うっかり、やる気を出しちゃいまして
突然ですが、輪廻転生、信じますか? 人は何度も生まれ変わるってやつ。
私は、信じちゃってるんですよねえ。
誰に教えられたわけでもない子どもの頃から、生まれ変わりを当然のことと思っていました。
「生まれ変わっても、お母さんは今のお母さんがいいなあ」と考えていた記憶があるんです。
物心ついたときには、自分をもうひとりの自分が見ているような感覚があったので、そんな気になったのかもしれません。
その一方で、生まれ変わりを思うと、なぜか憂うつでもありました。
さて今回は、そんなお話を。
*
ある人が言っていた。人は魂の成長を求めて何度も生まれ変わる。毎回いろんな課題があり、それはフラグ獲得ゲームさながらだ。今世で取れなかったフラグは来世での課題になる。いわゆるカルマというやつだ。
それから、人は生まれたくて生まれてくるのだそうだ。私やあなたの現状がどうであれ、生まれてこられたのは、すごく幸運なことらしい。まるで、メーテルリンクの「青い鳥」に出てくる、生まれるのを待つ子どもたちの話みたいだ。
実際、それって本当かも、という体験をしたことがある。
もう何年も前、好奇心から、前世が見れるという退行催眠を受けたときのことだ。
私はものすごく高いところから、暗闇の底に光る無数の砂を見下ろしていた。その中から目当ての一粒を見つけて、「この人、絶対この人!」と思った。それは母のことだと確信があった。
すべては目に見えているわけでなく、あくまでも感覚で捉えているのだが、感情はリアルに胸に迫った。何より、私は生まれる気満々だった。
私は、ひと筋の光となって、母のもとへ飛んでいった。
次の瞬間、私は体をぎゅっと丸めて縮こまっていた。まるで母体の中の胎児みたいに。
そして、ハッと我に返った。
地球で生きるのって大変だった! しまった、忘れてた……。
それまで経験したことのないほどの後悔が襲ってきて、泣きたくなった。
でも、あとの祭りである。ロックオンされて動けない。後戻りはできない。
そこで意識が途切れた。
ときどき、あんなやる気を出した自分をグーで殴りたいほどに恨めしく思う。
それでもここまで来たのは、ひとえに、うっかり生まれてしまったからである。
生まれたからには、生きなきゃならない。
当然、いいことばかりじゃないが、たまに笑えることがあったり、美味いものにありつけたりして、それが生きるチカラになる。
本音を言えば、しんどいので、生まれ変わりは今回限りということで勘弁してほしい。
でも私のことだ。いつかまた、うっかりしないとも限らない。
それなら、今回取れるだけのフラグは取っておこうか……って、やる気を出している自分にハッとする。懲りないなあ、私。