山の男は牛肉が食べれない
今回は、「登山愛好家」と「牛肉アレルギー」の意外な関係についてです。
◆牛肉アレルギーとは
他の食物アレルギーと比べて、牛肉アレルギーは少し変わっています。
通常のアレルギーは、食べてすぐ(約30分後)に、じんましん、体がかゆくなる、くちびるがはれる、などの症状を起こします。
牛肉アレルギーは、食べて3時間も経ってからアレルギー反応が出ます。
症状は、じんましん、下痢、血圧が下がって意識がなくなるなど、ひどくなることが多いです。
◆4本足の動物はダメ
牛肉アレルギー患者30名を調べた論文によると、そのうち全員が「豚肉」に対するIgEが高く、全員が「鶏肉」に対するIgEは陰性でした。
つまり、4本足の動物(牛、豚)にはアレルギーがあり、
2本足の鳥にはアレルギーがありませんでした。
また、30名全員で、「カレイの卵」に対するIgEが高くなっていました。
牛肉アレルギーの人は、豚肉やカレイの卵も注意したほうがよいようです。
◆なぜ、山の男が牛肉アレルギーを起こすのか?
牛肉アレルギーと「マダニ」という虫との間に、意外な関係があります。
「マダニ」は野生動物に寄生して生息し、山林や河川敷の草むらに潜んでいます。
人間が通ると、まず服にくっつき、はって人肌に到達して吸血します。
牛肉アレルギーの原因物質はα-Galですが、
ある種の「マダニ」の唾液にはα-Galが含まれています。
マダニにかまれてα-Galに対してアレルギーを持つようになると、
牛肉を食べたとき、牛肉のα-Galに反応して
「じんましん」や「アナフィラキシーショック」を起こします。
牛肉アレルギー患者30名のうち、マダニにかまれた自覚のある人は3名でした。
マダニにかまれても痛くないので、気づかないうちにかまれたのかもしれません。
25名が犬を飼っており、犬の散歩の際にマダニにかまれたのかもしれませんし、犬に付着したマダニにかまれたのかもしれません。
登山愛好家で、じんましんなどのアレルギーを起こす人は、
牛肉アレルギーを疑ってはどうでしょうか。
参考文献
1)千貫祐子,森田栄伸:「マダニ咬傷と牛肉アレルギー」,MB Derma. 245: 40-48, 2016.
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