日比谷野音という家に帰った。

9月22日、日比谷野外音楽堂にランクヘッドのライブを観に行ってきた。

すっきり晴れて、暑すぎず、涼しすぎず、本当に気持ちのいい空と気候に恵まれた日で、もうランクヘッドのこと好きじゃなくても知らなくてもいいからこの空気を吸いに来たらいいのにってくらいベストコンディションのなか、だんだんと暮れていく空の下、いつもの登場のテーマもなく、オンタイムでふつうにぞろぞろ出てくるメンバーたち、夏の匂いから静かにライブは始まった。

夏というには少し肌寒いが、『まだもう少しだけ、夜よ来ないで』という歌が、暗くなっていく空の下で切なさを帯びて響く。野外でやるライブらしい一曲。

そこからシンフォニア、前進/僕/戦場へ、僕たちには時間がない、とライブの定番の盛り上げ曲が続き、G田さんが走ってステージ裏を回って出てきたりとメンバーのテンションも、夜が迫り徐々に下がっていく気温と反対に野音の温度は上がっていく。

『日比谷野音!帰ってきました!みんなの家、ランクヘッドでーす!みんなもおかえりー!』という小高さんの挨拶に、どう返したらいいかちょっと戸惑う観客たち。
『ここはみんなの家だから、自由にくつろいで楽しんで』と言葉は続き、シューゲイザーへ。

このシューゲイザーの解き放て!とか解放というフレーズもまた、野音という会場に合っていてすごく気持ちよかった。

続く『体温』はもうさんざん聴いてきた一曲ながら、もうすっかり暗くなった野音で命が燃える音が鳴り響くというシチュエーションの熱さ。

闇を暴けでまさしく夜空に右手を突き上げたり、本当にこの野外という会場の空の風景に合った選曲でライブが進んでいくのが気持ちよかった。

ENTRANCEが終わってからは神様なんていない、誰か教えてと暗い楽曲が続くが、客席の半分だけを照らしていた照明と、空に輝く半月が、ランクヘッドの光と闇を強調しているみたいだった。

『何で人間は傷つけあってしまうのかなぁ』という小高さんのこういう話を真面目で素直に聞き入れるのもランクヘッドのファンのいいところだと思う。『みんなもともとひとつの星の欠片だったのになぁ』という言葉から恐らく今回のライブで一番のサプライズ楽曲だった『星の欠片』。カナリアボックスのカップリングということでなかなか聴く機会も少なくなったこの曲が、野音で夜空の下で聴けるという幸福感。何ならこのときにも青いサイリウムがあってもよかったかもしれない。

続く『月の城』も月明かりの下で美しく響く。ランクヘッドには月光少年や十六夜の月の道といった楽曲もあるし、全20曲だったのを考えるともうちょっとやってほしかったかも。

『幸せって、面倒くさかったり逃げ出したくなるような毎日の中にあると思う』という話から『うちにかえろう』。本当に野音ではこういう歌い上げる曲が気持ちよく胸に届く。いい歌だなぁ…としみじみ。

ここで長めのMCタイム。今回の野音のためにチケットの手売りツアーをやってたメンバーには、どこでどのあたりの席を売っていたかを把握してるので、あのあたりはどこどこの人たち、と全国から集まってくれたファンへの感謝。

自分のチケットも下北沢での手売りぶんを買ったものだけど、ああやって全国各地で直接売ってきてその人たちがこうして集まって野音のライブが出来ているっていうのは感動的だった。

売店が19時半で閉まっちゃうからみんないっぱい飲んでくつろいでねと、グッズとは関係ないお酒を勧めたりこの『くつろいで』という言葉が、『家』というひとつの答えみたいなものに行き着いたランクヘッドのライブだけで成り立つ概念で面白いなって思う。

『ツイッターを見てたらみんなのほうが緊張してて、授業参観を見に来る親みたいな気持ちで集まってくれて、こんなにバンドの夢に親身になってもらえるロックバンドはなかなかいないから自分たちは幸せものだ』という言葉のとおり、本当にランクヘッドのファンというかランクヘッドのライブのお客さんの生暖かさ(褒めてる)ってちょっとすごいと思ってる。○○のライブはファンがみんなあったかいとか優しいとかそういう話よくあるけど、ランクヘッドはそれが群を抜いてすごい。本物って感じ。

ここでいよいよ今回の目玉企画、スターマインでのサイリウムバンドだけど、これが本当に月並みながら綺麗でよかった。メンバーが腕に着けようとしたらなかなか着けられなかったのも御愛嬌。そういえばパッと見で明らかにグリーンが多かった印象だったけど何か理由はあったんだろうか。

サイリウム企画も成功に終わったあとはシンドローム、みんなの歌声も大きく響き渡ったアルピニスタと続き、本編ラストとなる玄関。

この玄関の前の『俺たちがみんなを連れてきたわけでも、みんなが俺たちを連れてきてくれたわけでもなくて、みんなで一緒にここまで来たんだと思う。ずっと応援してくれてる人や今回初めて来た人もいる思うけど、そういう人もみんなで一緒にここまで来た。ここがゴールじゃないし、俺らはまたライブハウスでライブをやってるし、みんなの帰って来られる家でありたい』というのが本当に今回の『家』というアルバムのリリースツアーのツアーファイナルで、日比谷野音という大きな会場を家にしたランクヘッドの集大成となる言葉だったと思う。

アンコールではサイリウムではなく、ケータイのライト機能を使って照らし出す『幻灯』。カメラのフラッシュでライト機能を使おうとしてうっかりシャッター押しちゃう人が続出してたのも、一生懸命この企画に参加しようとしてるのが可愛くって本当にランクヘッドのファンは愛おしいよ!としみじみ。

『今日ここに来れなかった人や、天国から見守ってくれてる人もいて、今日のこのライブがこれからも生きていく糧になったらいいと思うし、自分たちに関わった人たちみんなに生きていてほしいから、俺らも一生懸命生きてまたみんなに会えるように頑張る』というのも、全国から今日ここに集まってきた人たちはもちろんのこと、それだけじゃなく今まで関わってきた人たちたくさんの力でこのライブが出来ているんだと改めて。
このライブの終わったあと小高さんが『エゴサーチしてみんなの感想見てたけど、今日来れんかって悔しいっていっぱい見たけど、俺ら生きとるんやけん、また会えばええやん。また、いつでも来てや。今日が終わりやないよ。俺らこれからもっとええライブするんよ。あなたと一緒に。だから、また会える時まで生きといてよ!』というツイートをしていた通り、本当に生きていくこと、生命を歌ってきたランクヘッドの言葉だったし、一緒に生きてもっともっとライブ観たいって思った。

スモールワールドでの『出会えた奇跡』と、カナリアボックスでの『あなたに会えてよかった』、『出会ってくれてありがとう』という生きているからこその想いで締められるライブは美しかった。

ダブルアンコールでの、全身発光体と化したG田さんももはや笑いというよりも、ついにここまで…と泣けてこみ上げてくる感動があった。ベースが下ろせないとか、写真撮影のときのパッツンパッツンな感じでは大爆笑させてもらったり、こういう笑顔で終わるのも本当にいいライブだったなぁと。

明日からの日常に出かけていくのも怖くないし、またこのランクヘッド家に帰ってきたいし、ライブハウスのほうにも顔を出さなきゃだし、家族として一緒に生きていきたいなって思いました。

欲を言えばもっと野音で聴いてみたい曲が他にもあるし、春や夏の季節によってもまた変わるのは間違いないので、また野音でのライブやってほしいなぁ。

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