日本の司法制度1
日本の司法制度は、最高裁判所を頂点とする司法裁判所(通常裁判所)が民事事件(ex.貸したお金を返してほしいが、相手はもらったと言い張っている場合の個人間の紛争など)・刑事事件(ex.犯罪の犯人と疑われている人の有罪・無罪などを決める手続など)・行政事件(ex.原発再稼働を許可した行政の行為に不服がある場合にその許可の取消しを住民が求めるなど)のすべてを取り扱う。
裁判所の系列
憲法において裁判所は、最高裁判所を頂点にして、その下に下級裁判所が属する。下級裁判所はさらに法律で分けられ、高等裁判所・地方裁判所・簡易裁判所・家庭裁判所がある。
最高裁判所
裁判所のトップにある、訴訟の最後の担当を担う裁判所である。大法廷と小法廷で構成され、大法廷は15人、小法廷は5人による合議制である。
現憲法下の最高裁判所が以前に出した結論と異なるときは必ず大法廷で行わなければならないが、旧憲法下の大審院が出した結論と異なるときほ小法廷で審理できる。
下級裁判所
下級裁判所で押さえておきたいのは簡易裁判所と家庭裁判所である。
簡易裁判所は訴訟の目的の価額が140万円未満の場合(貸した139万9999円を返せ、と訴える場合など)と罰金以下などの軽微な刑事事件を担当する。もっと国民が裁判所を利用できるようにと弁護士など裁判の代理人を立てなくても利用できるし、1日で終わる裁判(少額訴訟)もある。
家庭裁判所は離婚や相続などの家庭に関する事件(家事事件)の審判や少年法で定める少年事件の審判を行う。
下級裁判所から始まる審級の三審目は最高裁判所であるが、簡易裁判所から始まる場合は原則として高等裁判所が三審目となる(最高裁判所に判断を求めることができる場合もある)。
民事訴訟と刑事訴訟
裁判所の裁判は三審性が採られている。第一審の判決に不服ならば控訴でき、第二審(控訴審)の判決に不服あれば上告できる(あわせて上訴という)。これは民事事件・刑事事件共通である。民事訴訟と刑事訴訟の違いは審判対象・訴訟の開始・裁判官の判断・再審制度の有無で押さえるべきである。
(1)審判対象
原告が私法上の権利義務の存在を主張し、被告を訴えるのが民事事件(民事裁判)である。たとえば被告Aが原告Bに腹を立て殴った場合にBがケガをしたとする。その場合Bには民法で定められた不法行為による損害賠償請求権という権利が認められるので、損害である治療費や怖い思いをした慰謝料の請求を訴える裁判である。
AがBを殴った場合、ケガをすれば刑法204条の傷害罪にあたるし、ケガしなければ208条の暴行罪にあたる。刑事事件(刑事裁判)は検察官が被疑者Aに対して具体的犯罪事実を主張し、求刑も含めて公訴提起する(起訴するともいう)。
(2)訴訟の開始
民事事件は原告が被告を訴えることで始まる(これを原告の申立てともいう)。民事事件のスタートは国がおせっかいで始めることはできない(これを処分権主義という)
刑事事件は逆に国家権力しかできない。検察官が公訴提起をするかどうかを決めることができる。起訴できるのは原則として検察官だけ(国家訴追主義)で、さらに犯罪の事実は明らかでも証拠不十分で無罪が確定した場合は新証拠が出てきても新たに裁判はできないため(二重の危険禁止)、起訴しないこともできる(起訴便宜主義)。
(3)裁判官の判断・再審制度
民事・刑事ともに裁判官の判断は自由心証主義である。裁判で出されたあらゆる証拠や事実から自由に判断できることである。つまり100人中100人が黒だと思っても、裁判の過程から裁判官は白と判断することもできるのである。
また民事・刑事ともに再審制度がある。再審は確定した判決の取消しや変更を求める申立てである。刑事の場合は有罪確定を、新証拠によって無罪にするために認められているもので、その逆はない。