「え、もしかして、そっち系?」と笑ったことのある君へ
「え、もしかして、そっち系?」
たとえば男の子同士で親密なやりとりがあったとき、何の気なしに発せられる言葉。
それはいつも「冗談」として使われる。
答えはいつだって、二やつきながらの「いやいやwそんなわけないじゃん。」
“そんなわけ”。
“そんな”。
その返答に対し、最近では、「いや、いいんだよ、そういうのだってw」というこれまたニヤつきながらの回答も定番だ。
“そういうの”、。
何が面白いのだろう。
「いいんだよ」ってなんだろう。
別にあなたに受け入られるまでもなく、当たり前に、ここにあるものなのに。
「あいつに迫られてさ〜w」という会話。「え、やばw」という周りの反応。
もし本当に強引に身体を求められたのであれば、それは性被害で、笑い事じゃない。茶化して話せることじゃない。
いつだってマジョリティは強い。
至る所で配慮されているヘテロセクシュアル(性自認と身体的性が一致しており、かつ性的指向が異性であるセクシュアリティ)にとって、いまセクシュアリティにおいて生きづらい空間はほとんどないだろう。
異性愛が、「そっち系」とネタにされることは通常ない。
「カミングアウトなんてわざわざいらなくない?」というヘテロからの言葉。たしかにその通りではあるのだけど。
カミングアウトという言葉がいまあるのは、「セクシャルマイノリティ」の人が、それを伝えることに依然としてハードルがある証拠だ。
そしてヘテロはいつだって、日常でカミングアウトをしまくっている。
「どんな女の子がタイプなの?」
「昔の彼氏がさ」
「その人と結婚を考えてる」
日常で、自分がヘテロであるということを全力でナチュラルに主張している。
「もしかして、そっち系?」と対象化され、ネタにされる日々の中で、たとえば自分がゲイだと伝えることが簡単ではないことは、容易に想像できるだろう。
あなたがその「冗談」を言うとき、周囲にどんなセクシュアリティの人がいるだろう。ヘテロ以外のセクシュアリティを持つ人が、たくさんたくさんいることを知った上で、笑いにしてるのか。どうして自分は笑えるのか、この構造に、自分の立場の強さに、もっと自覚を持ってほしいと、わたしは思う。
「え、もしかして」とゲイをまるでタブーのように扱うヘテロ同士の会話にぶつかるたびに、楽しかった気持ちは一気に萎えていく。
それはわたしが今、パンセクシュアルという「性的欲求を抱く際に、相手のセクシュアリティを条件としないセクシュアリティ」であることも、より影響しているだろう。
彼らの言葉を借りたら、そう、わたしは、もしかしてのもしかして、そっち系、なのだ。
勝手に区別をつくり、異質なものとして対象化し薄ら笑うその発言が、他者を傷つけるかもしれないということを、どうか親しいヘテロのあなたに、知ってほしい。
いつか本当の意味で、カミングアウト、なんて言葉がなくなる日を、願っている。
※セクシュアリティに関する定義は、JobRainbowさんのこちらを記載しています。