アトピー性皮膚炎では、かゆくならない程度に汗をかくといい
「汗でアトピー性皮膚炎はひどくなる」
長い間、常識のように思われてきましたが、
塩原哲夫医師(杏林大学名誉教授)の研究によって、
その定説が覆されようとしています。
汗そのものは悪者ではありません。
汗には各種の潤い成分が含まれており、
基礎発汗(常にわずかに出ている汗)により皮膚は保湿されています。
「汗は乾燥肌に良い」
そんな事実がなぜ、長い間、見過ごされてきたのでしょうか。
それは「汗をかくとかゆくなる」という現実からでしょう。
アトピー性皮膚炎の人は、汗をかくとかゆくなるので、
汗を避けてきました。
なぜ汗をかくとかゆくなるのでしょうか。
◆汗でかゆくなるのは、汗が皮膚を刺激するから?
汗をかくとかゆくなるのは、汗が皮膚の表面を刺激するからでしょうか。
それも一理あります。
それを信じて医師は、
「汗をかくと早めにふきましょう。シャワーで汗を流しましょう」
と指導してきました。
しかし、患者さんは分かっていました。
そんなことをしてもかゆみはおさまらないことを。
そのため、患者さんは湯船につからずシャワーのみにし、
夏は冷房をガンガンにかけ、汗を避けるようになりました。
それで、ますます汗が出なくなり、皮膚の乾燥に拍車がかかったのです。
◆汗でかゆくなるのは、皮膚の中に汗がもれるから
汗をかくとかゆくなるのは、「汗が皮膚の表面を刺激するから」だけでなく、「汗が皮膚の中にもれるから」です。
皮膚は「表皮」と、その下層の「真皮」からなっています。
真皮に、「汗腺」という「汗を作る工場」があります。
そこで作られた汗は「汗管」というパイプを通って皮膚の表面に運ばれ、
皮膚を潤しています。
アトピー性皮膚炎では、「汗がパイプから漏れている」と、
塩原医師は証明しました。
汗には「炎症性サイトカイン」が含まれているため真皮が炎症を起こし、
かゆくなるのです。
「真皮に汗が漏れないように上手に汗をかく」
それこそがアトピー性皮膚炎を克服する「汗活」の神髄でしょう。
毎日15分以上は湯船につかり、かゆくなる直前でやめる。
そんな「汗活」もいいかもしれません。
参考文献
塩原哲夫:「汗をかかないとアレルギーになる」,アレルギー 67(7): 923-926, 2018
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