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食べ物アレルギーの原因は石けんだった

◆小麦アレルギー

小麦アレルギーと一口で言っても、下記の種類があります。

・乳幼児期:アトピー性皮膚炎のお子さんにみられる、小麦の即時型アレルギー
(即時型アレルギーとは、食べてすぐに出るじんましん、顔のはれ、腹痛など)
・学童期以降:小麦による食物依存性運動誘発アナフィラキシー(別の記事で詳説)
・小麦を扱う職人:小麦喘息(小麦の粉を吸うことによる喘息)
加水分解コムギアレルギー

今回の記事は、「加水分解コムギアレルギー」を取り上げます。

◆全員が同じ石けんを使っていた

参考文献の筆者によると、2008年ごろから、顔がはれて皮膚科を受診する患者が増えてきたそうです。
尋ねると、小麦製品を食べた後に運動して、顔が腫れたとのことでした。
その時は分かりませんでしたが、後に、それらの患者が同じ銘柄の石けんを使っていたことが判明したのです。

ミステリアスな内容になってきましたが、その石けんには泡立ちを高めるために「加水分解コムギ」が配合されていたのです。

◆加水分解コムギとは

加水分解コムギとは、小麦を酸などで分解して作った添加物です。
加水分解コムギにも数種類あり、化粧品、洗剤、食品に使用されています。
今回、問題を起こした加水分解コムギは、他のものと比べると分子量が大きく、アレルギーを起こしやすいことが分かりました。

◆経皮感作

加水分解コムギを含んだ石けんを使っていた人が、なぜ、小麦アレルギーを起こすようになったのでしょうか。
それを知るには、「経皮感作」ということを理解しなければなりません。

ここで質問です。
どんな人が小麦アレルギーを起こしやすいでしょうか。

①パンを滅多に食べない人
②パンを毎日食べる人
③パン屋さん

イギリスでは古来、「ピーナッツを食べるからピーナッツアレルギーを起こす」と信じられてきました。
しかし、最新の研究によると、ピーナッツを含むオイルをぬることによって、ピーナッツアレルギーになることが分かってきました。
ピーナッツを食べると、逆にピーナッツアレルギーになりにくいことも判明しました。

その理由は、「皮膚から入ってきたものは敵とみなし、胃に入ったものは味方とみなす」という体の免疫システムによります。

ピーナッツオイルを皮膚にぬると、体はピーナッツは敵だと認識し、ピーナッツアレルギーになります。
ピーナッツを食べると、体は味方だと認識するため、ピーナッツアレルギーになりにくいのです。

この理論からすると、先ほどの質問の答えは明らかでしょう。

皮膚からの侵入物によってアレルギー体質になることを「経皮感作」といいます。
石けんに含まれていた加水分解コムギが皮膚から侵入し(経皮)、
体の免疫システムはこれを外敵と判断したのです(感作)。

◆皮膚をきれいに保つ

問題となった石けんは回収され、この世から姿を消しました。
しかし、これで一件落着したのでしょうか。
日々、新しい添加物が開発され、世に送り出されています。
第二、第三の事件が起きはしないか、私達は常に目を光らせなければならないでしょう。

どうすれば、新たにアレルギーを起こさずに済むのでしょうか。
荒れた皮膚から、石けんや化粧の添加物が侵入します

アトピー性皮膚炎や手荒れのある人は、治療とスキンケアをして、
皮膚をきれいに保つことが大切なのではないでしょうか。

参考文献
森田栄伸、千貫祐子:「加水分解コムギ含有石鹸の使用による小麦アレルギー」,MB Derma. 245: 29-33, 2016.

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