拝啓、久米宏様
凄まじい熱さが続いておりますが、久米さん、いかがお過ごしですか?
私は久米さんとは一度も面識はありませんが、久米さんがTBSラジオで「ラジオなんですけど」という番組をされていた頃に、2度ほどメールを読んでいただいたことがあります。自分の書いた文章が久米さんの声で聞こえてきたときの感動は、今でも忘れられません。
その節は本当に有難うございました。
突然ですが、実は私、久米さんにお伝えしたいことがあるのです。
もうお忘れかもしれませんが、久米さんが以前、ラジオでこのようなことをお話されていました。
小坂明子の「あなた」という曲は失礼な曲だと思うんですよね。
小坂明子の「あなた」は1973年にリリースされたヒット曲です。
(そんな失礼なところがあっただろうか)
そう思いながら私は「もしも~わたしが~家を建てたなら~♪」という歌い出しで始まるこの曲を頭の中で再生してみました。しかし失礼と感じるところは、私には思い当たりません。久米さんのお話は続きます。
「子犬の横にはあなた、あなた、あなたがいてほしい」と歌っているが、「子犬の横にはあなた」というのは「あなた」に対して、大変失礼ではないか。そんなに大事な人ならば、「子犬」よりも、真っ先に「あなた」が思い浮かばないのはおかしい。
まさに立て板に水、流れるようにスイスイお話になるので、失礼な歌かもしれない…私もそう思い始めました。
確かに、大事なものは真っ先に頭に思い浮かぶものです。私も買い物に行くときは必要なお財布からカバンに詰めます。うっかり忘れていない限りそうしています。ということは、この曲の主人公の女性は、うっかり「あなた」のことを忘れてしまったのでしょうか。だとすると、
「子犬の横には、あっ!!あなた~あなたが~いてほしい」
というふうに、思い出した感じを表現してくれたほうが聞き手にとって親切な気がします。
それから久米さんはこのようなこともお話になっていました。
「子犬の横にはあなた」ではなく「あなたの横に子犬」ではないだろうか。順番が逆だと思う。
久米さんの歯切れのよい口調でそう言われると、確かに順番が逆かもしれない…私もそう思い始めました。今更曲の歌詞を変えるわけにはいきませんが、家で歌う分には問題ありません。私は久米さんのお話のように歌詞を入れ替えて、小坂明子の「あなた」を歌ってみることにしました。
「もしもー わたしがー 家を~建てたなぁらー 小さなー家ぇをー 建てーたでしょぉおー(中略)真赤なバラとー 白いーパンジー あなたの横には
こいぬぅうううう こいぬぅうううう
こいぬがぁ~~いぃてほしいぃ~!」
歌い終わったあと、私は何だか変な気がしました。三回も繰り返しますと、子犬がかなり強調されてしまいます。これではまるで子犬の歌です。これだけ「子犬子犬」と歌い上げますと、この曲の主人公の女性が、ちょっと異常性のある愛犬家のように思えてきます。
ちなみに、この曲の中には「いとしいあなたは今どこに」という歌詞があります。その一言から察するに、二人は結ばれていないことがわかるのですが、もし男性の方から去ったとするならば、この女性の愛犬家ぶりが、二人の関係を破綻に導いたのではないか。そんなことを想像してしまいます。
久米さん、私、思うのです。
やはりここは原曲どおり「子犬の横にはあなた」のままにしておくほうがいいのではないでしょうか。
ドラマや映画のクレジットなどでも、大物俳優の名前が最後に出ます。ショートケーキケーキを食べるとき、好きなイチゴを最後にとっておいて食べる人も多いです。大事にしているからこそ、最後に満を持して登場させることもあるわけですから、「子犬の横にはあなた」でも、あながち悪いことではないと思います。
なによりも、曲のタイトルそのものが「あなた」なのですから、ここは広い心でもって目をつぶって頂き、子犬の横に「あなた」がいることを認めて頂けたら幸いです。
炎熱の夏の盛りです。疲れが出やすい頃ですので、久米さんもどうぞご自愛下さい。お読み頂き有難うございました。 かしこ。
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