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指示の出し方と受け方の見直しでQCDを改善:マクロとマイクロのアプローチ
はじめに
こんにちは、ICT系フリーランスの花田です。
今回は、私が2000年初頭に@ITで勉強していまなお有効な、指示の出し方と受け方についてご紹介します。
これは、相手の特性に応じた指示の出し方と受け方の工夫によりプロジェクトの効率と成果を向上させる方法です。
マネージャー視点ではメンバーがどういった指示タイプを好むか、メンバー視点ではマネージャーがどういった指示タイプを好むか、これを見分けお互いにフィードバックすることで、軋轢の予防、モチベーション維持、ケーパビリティ発揮などを期待できます。
プロジェクト内でのコミュニケーションで悩まれている方にとって、参考になればうれしいです。
コメントやDMで所感をいただけたら幸いです。
本記事の要旨
指示の仕方は「目的を伝えて丸投げする方法」と「必要な作業を逐一伝える方法」の2種類があります。
どちらの指示を好む場合でもあっても、背景、目的、作業の意義、マイルストーン、段取りについて認識を合わせましょう。
様々なタイプがいる中でうまくやっていくには、相手が能動型であっても受動型であっても、相手の力量を最大限に引き出す、自身の力量を最大限に発揮する、そのためのノウハウを実践できることが大切です。
1. タイプの整理
人には、能動型と受動型の2つのタイプがあります。
それぞれの特徴を見てみましょう。
能動型
細かい指示を嫌う傾向がある
目的と背景を伝えて後は段取りは考えてもらうほうがQCDが上がりやすい
指示の具体例:新入社員がくるからデスク回りを仕事できる環境に整えて
受動型
細かい指示を好む傾向がある
目的と背景よりも手順的に手が空いたタイミングで作業を指示するほうがQCDが上がりやすい
指示の具体例:1)デスクに電話を置いて、2)LANのHUBを置いて、3)モニターを設置して
この2つのタイプはマネージャーにもメンバーにもいますから、自分が相手にしている人はどちらのタイプなのかを意識して、コミュニケーションすることが大事になってきます。
念のために明記すると、能動型と比較して受動型に対するパッシングを見ることがありますが、能動型と受動型は良し悪しではなくタイプであり、力を発揮できる領域が異なるだけです。
また、能動型と受動型は、ネガティブ思考をポジティブ思考に変えることができることと同じで、後天的に補正することができます。
2. マネージャーから見た工夫
1. 能動型メンバーへの指示
最初に背景、目的、作業の意義、マイルストーンを伝えましょう。
次にいつどんな成果物を出す予定か段取りを確認しましょう。
伝えるマイルストーンはプロジェクト全体の大きなものではなく、依頼する作業のマイルストーンとしてください。
プロジェクトの要所と依頼する作業がどういった関連を持つのかと共に伝えると、メンバーはQCDを意識しやすくなります。
ここで大事なことは、放任主義にはならないことです。
段取りを最初に確認しておき、そのタイミングが近づいてきたら進捗を確認し、状況に応じた打ち手を講じましょう。
もし段取りの可視化が苦手なメンバーがいたら、例えばPFD(プロセス・フロー・ダイアグラム)の作成を依頼するのもよい方策となります。
2. 受動型メンバーへの指示
最初に背景、目的、作業の意義、マイルストーンを伝えましょう。
次にいつどんな成果物を出す予定か段取りを伝えましょう。
能動型との違いは、段取りを作業を依頼するメンバーが作成するのではなく、マネージャー自身またはほかのメンバーが作成するという点です。
受動型は最初に伝えられた要素を知識として蓄えますがあまり活用をしないので、伝達自体がQCDの向上につながるケースは多くはありません。
受動型が欲している情報は具体的な作業内容となりますので、伝達項目に段取りを含めましょう。
このように書くと受動型は能動型より劣っているように見える可能性がありますが、そうではありません。
受動型は、作業の手順書を渡しさえすれば、QCDを意識して成果を上げてくれます。
手順書が必要になる作業は必然的に反復作業が多くなりますが、能動型はこういった作業が苦手な傾向があります。
例えば、ICT系の現場作業はクリエイティブ系とオペレーション系に分けることができます。
受動型はオペレーション系が向いていて、オペレーション系は大抵、手順書ベースで業務を回します。
手順書は1回作ったら軽微な修正で使いまわせることが多く、また新規の手順書作成はそれほど頻繁には発生しないため、手順書作成にかかる工数を大きく見る必要はありません。
3. メンバーから見た工夫
1. マクロマネジメントを好むマネージャーへの対応
背景、目的、作業の意義、マイルストーンに加え、いつどんな成果物を出す予定か段取りを可視化し、マネージャーにレビューを依頼しましょう。
もし一人でたたき台を作成することが難しい場合は、他のメンバーと相談してもいいですし、許されている環境であれば、NDAを結んだ外部の方と壁打ちする、生成AIを使う、という手段もあります。
また、作業を進める中でリスクが見えた場合、その時点ですぐにエスカレーションしましょう。
良く見聞きするのですが、次の打ち合わせのタイミングを待っていてエスカレーションが遅くなった、ということは決してないようにしましょう。
こうした業務の進め方を覚えると、未経験のタスクをこなせるようになっていき、自身の価値や成果を高めることができます。
2. マイクロマネジメントを好むマネージャーへの対応
背景、目的、作業の意義、マイルストーンに加え、いつどんな成果物を出す予定か段取りを可視化し、マネージャーにレビューを依頼しましょう。
最初は荒いたたき台だとしても、マネージャーの頭の中にはマイクロマネジメントができるだけの段取りができているので、照らし合わせてブラッシュアップすることができます。
全体の中のどの部分を作業しているのか、その作業はほかの誰に影響があるのか、などを認識できれば、指示の先回りができるようになります。
能動型にとっては作業しやすい環境を整えることにつながりますし、受動型にとってはコンフォートゾーンから抜け出すきっかけになります。
その結果、マネージャーがマイクロマネジメントのために書けていたパワーをメンバーが少しずつ負担できるようになり、プロジェクト全体のパフォーマンス向上につながります。
おわりに
相手の特性に応じた指示の出し方と受け方の工夫によりプロジェクトの効率と成果を向上させることができます。
もし、プロジェクト内でのコミュニケーションで悩まれている方がいらしたら、試してみてください。
そして、コメントやDMで感想を教えていただけると嬉しいです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
最後に、独自の方法論をお持ちの方がいらっしゃったらぜひ一度会話させてください。
よろしくお願いします。