乾燥した肌に、食べ物はぬらない
◆ピーナッツオイルによるアレルギー
イギリスでは、入浴後の赤ちゃんの皮膚にオイルを塗る習慣があるそうです。
そのとき、ピーナッツオイルが含まれ製品を使用すると、乳児期にピーナッツアレルギーの発症が約8倍増加したと報告されています。
なぜでしょうか。
◆ぬったもので感作
表皮は、表面から角質層、顆粒層、有棘層、基底層の4層から構成されています。
顆粒層には「タイトジャンクション」といわれるバリアがあり、
水や物質の行き来ができないようになっています。
「タイトジャンクション」の「タイト」とは「すき間がない」、
「ジャンクション」は「結合」という意味ですから、
「タイトジャンクション」は、細胞がすき間なくしっかりと結合しているということです。
タイトジャンクションが、外敵の侵入を阻止し、
大事なものが出ていくのを防いでいるのです。
アトピー性皮膚炎や乾燥肌の人は、
このタイトジャンクションが弱くなっています。
そこにピーナッツオイルをぬるとどうなるでしょうか。
ピーナッツオイルが、タイトジャンクションを通り抜けます。
表皮にはランゲルハンス細胞という外敵を監視している細胞がいます。
外から入ってきたピーナッツオイルを見つけたランゲルハンス細胞は、
敵かもしれないと思うのですが、敵だと断言できず、何回かは見逃してくれます。
しかし、侵入が度重なると許してくれません。
ピーナッツオイルを敵とみなして、指名手配をします。
この状態を「感作」といいます。
感作された後、ピーナッツを食べるとアレルギーを起こします。
赤ちゃんは皮膚が脆弱なため、ピーナッツオイルに感作されやすく、結果、ピーナッツアレルギーが増えたのでしょう。
◆食べ物は体にぬらない
ここでの教訓は、体に得体のしれないものはぬらないということでしょう。
特に、食べ物からできたものはぬらない方がよいでしょう。
例えば、ハチミツを体にぬっているとハチミツに感作され、
ハチミツアレルギーを起こすかもしれません。
きゅうりのパックも、褒められたものではないでしょう。
柑橘系のアロマオイルも、乾燥肌の人は避けた方が無難かもしれません。
参考文献
善本知広:「経皮感作食物アレルギーの分子メカニズム : 二重抗原曝露仮説の実験的エビデンス」,アレルギー 66(10): 1224-1229, 2017.