中が幻想的なランタンで彩られます。各家庭や寺院、公共の場に色とりどりのランタンが吊るされ、仏教の真理の光を象徴するかのように町全体を包み込みます。
ランタンの灯火は人々の心に温かさと平和を届け、光が放つ柔らかな輝きがスリランカの満月の夜を彩ります。この美しい光景は、スリランカ人が仏教の教えを心に刻むための、視覚的な儀式とも捉えられます。
現代に息づくポソン・ポヤデーの精神
ポソン・ポヤデーは、スリランカの仏教徒にとって、単なる祝日という枠を超え、価値観を再確認する日です。
家族や友人とともに、ポソン・ポヤデーの満月の夜には過去を振り返り、未来への希望を祈り、そして他者に対する慈しみの心を再確認します。
現代社会でこの日を過ごす多くのスリランカ人にとって、ポソン・ポヤデーは古代から受け継がれた仏教の価値観を日々の生活に落とし込むための大切な機会なのです。
スリランカを旅する際にこの満月の日に触れることができれば、ダンサラやランタン、祈りの光景を通じて、スリランカの深い精神性と温かい人々の心に触れる貴重な体験が得られるはずです。
是非、スリランカに行く機会があれば、ポヤデーを体験してみてください。
素敵な出会いがあることを祈っています☺️
また別でエッセイを投稿します。
僕はこのポヤデーで、本当に良い経験をさせてもらいました。確かにこの日は、地球を歩いたと思います。
心からの感謝をこの国に込めて。