「くちびる」と「舌先」が食道がんを防いでくれる
「食道がん」と「咽頭がん」の患者さんは年々増えています。
その原因は飲酒とタバコですが、3番目に「熱いものの飲食」が挙げられます。1)
◆熱い飲み物でがんになる
イギリスの女性はフランスの女性に比べて「食道がん」がとても多いですが、毎日熱~い紅茶を飲む習慣「アフタヌーンティー」のせいと言われています。
奈良県南部から三重県、和歌山県の山間部で、食道がんが多発していましたが、火から下ろしたての茶粥を食べる習慣によると言われています。2)
熱い食べ物や飲み物が食道がんに深く関係していることは、
統計的にも証明されています。
◆「くちびる」と「舌先」は熱さに敏感
熱い焼きいもをほお張ったり、熱いうどんをすすって、
口の中をやけどしたことはありませんか。
口のやけどは、多くは口の中の上の部分(口蓋)であり、
「くちびる」や「舌先」をやけどすることは少ないのではと思います。
口の中の場所によって、神経の敏感さが異なるからです。
口は何℃で「熱い」と感じるのでしょうか。
「くちびる」「舌」「口蓋」「ほほの粘膜」など、
部位別に調べた実験があります。
その結果、「くちびる」と「舌先」が一番敏感で、
33℃で「熱い」と感じました。
一方、「ほほの奥」「口蓋の奥」は47℃にならないと
「熱い」と感じませんでした。3)
粘膜は42℃でやけどをします。
「くちびる」と「舌先」は温度センサーが敏感なので、やけどしにくく、
口の奥の粘膜は鈍感なので、やけどをしてしまうのです。
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」と言われますが、
食道はさらに熱さに鈍感でしょう。
飲み込んでしまえば熱くないからと油断していては大変なことになります。
やけどを繰り返しているとがんになります。
どうすればいいのでしょうか。
◆「くちびる」と「舌先」で熱いと感じるものは食べない飲まない
「くちびる」と「舌先」が熱さに敏感なのは、
食道を守るための仕組みなのかもしれません。
「これは熱いから飲むなよ」と検温してくれているのです。
南米のマテ茶を飲む地域では、食道がんが多いと言われています。
マテ茶の成分が悪いのではなく、非常に熱いマテ茶をストローで飲む習慣のためと考えられています。
検温役のくちびると舌を飛び越えて、熱いお茶がダイレクトに食道に入るのですから、たまったものではありません。
熱いけど食べていいのか。飲んでいいのか。
「くちびる」と「舌先」で検温してから飲食しましょう。
参考文献
1)島田英昭:『逆流性食道炎は自分で防ぐ!』,池田書店,2019年
2)尾瀬功ら:「咽頭癌・食道癌の疫学とリスク因子」,消化器内視鏡 28(1): 36-41, 2016
3)望月美江ら:「口腔粘膜の温覚, 冷覚, 触覚閾値の定量的評価」,日本口腔科学会雑誌 56(3): 275-284, 2007
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