恵みの雨かもしれなかった
原田マハさん「デトロイト美術館の奇跡」。
目の前にするたびに、心がさざめくような、同時にどこまでも静かになるような。そんな作品があることのよろこび。作品じゃなくてもいい、場所でも音楽でも、自分を元気にしてくれるもの。
美術館の扉がまた開かれるのが、自由にのんびり出掛けられるようになるのが、待ち遠しい。それまで本を読みながら、自分の場所でできることをしていよう。
もう何度、この絵の前に佇んだことだろう。けれど、何度向き合っても飽きることがなかった。みつめるほどに、彼女の魅力はフレッドの胸に迫った。
降り続く雨の中で、美術館の正面入り口に掲げられたふたつの旗がそぼ濡れていた。——恵みの雨かもしれなかった。
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