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宝石の定義をおさらいします。

  • 比類なき美しさ

  • 希少価値

  • 不変の耐久性

これまで散々、硬度だ靭性だクリベージだと書いてきたので、今日は耐久性のお話です。宝石の耐久性(Durability)は、次の3つで示されます。

  1.  硬度(Hardness)

  2.  靭性(Toughness)

  3.  安定性(Stabirity)


1.硬度(Hardness)


硬度は引っ掻きに対する抵抗力、有名なのはモース硬度です。これは鉱物間の序列であって、等間隔ではありません。

硬度9のコランダムは硬度8のトパーズの5倍、硬度10のダイアモンドは硬度9のコランダムの5~140倍にもなるのです。

 10 ダイアモンド
  9 コランダム
  8 トパーズ
  7 クォーツ
  6 オーソクレイズフェルドスパー
  5 アパタイト
  4 フローライト
  3 カルサイト
  2 ジプサム
  1 タルク

人間の爪や歯が、だいたい硬度4ぐらいと教わりました。

2.靭性(Toughness)

ではダイアモンドは何よりも硬いかと言うと、硬度はあくまでも「引っ掻き」に対する強さであって、割れや欠け・砕けに対する抵抗力(粘り強さ)はこの靭性で表します。

【クイズ】
宝石の中で最も硬いダイアモンドですが「金槌で叩くと割れる」
か✖か⁉

こんなクイズをTVで見たことがあります。答えは〇で、会場から「えー?」とか「おぉ~」とか。これが硬度と靭性の違いです。

靭性は、卓越 > 優秀 > 良好 > 可 > 不可 で示します。

靭性の順ですと、硬度と逆になるものもあります。例えば;
 ネフライト硬度6~6.5 > ジェイダイト硬度6.5~7 > ダイアモンド硬度10 です。

ネフライト(熊)>ジェイダイト(ラベンダー)>ダイアモンド(原石)
硬度はそこそこで粘り強い石は彫刻に向くのです

ネフライトの靭性は「卓越(ジェイダイトより勝る)」
ジェイダイトは「卓越」
ダイアモンドは、クリベージ方向には「良好」、それ以外は「卓越」
(弱い方向でも「良好」なので、やっぱり強い石ではあります)

中国語圏で翡翠を玉と言いますが、硬玉がジェイダイト、軟玉がネフライトです。翡翠の彫刻はネフライトが多いのですが、台湾の故宮博物院の白菜はジェイダイトでしたね。

クリベージ(劈開へきかい・cleavage)

そのクリベージとは何ぞやという話ですが、定義はこんな感じです。

宝石の結晶格子の原子間結合力が弱い方向に起こる、平行かつ平滑な割れで、結晶の特定方向に沿って起こる。平行で平滑なクリベージと、不規則なフラクチャー(あらゆる割れ)によって、階段状に見えることが多い。

下の写真はカルサイト、クリベージは「3方向完全」です。「完全」というのはこのようにスパコーン!と割れます。割れたどの面もクリベージですが、階段状というのは上の面(左上の暗い部分)が見やすいと思います。

向かい合う平行な面は1方向として数えます。3方向ぐらいならまだしも、スファラライトは6方向。石を回しながら数えているうちに、どの面を数えたかわからなくなります。

「1方向、2方向、3方向、4方向……ここ数えたっけ?ええい、スファラライトだろう!(だいたい当たり)」
クリベージが「明瞭」だとここまでは割れませんので、欠けや割れた面も鑑別の手がかりとしては重要なのです。

下の記事でも書いたのですが、ダイアモンドが♢このマークで示されるのは、これが良型の結晶の型であり、クリベージ方向でもあるからです。ダイアモンドは4方向完全です。ですから、上のクイズの種明かしは「クリベージ方向に金槌を振り下ろせば割れる」のです。

3.安定性(Stabirity)


これは化学作用に対する抵抗力です。酸による化学分解や変色、温度変化に対する抵抗性を示します。

ダイアモンドは安定性にも優れていて、研磨の最終工程で汚れを取るために、塩酸や硫酸で煮沸されるほどです。

酸に弱い石は、人間の汗でも変色したり輝きを失ったりすることがあります。汗って酸性なのです。また、熱に弱い石はひび割れたり、褪色したりするので注意が必要です。紫外線で褪色する石もあります。

購入・加工・着用の注意点

モース硬度は有名ですが、他の耐久性も考えないと危ないことがあります。
「トパーズは硬度が高い(=8)のに、どうして扱いに注意しろと書いてあるの?」
との質問を受けました。

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