虫よけ剤は、ぬり残しのないように
◆蚊が運ぶ病気
デング熱は熱帯地方の蚊によって伝染する病です。
日本にはない病気と思われていましたが、2014年、東京で流行しました。
海外との距離が縮まった現代では、他の蚊が運ぶ病気である、
マラリア、ジカ熱、黄熱なども、容易に日本で流行しうるでしょう。
登山、ハイキング、熱帯地方への海外旅行の際には、
蚊対策も重要であり、虫よけ剤も有効手段の一つです。
◆虫よけ剤は「隠れみの」
虫よけ剤は、そのニオイで蚊が寄り付かない、というものではありません。
蚊は皮膚表面のアミノ酸、皮脂、乳酸、イソ吉草酸を頼りに、
「人間の皮膚」を認識しています。
虫よけ剤は、それらをかく乱する働きがあり、
塗った部分は「人間の皮膚」と認識できなくなるのです。
つまり、「隠れみの」のような働きがあります。
もし、一部分でもぬり残しがあれば、
天空に浮かぶ「おいしい皮膚」めがけて、蚊は寄ってきます。
◆虫よけ剤のぬり方
虫よけ剤をぬるとき大切なことは、ぬり残しのないようにぬることです。
スプレーでシュッとひと吹きするだけでなく、
手でムラなくのばしましょう。
顔は蚊の好きな場所です。
虫よけ剤を手のひらに取り、手をこすり合わせた後、
顔に薄くぬってもよいとされています。
小さいお子さんの手につかないようにしましょう。
目をこすって目に入ってしまうからです。
日焼け止めと虫よけ剤の両方を使う場合、
日焼け止めを先に、虫よけ剤を後にぬりましょう。
◆2つの虫よけ剤
虫よけ剤は、その有効成分により「ディート」と「イカリジン」の2種類に分かれます。
効果に大きな違いはありません。
「ディート」は6か月未満の乳児には使えません。
また、ニオイがあること、ストッキングに付くと穴があくことなどの難点があります。
昔からある薬であり、安心の実績があります。
「イカリジン」は2015年に承認が下りた、新しい虫よけ剤です。
年齢制限がなく、ニオイもほとんどありません。
ストッキングについても穴が開くこともなく、使いやすい薬です。
どちらも一長一短がありますが、私は「イカリジン推し」です。
本当は、虫よけ剤を使わない「長袖・長ズボン推し」なのですが。
参考文献
和田康夫,田中麗子:「虫除け剤の効果的な使い方」,MB Derma. 270:61-65,2018