駿河湾を望む 『獣の戯れ』
神奈川から大阪への引越しを終え、ようやく落ち着きつつあります。
大阪も変わらず暑いのですが、皆様はお元気でしょうか。小まめに水分を取り、お身体にはお気をつけ下さい。
さて、大阪に引越しする前に伊豆に行ってました。目的は二つほどありまして、1つは大阪に持って行けなかった自分のカヤックを伊豆のクラブハウスに預けました。もう1つは、三島由紀夫先生の文学碑を訪ねました。
船首の左に、黄金崎の代赫いろの裸の断崖が見えはじめた。沖天の日光が断崖の真上からなだれ落ち、こまかい起伏は光りにことごとくまぶされて、平滑な一枚の黄金の板のように見える。断崖の下の海は殊に碧い。異様な鋭い形の岩が身をすり合わせてそそり立ち、そのぐるりにふくらんで迫り上った水が、岩の角角から白い千筋の糸になって流れ落ちた。
『獣の戯れ』からの一節を、三島由紀夫先生の父平岡梓氏が選ばれ、駿河湾を眺望できる断崖の一角の文学碑に刻まれてます。私の中では、数多く存在する文学碑の中で、選文の秀逸さは上位にあがります。あれあれ、と思う文学碑もあったりするものです。
駿河湾でもカヤックを出したのですが、海の色が碧く、波も、見える景色も、風も何もかも違います。
切り立った断崖から数十メートルで、水深四十メートルあったりもします。海水浴場などの遠浅特有の穏やかさはありません。牙城のような断崖の屹立です。
『獣の戯れ』の命名された題名とは裏腹に、小説の内容は穏やかに物悲しく流れています。三人の男女の猟奇的な恋の話になりまして、文学碑同様におすすめです。
それでは。
また、花子出版のnoteを更新します。
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文豪方の残された名著を汚さぬよう精進します。