使えない上司の利用価値
ヒト様に対して「使える・使えない」と表現したくないものですが、思わず「使えねぇっ!」と叫んでしまうような上司など、たまにいるのではないでしょうか。
人事院勧告に関するニュースを見ていて、そんな「使えない」上司を思い出しました。
2024年度の勧告の内容は
・11,183円増の約30年ぶり高水準ベースアップ
・採用市場での競争力向上のため、初任給を大幅引き上げ
・通勤手当の支給限度額を月15万円に引き上げ、新幹線通勤の要件を緩和
・配偶者手当の廃止と子に係る手当の増額
私が評価できるのは「配偶者手当の廃止」ぐらいですね。これは政府が進めていることですから当たり前ではありますが。
月に15万円も通勤費を払ってあげるほど、遠くに住む価値は何なのでしょう。確かに国家公務員は転勤が多いですが、それは転勤の中で処遇すれば良いことでは。
この勧告にどうしてネガティブな印象を持ってしまうかというと、例えば「採用市場での競争力向上のため、初任給を大幅引き上げ」の部分です。採用市場での競争力ということは当然民間と比べているわけですが、比較対象は大企業です。
人事にいると、色々な省庁から多種多様な調査依頼が届きます。省庁から発表される民間の勤怠や給与、制度の実態は、そのようなメンドクサイ調査に各社の人事が忙しい合間を縫って答えてあげた結果です。迷惑料として商品券でも同封されていれば、まだやろうかという気にもなるのですが。忙しいので、法律で提出が必須の調査以外はやりたくありません。
出さずにいると督促の電話がかかってきます。「必須ですか?」「何の法律に基づいて必要とされている調査ですか?」と聞いていくと「今回は辞退されますか?」など面白い選択肢が出てきます。当然辞退ですが、辞退というのもなんだかおかしな話です。
それで、です。人事院の給与調査に誰も答えていなかったらしく、督促がありました。特に担当はいないので「使えない」人事部長に回りました。仕事は部下に丸投げ、自分で責任は取らない、言い訳が甚だしい、手柄は俺のもの、という人だったので珍しいと思いました。席が近く、丸聞こえです。
「大体、お宅らさぁ、この調査を大企業にしかしないでしょ?それで公務員の給与決めるの、おかしくない?もっと中小企業も入れた平均ならわかるけどさ。大企業の平均を参考にしてたら、そりゃ高すぎるとか税金泥棒とか言われてもおかしくないと思わないの?」
など、ネチネチグチグチネチネチと続きました。あなたも相当な給与泥棒だけどな!と思いながら聞いて、内容的にはスカッとして、このヒトは今回だけは役立ったなと思ったのでした。
結局、提出しなくてはいけなかったと思うので、精一杯の抵抗です。当然、彼はいつものように給与担当に丸投げです。それでも「一応、文句は言っておいたからさ」と言われて渡されて、担当者も少しだけ気が収まったら良いのですが。
この時は確かに大企業でした。この後はほぼ中小企業で経験を重ねましたが、この人事院の調査はありませんでした。大企業しか参考にしていないと、あの上司が言っていたことは本当でした。