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童話小説「ガルフの金魚日記17」
春さんの顔が赤いです。どうしたのでしょう。まさかぷくたちと同じ、金魚になったとか、そんなことはないよね。ぷくぷく。
「ガルフ、聞いてよ!」
「ぷく」
「冬さんとあたしはぜんぜん違う。まったくわけがわかんない」
いきなりどうしたのでしょう。冬さんとけんかでもしたのでしょうか。プリプリしています。
「冬さんがどうかしたのですか」
「夏くんが、近所の子どのたちを子分のようにしてるから、それはよくないことよ。だから、冬さんに、たまには怒ってよって、お願いしたの。そしたら、男の子だから、多少はいいじゃないかって。ダメなものはダメでしょう。そうでしょ、ガルフ」
「まあ、そうですね、ぷく」
「それに最近、いたずらばかりするから、あの子、このままだとおかしな子になっちゃう。心配なの」
春さんは今にも泣きだしそうになっています。
「たしかに、夏くんのいたずらで、ぷくも死にそうになりました。だから、春さんの気持ちはよくわかります、プクプク」
「それに、秋ちゃんが部屋にこもって、出てこないの。部屋でしくしく泣いてるみたいなの。秋ちゃんは秋ちゃんで、心配だし。冬さんに理由をきいてきって、いってもしらんぷりだし。これって、ひどくない」
夫婦げんかは、犬も食わぬといいますけど、もちろん金魚だって、食らいついたらりはしません…。あとでお腹いたになりかもしれませんから、ぷーくぷく。
「…、あたし、冬さんとこれ以上、いっしょにやっていく自信ない。とにかくぜんぜん違うの。これは、どうしようもないわ」
それはですね、そもそも男と女ですから、ぜんぜん違うと思いますよ、ぷく。その違いがわかっただけじゃないですか、ぷく。金魚のぷくだって、そんなこと疑問に思ったことなんてありませんけど…。
ひょっとして、人間はそこのとろがわからないのかしれませんね。まさかねぇー、ぷくぷく。
「ねえ、ガルフ。なに、ぷくぷくやってるの。もっと、真剣に考えてよ。ほんとうに、どうしたらいいと思う」
「夏くんのことですか」
「違うわよ」
「じゃあ、秋ちゃんですか」
「ガルフ、さっきからあたしの話きいてなかったの」
「ちゃんと聞いてましたけど…」ぷく。
「冬さんのことよ。どうしたらいい」
もう、なにいってるのか、それこそわけがわかりません。かってにすれば…。
ぷくは横を向きました。
「ガルフ。あんた、つめたい。こんど金魚鉢に熱湯入れてやるから」
びひゃひゃー、ブクブク。それだけはやめてください。本当にまっ赤な金魚になってしまいます。
そんな恐ろしいセリフを残し、春さんはフフフと笑いながら、さっていきました。
あのぶきみな笑い、震えてしまいます。ぶくぶく。
それにしても突然やってきて、泣きさけび怒りぶちまけ、まるで小型の台風でした。
冬さんの苦労が、少しわかったような気がします。ぷくぷく。
明日の金魚日記へつづく