ケース面接とは?概要と各戦略コンサルで求められるレベル
この記事では、戦略コンサルファームの面接試験で課されるケース面接について、概要から各企業群で求められる水準、対策方法について説明します。
次の記事では、より具体的に、ファームごとで合否が分かれるポイント、参考にすると良い本、対策サイトとの使い分けなどを詳しく説明します。こちらの記事の方がより実践的な内容になっており、今回の記事はざっくりな全体像を知りたい方におすすめです。
ケース面接・フェルミ推定とは
この記事を読んでいる方の多くは「ケース面接とは何か」を知っている方だと思いますが、未経験や学生の方に向けてそもそもケース面接とは何かについて説明します。
インターネットでは以下のような情報がまとまっています。
ケース面接とは、面接官がクライアントの立場で課題を提示し、その解決策を提案するシミュレーション形式の面接です。ケース面接では、与えられた課題に対して制限時間内に適切な対策を提案する必要があります。出題内容は、実際にコンサルティングファームで取り組むような経営課題が多く、課題に対する問題解決力や分析力、論理的思考力が求められます。
ケース・フェルミ対策は超重要
概ねの内容は上の通りです。ケース思考力は、戦略コンサルファームではかなり重視される要素です。実際にMBBの1つであるベインは、全ての選考がケース・フェルミ推定のみで決まってしまうほど、論理思考力や分析力は重視されています。ちなみに同社では採用前の候補生たちに現役のコンサルタントがケース・フェルミの解き方や考え方をレクチャーしてくれるような教育まで行っています(特定時期に限る)。
ケース面接を行う前に、フェルミ推定を行う場合も多いです。フェルミ推定については、以下のように定義されています。
例えば、はじめにフェルミ推定として「カフェの市場規模」を求め
次にケース面接として「都内カフェチェーンの売上向上施策」を求める
というような2段階構成で面接を行うことが多いです。
または、ファームによってはケース面接かフェルミ推定のどちらかを出す場合もあります。
面接で求めらるフェルミ推定のポイント
フェルミ推定に関しては、お題の業界はどのようなビジネスモデルで売上があがっているのか、売上に関わる重要な変数は何があるのか、を網羅的に把握し、最適な構造式を選択できるかが重要になってきます。
その次に正しく計算が出来ているかなどの評価軸が入ってきます。あくまでもビジネスの構造をその場で考えて、その業界にとってポイントになる要素は何かをわかっていること・その各要素を構造化できることが最重要です。
実際の市場規模と桁が1,2個くらい違っても大きな問題ではなくて、各変数に正しい数字が分かったときに入れ直せばいいだけです。まずは妥当な構造式を作れること、慣れてきたら構造式のパターンを複数出せることを目指していきましょう。(ただ、最低限時間内に計算しきることは求められます。)
例:カフェの年間売上
今、構造式とか変数とか小難しい単語を出してしまったので、実際のフェルミ推定の中で説明します。先述のカフェの売上構造式を作ってみましょう。
1店舗を前提とした式なら以下の通りです。
レジ台数×レジ稼働率×レジ1台当たりのMAX客数(1hあたり)×営業時間×営業時間ごと混雑率×客単価×年間営業日数
この式の中でレジ台数、レジ稼働率と並んでいるのが変数、パラメーター、構成要素です。この式全体を構造式と呼んでいます。
カフェの市場規模や年間売上のフェルミ推定については、後続の記事で詳細に解説予定です。上の式は1店舗の売上式ですが、日本全体、都内のカフェ市場規模と問われた場合には構造式の作り方が変わってきます。また、1店舗の場合でも上記のほかに複数パターン構造式を作ることもできます。
ファームによりますが、大体5分くらいで計算しきれるようになるのが理想的です。3分、1分など短い時間の場合もありますが、3分の場合は変数に入れる数字を大まかにして簡単にする、1分の場合は構造式自体を単純にし、数字も大まかにするなど、求められる時間によって完成度を変えて対応することが大事です。逆に5分以上時間が与えられたら、抜けもれない構造化に加え、変数に入れる数字の根拠なども求められます。
面接で求められるケース面接のポイント
例:カフェの売り上げを上げるには
ケース面接で最も重要なのは、施策のアプローチ先の選定、優先順位づけです。すでにフェルミ推定を行っている場合は、構造式の変数の中から売上を最も左右するもの、そして施策次第で数字を動かせるものを選択します。
カフェを例に考えると、大体の場合、売上を最も左右する変数は店舗の数になりますが、店舗の数を増やすことはすぐにはできないし、コストも多くかかります。長期策としては良いかもしれませんが、店舗の数を増やす前に、特定の店舗内でできることを考えるのが現実的です。
レジ台数や稼働率、MAX客数に着目するなどが無難です。また、店舗の立地にもよりますが通勤客が多いエリアなら早朝から店をあけることも有効そうなので営業時間も選択肢に入ってきます。
あとは客単価をあげる選択肢ですね。営業時間ごとの混雑率を大幅に高めるのは難しそうです。立地特性などに左右される要素だし、カフェ利用は朝、昼、午後のティータイムあたりが混みやすく、それぞれ食事や午後の休憩といったように時間に沿った利用目的になっているので、1店舗の力で混雑率を左右させるのは難しいでしょう。優先度は低そうです。
これくらいの内容を頭の中で考えつつ、施策を打つ変数を決めます(優先順位を決める)。店舗数に関しては、効果は高いがコストがかかる施策は長期策として一旦置いておきます。
レジ台数、稼働率、1hあたりMAX客数、営業時間の中で、優先順位を決めます。
レジ台数、稼働率、1hあたりMAX客数はすでに最適化されている可能性が高く、売上向上に大きくは貢献しなさそうです。レジを増やせるスペースはもうないかもしれないし、レジ打ちのオペレーションを改善させる余地も少なそうです。できることはやる、程度の施策になりそうです。
ちなみに、1hあたりMAX客数は店員さんがお客さんを1hで最大何人さばけるか、という意味です。
残された営業時間については、先述の「通勤客が多いエリアなら早朝から店をあける」のように伸び幅がありそうなので、この変数を優先します。
ここから具体的な施策案をいくつか考え、そこから優先順位もつけていきます。
ほかに「繁華街なら夜も人通りが多いから夜遅くまで店をあける」など、取り込めるお客さんの数が多そうです。逆に、全然混んでない時間は休んで仕込みや準備に使う、個人店なら労働時間の調整のために休みの時間にしてしまうなど最適化もできます。もしくは特定の時間だけ貸しスペース業にしてしまえば、より可能性が広がります。
これらの施策の中だと、土地柄混みそうな時間帯には早朝、夜遅くでもオープンするという施策が実行可能性、効果も高く1番目。ガラガラレベルで空いている時間は思い切って貸しスペース業を行うが2番目くらいで優先順位をつけるといいでしょう。
優先度の低い変数に関しては、優先度を低くした理由が言えれば問題ないです。
戦略とは、何をしないか・捨てるか決めることだという言葉がありますが、網羅的に出した要素の中から優先順位をつける(=やらないことを決める)ことを大事にしてください。
売上向上以外のケーステーマ
フェルミ推定、ケース面接に関しては、これまで紹介してきたような特定のビジネスに関するテーマがほとんどです。
しかしファームによって、面接官によっては、違う毛色のケース面接を行う場合もあります。
パブリック系
日本のGDPをあげるには
日本の教育をよくするにはどうすればよいか
ビジネス抽象系
コロナ中、コロナ明けでそれぞれ好調になったビジネス、不調になったビジネスはどんなものがあるか。今後はどうなるか
企業のグローバル化とは何か
M&A系
あるコンビニエンスストアがスマホバッテリー事業を買収しようとしている。 考慮すべき論点はなにか
高級楽器メーカーがイヤホンメーカーの買収を検討している。どのような順番で検討を進めればいいか
パブリック系、ビジネス抽象系に関しては、より大局的な目線が求められますが、構成要素を考えるという点では普段のケースと同じです。
M&A系はマッキンゼーやベインなど高難易度なファームで出題されているイメージです。私は経験がないですが、M&Aコンサルで経験者採用の場合はこのテーマが使われる可能性があると思います。
応募先のファームがどのような案件を多く扱うかで傾向が見えてくることもあります(例えばパブリック系は政府系の案件が多いBCGでよく出されます)。
ファームによってかなり出題テーマが異なる場合もあるため、基本対策に加えて特徴的なテーマも練習しておきましょう。例えば、A.Tカーニーは出題テーマが幅広く、よくあるテーマもあれば、噛み応えのあるテーマも多いです。
次の記事では、ケース対策(全体像)についてより詳しく説明します。どのファームでどれくらいのレベルができていれば良いか、どんな練習をすればよいか、参考にできる本、サイトなどを紹介予定です。