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「蜂蜜色のアップルパイ〜黒猫のバニラ物語〜#4」 "吾輩のかなえたい夢🐈‍⬛ "

「バニラのかなえたい夢 🐈‍⬛🐾」


吾輩の飼い主は朝からパソコン画面とにらめっこの様子である。筆が進んでいる時は下書きをしたり資料を読むなど何かしら作業をしているのだが、ここ最近は難しい顔をしてパソコンの前で座ったまま動かない。

小説の下書きをする方法としてWordに打ち込む、愛用のボールペンでノート(ネタ帳)やルーズリーフに書きとめたりと、いくつかの方法で書いて下書きを保存しているようである。
現在ではiPadやスマホ、パソコンなどが日常生活に溶け込み、Wordを使って下書きをすることも多くはなったのだが、飼い主は愛用のペンを使い文筆のアイデアをノートに書くのが主流であった。


物書きだけあって筆記用具や文房具が好きなようで、各メーカーのボールペンや万年筆、装飾が美しいガラスペンなど使って書いたようだが、結局のところ一番使いやすいパーカーのポールペンに行き着いたようである。


飼い主が文筆のアイデアを書き記し続けたボールペンを見ることも触れることもない日が2週間ほど続いている。そしてボールペンが作業机のパソコンの後ろに置かれたまま何日か過ぎたのだ。
次回作のアイデアがうまくまとまらず煮詰まっている状態のようである。

パソコンの後ろにひっそりとたたずみ、動く気配がないポールペン。
いつものように吾輩が「お仕事が終わりの時間だよコール」をするためにパソコンの後ろに移動した時のことである。


吾輩がばたり、ぱたりと動かした尻尾が飼い主の仕事道具のポールペンに当たったのだ。そしてボールペンはころころ……と飼い主の作業机の上を転がった。日頃は冷静な吾輩も動くものを目の前にすると、右足を出さずにはいられない。
ころころころと動くボールペンに"にゃにゃにゃにゃ!"と思わず猫声まで出して、飼い主の大切なボールペンに何度も"猫パンチ"をしてしまったのだ……。


「バニちゃん、私の代わりにこのボールペンで物語書いてくれない?」
2日振りに飼い主の声を聞いたのだった。

吾輩は飼い主に物語のネタを提供することはできるのだが、ペンを持ち物語を描くことは無理がある、お手伝いしたいのは山々なのだが……。

一つの提案ではあるが、現在のAIの技術なら、
"猫語"を人間殿の言葉に変換できて、文字を自動入力できるものもあるかもしれない。もしそういう"猫語変換機"なるものがあるのなら、飼い主の代わりにどれだけでも物語を書けるかもしれない。


この日を境に飼い主のボールペンには触れないよう心がけるようにした。
吾輩が触れることでポールペンが床に落ちて、ペンが使えなくなったら大変なことだ。


ボールペンは飼い主の商売道具の一つなのだから。物語を書いている時の飼い主が一番輝いている。飼い主が輝き続けるのを見るのが生きがいの一つなのだ。だって吾輩は飼い主の"一番のファン"なのであるから。



吾輩が人間なら飼い主のマネージャー代わりになって、文筆作業に集中できるように身の回りのお世話をあれこれ焼くのだが、あいにく吾輩は料理も洗濯もスケジュール管理も出来ない。

吾輩の身体がもっと大きくなって、
"大人の男"ならぬ"大人黒猫"になって飼い主の食事作り、洗濯などのお手伝いが出来るようになりたい、というのが吾輩の「願っても叶わない夢」なのである。
吾輩が"大人黒猫"になることが出来たら、栄養学的にも彩りも味も完璧な食事を作る自信があるのに。



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まあな 19歳年下ツインレイ&トリプル男性との実話集です。何気ない日常も描いています。
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