憧れの人が綺麗好き過ぎて悲しくなった話
私のアルバイト先は非常に掃除に力を入れている職場である。
どこかを掃除する度に専門のアプリのトークルームに掃除した場所の写真を送信して共有するのである。
そのバイト先に私の憧れの社員さんがいる。
その社員さんは、出勤するとほぼ毎回大量に写真をアップしている。私は、はっきり言って掃除が苦手である。自分の部屋も綺麗な方ではない。
その人とシフトが一緒になるとモチベーションが上がるのであるが、私はよくその人に注意をされる。特に仕込みをした後の洗い場を使った後の後始末などについてである。私が使ったあとは周りに水しぶきが飛び、もやしなどもポロポロ落ちている。
この前、ショックだったのが、
「なんでこうなるのか意味が分からない。」
と言われたことだ。
ゆっくりマイペースにやれば丁寧に出来るのであるが、ランチタイムの直前だったので、急がなければならない。早くやろうとすると、私はどうしても掃除が雑になってしまう。
そう、早く丁寧にすることが出来ないのである。その人は元々仕事も早く、手先も器用なので、私のズボラな仕事ぶりに対してイライラしていると思う。
私は毎回、ごめんなさい……と思いながら、落ちているゴミを拾う。
でも、少し余裕があったり、休憩になると、プライベートの話などもあっちからしてくれる。また、その社員さんとは歌の趣味や価値観も似ているなと感じることが多い。あちらもそう感じてると思っている。
多分、その社員さんは私のことは嫌いではないとは思うのであるが、彼の少々潔癖な性格故に、掃除のことに関しては私に厳しく指摘してくるのである。
私の父親もそのような人だったので、耐性はあるが、やはり憧れの人と掃除の満足度が一致しないのは悲しい。
私は単純なので、その日を境に、家に帰っても掃除に力を入れるようになった。100円ショップで掃除グッズや整頓用のカゴを買って部屋を掃除するようになった。今日もトイレ掃除のブラシとシートを買った。
これから自分の為にがんばるぞ!!と思いながらも、内心はいつかその社員さんに認めて貰いたいという欲求があるのである。
それに気づかない振りをしてひたすら便器を磨いていこうと思う。