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うかんむりとおかんむりがある文房具店にて

3連休の最終日。最後の日は近場で済ませようと、考えることはみんな同じだったようで、とある文房具店は、予想以上の混雑ぶりでした。売り場にひとたび足を踏み入れると、そこは興味深い人間ドラマの舞台。のぞき見てしまった光景を、こっそりお届けします。

最初に耳に飛び込んできたのは、ある親子の会話。

「どうして三角定規を食べちゃうのよ。落として折るならともかく。けがしなかったから良かったけど。折れたら使えないでしょ」。小学校の低学年と思われる男の子は「へへへっ」と、どこか得意げな表情を浮かべています。

食べたというより、かじったのでしょうが、つい考えてしまいます。三角形のどの角度に挑んだのか。鋭い30度か、角のある90度か、バランスのとれた二等辺三角形か。謎は深まるばかり。

そんな妄想にふけっていると、お母さんの言葉に思わず足を止めました。「ふつう食べるなら消しゴムでしょ」(※消しゴムは食べ物ではありません)。

ああ、いました、いました。消しゴム食べてしまう子。あの香り付き消しゴムの誘惑。気持ちは良く分かるけど、辛い過去は消しゴムじゃ消えないんですよね(遠い目)。

キャラクターグッズコーナーでは、違った親子の物語が展開中です。

「お姉ちゃんが1年生になるのは来年だからね。そのときになったら好きなキャラクターが入った文房具買ってあげるから、ねっ」。

お父さんにおんぶされた女の子は、林修先生顔負けの断固たる口調で応戦します。「わたしは今がいい。今が大事なの」。その言葉に思わずうなずいてしまいます。

確かに、明日なんてどうなるか分からない。自分も頑張ろう―。胸に手を当てたところで、女の子と目が合い、「あんたも何か言ってやってよ」と訴えられたような気がしましたが、典型的な日本人の性(さが)として、苦笑いで難を逃れました。

バッグ売場では、中年夫婦の緊迫したやり取りが響いています。どうやらカラビナが付けられるポーチを物色しているようです。

妻が容赦ない直球をぶつけます。

「どれでもいいって、何その言い方。そういう適当なところが全て数字に表れているの。いい?給料、体重、通帳残高。数字は嘘を付かないの。サイズが合わなかったらってまた買い直すほど、わが家に余裕はあるの?」。

空気が凍りつくような緊張感。手にしていたミドリのMDノート(方眼タイプが好きです)で耳をふさぎたくなりました。売り物なのでやめましたが。

夫の引きつった表情を見ながら、心の中のSpotifyで海援隊の「声援」をそっと流します。ちなみに小学生時代、歌詞にも登場するこの「声援」を「千円」と勘違いし、「武田鉄矢ケチだな、テレビに出てるのに」と思い込んでいた黒歴史は、ここだけの話。

冬来たりなば春遠からじ―。この言葉通り、文房具店の喧騒の向こうに、確かな春の足音が聞こえてくるようでした(ひとごと)。

ちなみに、本日の戦利品は、サンスター文具こん身の「ウカンムリクリップ」。売り場では「うかんむり」ならぬ「おかんむり」の人が多かったようですが。ははは。

さあ、これから帰ります。


出先からスマホのみで記事を書いているため、インデント(字下げ)は、帰宅後に対応します。使っている環境では全角の空白が入力できないんですよね。


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はなふさふみ
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