海に帰る

やがて大きな波が来て、子ガメは一度で上手に波に乗り、海に入っていく。波が引いたときにはもう子ガメの姿は見えない。カメは海に帰っていったのだ。それはいかにも、海が海に生きるものを迎えに来たという感じであった。
(若菜晃子/旅の断片 より)

カメの一生がはじまる満月の夜を描いたシーンがなんだか胸に響く。私たちが海に帰るとき、どうかその波は穏やかであってほしいと思う。でも自然が、病いが、どんな波を寄越してくるかを選ぶことはできず、時にあっけなく奪われてしまう。

今を大切に。一緒に生きている時間を、大切に。



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