【YOHAKU】“軽んじられる”と向き合う女の子の話【後編】
こんにちは、YOHAKUです。
今回は前回に引き続き、露出の多いファッションと“夜遊び“が好きな女の子のお話をしていきます。
前編はこちら↓
後編のテーマは、失礼な接し方を許して自分を軽んじてしまうこと。
バーやクラブなどのお酒が提供されるお店は、出会いの場とされることもしばしば。
ナンパも当たり前の光景としてあります。
けれどそこでの失礼なコミュニケーションまで、当たり前にしてはいないでしょうか。
許してはいけないことを、許してしまっていないでしょうか。
“あの子はああいうタイプだから”、“こんな場だし少しくらい”の陰にある苦しさに、スポットを当てていきます。
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お酒の場を楽しめなくなった
―いつも遊びに行く場所では、ナンパとかが頻繁にありますか?
行ったら絶対ある。
まぁ一定数さ、その日の相手を探してるとか、真面目に恋人探してる人とか、男女問わず出会いの場ではあるから……。
そういう人がいるのはまぁわかってるし、いるのはいいねんけど。
―良くないケースもある?
私はそういう目的ではないからなぁ。
全然出会いを求めるのもいいし、今夜の相手を探すとか、あっていいと思うのよ。
お互いいいやんって思えばマッチング成功やん。
けど、やっぱり、声をかけるときに、こっちを軽んじてくるみたいな人がいるから。
失礼な声のかけ方
―「軽んじてくる」というのは、どんな声のかけ方ですか?
例えば、自分が今話したい気分じゃなくても、上から目線で「お前イイやん、ありやわ」みたいな感じで話しかけてくる人が沢山おって。
男の人は年下の女の子には「なにしてるん」みたいな感じで話しかけるけど、女の子の方は「〇〇してるんです~」みたいなのが普通で、やっぱりそういう場でも基本的に男の人が上みたいなところがあるやん。
受け入れられて当然と思ってるところがあるねんな、こっちは遊びたいなんて一言も言ってないんですけど、って思う。
私はそういうのにめっちゃ敏感やから、酷ければ一晩中イライラするみたいなことはある。
「若い女の子っておもちゃみたいにされるやん」
ーそういった男女の非対称性や男性の優勢さについては思うところがありますか?
うーん、若い女の子ってやっぱり、ヒエラルキーが低いなって思う。
ほら、バイトで洗い物してる時におじさんの客に耳引っ張られたりしたことあるって言ったやん。
居酒屋とかはおじさんが一番みたいなとこあるから、どこにいても若い女の子っておもちゃみたいにされるよなって思う。
ー声をかけられた時は、いつもどう対応してますか?
自分もいいなって思う人の時は、喋るよ。
紳士的に声かけて「一緒に飲みませんか」とかなら別にいいやん。
でもほとんどの人が“自分が選んでる“って感じで「お、ええのおるやん」って上から目線やから。
初対面の人間と人間のコミュニケーションではないよね、出会い目的の人が多い場所になると、急に。
そういう態度の人って大体そのレベルの人やからさ、無視するか「話しかけんといて」って言う。
ー無視すると相手はどんな反応のことが多いですか?
勝手に喋りかけてきたくせに、こっちが相手せんかったら「え?無視?」みたいなん言ってくる。
あとは、痴漢とか。
要はナンパって下心ありきやん。
それで構ってもらえなかったら、じゃあお尻だけでも揉んどこうみたいなの?
そんなん痴漢やし、別にクラブやから良いとかないやん。
ー痴漢に対して直接怒ったりはしますか?
うん。
1回、めちゃくちゃ怒ったかな。
私はその日女友達と2人で行ってて、楽しかったんやけど。
男の子2人が話しかけてくるでもなく体つついてきたりするから、段々イライラしてきててん。
で、いきなりパーンってお尻叩かれて、振り返ったらめっちゃニヤニヤして面白がってて、それですっごく腹立って。
ーそうやって怒ることに対して、周りはどういう反応でしたか?
その時は何にも。
でも別の時に、男の人に怒ったことで知り合いの女の子に責められたことがあったかな。
全然知らない人がいきなり絡んできて、友達と喋ってる間もずっと顔触ってきたりしてくるから、邪魔されてると思ってんな。
その人は友達の友達やったらしくて、私のこと一方的に知ってたらしい。
けど、私はその人のこと知らんし、酔っ払ってるからってベタベタ触って良いとかないやんか。
だから私すごい怒ったのよ。
それを学校の女の子の友達にやねんけど、「可哀想」「ひどい」「彼も被害者」みたいなん言われて。「そういう場所やねんから」って言ってきてな。
そういう子もいるんよ、それは本来良くないんやけど。
自分が良くても私は嫌やし。
ー男の論理を内面化してしまっている、ということでしょうか。
そうやなぁ。
ちゃんと合意して、いい感じになってイチャイチャしてるとかやったら別やけど、クラブでも勝手に体触られるなんて痴漢行為やし。
けどそういうの許して別にいいやんって言ってる子は一定数いて、そういうのが一番邪魔になるよね。
急に体触られて嫌やって普通の感覚やと思うねんけどな。
「可愛い」とか言ってくるぶんには良いやん、とか。
それこそ急に話しかけてきた人にさ、拒絶的な態度とる子のほうが少ないよね。中には、可愛いって言われて嬉しい子とかもおるからさ。
勝手に歩いてるだけであれいけそうやんって思われて声かけられたら、私はムカつくけどな。
なんも思ってない女の子もいるから、なんとも言い難いよな。
奢ってもらうこと、可愛いと言われることは「ラッキー」?
―「失礼なことをされているんだよ」ってことを、周りの人に伝えたりしますか?
しない、してもあんまピンとこーへんやん。
それよりも、男の人と遊んだら奢ってもらえてラッキーやんとか、そういう場やねんから怒らんでもいいやん、っていう子が多いかな。
あとは、失礼なことっていうのはわかってても、それは“怒るべきこと”ではないとかね。
そこは適当にあしらうのが大人やん、みたいなのあるやん?
だからいちいち表立って怒るべきことではないと思ってる人が多いからな。
―昔からずっとそんな風にセクハラに対しての怒りに関して、周りとのギャップを感じていましたか?
いや、昔は私も男の人に声かけられても、まぁ奢ってもらえるしとか、話し相手になってあげるくらい良いやんって思ってた。
あからさまに失礼な態度は嫌やったけど。
―それが変わったきっかけってありましたか?
うーん、なんか、そう、一回。
年上の男の人に飲みとかご飯に誘われて、自分はそういう気なかったけど断りづらかったし、ご飯代も出してくれるから別にいっかと思って何回か行ってたのね。
それで、ずっとお酒勧められて断れんくて、そのまま訳わからんくらい酔って。帰ろうとしたけど無理にホテルに引きずられて、朝目覚めて「ああ最悪」ってなったことがあった。ほんまに自分が選べる立場にいたら、この人とは嫌やったなって人と。その時に屈辱的なことも言われたり。
でも相手に下心あったのなんてほんまはわかってたことやし、自分が悪いからしゃーないなって。
別に平気やし、大したことないって思っててんけど、どうしても気持ち悪くて全然許せんくて。
インターネットで調べてたらこういうのもレイプに当たるって知って、あっそうか、私そういう目に遭ったんや、って。
その時、全然自分大丈夫じゃないなって、気づいた。
そのあたりから飲みの場とかで前みたいな楽しみ方ができんくなってきた。すぐイライラするようになってきた、かなぁ。
「こうやって軽んじられていくんや、って」
こういう一個決定的に嫌な思いしないと気づけないって、自分遅いなぁって。
それまでは「きっしょー(笑)」くらいで済ませてたもん。
自分が一方的に搾取されてるとは思ってなかったの。
だから、さっき女の子に話してもピンとこないやろうしって話したけど、自分もそうやったから気づけないのもわかるねん。
でも、そんなんで気づいてたら、遅いやん。
これがきっかけで、相手が自分のことすっごい軽んじてきてるっていうのがわかり出した。
自分が目つけられたのもそういうの許してくれるやろって思われたってことで、こうやってお酒とか使って、搾取されていくんやなって思ったんよね、その時。
それで目が覚めた感じがある。
“許してはいけないこと”を許してしまっていないか
ーそれまではどんな風に捉えていましたか?
なんかそれまではさ、もちろんお酒の場で体触られるのとか、街歩いてて付きまといとか露出狂とかに遭ってもそれでいちいち騒ぐのが間違ってるって認識やったんよ、私も。
住んでるところがあんまり治安良くなくて、小学校の頃から変なおじさんとかが通学路にいたりしてんけど、「え、そんなん別に、見せてくるだけやねんからほっといたらいいやん」とか、「キャーとか反応するから逆効果で、なんも気にしないのが良い」みたいなふうにみんな言ってたし。
数が多すぎるからいちいち騒いでたら確かにキリないっていうのはあるけど、騒いでる方がカマトトぶってる、純情ぶってる、みたいに思ってた時期があって。周りにそういう価値観が浸透してた。
そんなに嫌なものかなとか、それこそ減るもんじゃないしって。
これにも通じることやけど、そうやって性犯罪とか許してはいけないことも許しちゃって、それが普通って思っちゃうって、怖いことよな。
伝えたいこと
―記事を読んだ人に伝えたいことはありますか?
うーん、ちょっと大きいくくりにはなっちゃうけど、失礼な声のかけ方してくる男の人とか、無意識に女の子のこと見下してる人には、人を軽んじるな、とかそんなんかな。
女の子には……自分を大事にしてほしい、かなぁ。
夜とかに遊んでたり露出の多い格好してたからってその子はみんなが軽んじてもいい存在になるわけじゃないし。
私のファッションは男性へのアピールじゃないし、好きな服を着ることで勝手に価値を判断されたり、性犯罪と隣り合わせでも仕方ないなんておかしいと思う。
そもそも遊ぶことは何にも悪いことじゃないし、遊んでる女はあかん、っていうのも違うと思う。
男の人は遊ぶことがステータスになるのに、なんで女の子はダメなん?
女の子も同じで、その子が自分の体とかリスクに責任持って選んでるんやったら個人の自由やし、人にどうこう言われることじゃないと思う。
あとは、そうやって声かけられたり触られたりおもちゃみたいにされるのは、相手の欲求のはけ口にされてるってこと。
けど恋愛と性欲を分けるのって難しいし、無差別に性欲を向けてきてるだけなのかどうかって見極められるものでもないし、受け取り方の問題でもあるからさ。
出会いの場であることは間違いないから、そこは分別が難しいよね。
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お酒の場やクラブなどにいることで“軽んじてよい存在”として見られていること。
それを無意識に許して、自分を擦り減らしてしまっていたことに気づいたこと。
そして、気づいた後は、前と同じようには楽しめなくなってしまったこと。
今回は2本立てで、夜遊ぶことが好きだけれど、人から軽んじられる苦しさを感じている女の子にお話を聞かせてもらいました。
このお話が、どこかで誰かを軽んじてはいなかったか、偏見によって誰かの性格や立場を貶めてはいなかったか、もしくは許せないことに怒ることをあきらめてはいなかったか、一歩立ち止まって考える“余白”になれば幸いです。
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YOHAKUは、誰もがそっと抱えているけれど、他人から見えづらい事情にスポットを当てて、それが読んだ人の優しい想像力の余白となることを目指しています。
「最近こんなことに悩んでいる」
「なかなかわかってもらえないけれど、自分の事情を説明できたなら」
「こんな人もいるって知ってほしい」
こんな気持ちを抱えるかたがいれば、是非インタビューさせてください。
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植木凜・小林華
文責:小林華