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⑩ 楽しいモーニングセットめぐり

 退院してからハマったもののひとつに、モーニングセットがある。
 主に喫茶店で、ときにファミレスで、ベーカリーカフェで食べるモーニングだ。

 きっかけは、病院にあさイチで検査診察をしに行く際に、「なんか楽しみがないと、めんどくさい」と、まず美味しい朝ごはんを外で食べると決めたのだった。そうじゃないと、病院通いなんて、ダルいだけだ。

  普段の朝食は、試行錯誤の結果、現在は、朝起きて湯を沸かしながら体重や血圧測定→白湯を飲みながらPCチェック→プロテインドリンク→冷凍しているブロッコリーとにんじんをレンジで温め、ゆで卵&低糖シリアルとオートミールに豆乳をかけたものを食べる→ヨーグルト→緑茶というルーティーンだというのは以前書いた。
 この一連の流れは、最低でも30分、そこそこ時間がかかる。朝早めに外食する際などは、めんどくさい。
 なので、週に一度ぐらいの割合になるが、外で朝食を食べることにしている。

 旅館などに出てくる、和の朝食も大好きだけど、外出時のモーニングはほぼパンだ。私が家で、パンを食べないせいかもしれない。たぶん、パンがなくても生きてはいける。パンは好きで美味しいけれど、ついついたくさん食べてしまいそうになるので、家では制御しているのかもしれない。
 そのせいか、外でモーニングをする際は、トースト、サラダ、卵料理、珈琲のセットのものを食べる。
 卵がもともと好きなので、卵料理が入っているモーニングセットを優先する。

 最初の頃は、病院は毎月で、それが今は二ヶ月に一度になった。検査結果によっては落ち込むこともあるし、やはり病院は楽しいところではないけれど、朝食べるモーニングセットが楽しみだから、通っている。
「検査と診察というめんどくさいことをやるための、自分へのご褒美」が、モーニングセットだ。
 あさイチ、空腹の状態で食べるバタートーストの美味しさは、退院してから初めて知った気がする。

  モーニングセットには、バターたっぷりのトースト、ベーコンやハム、サラダにはドレッシングがたっぷりかかっていて、決してヘルシーなものではない。でも、週に一度、十日に一度の楽しみだから、まあいいかということにした。
 家で毎朝食べる、野菜とシリアルの朝食も、美味しいのは美味しいけれど、ときどき味気ないなと思うことはある。だからときに、外でモーニングを食べる時間が、私には必要だ。

  それと、もともと近年はあまり飲まなかったのが、入院生活を経て、夜に外出して飲みに行くという機会が、ほとんどなくなった。自分はたぶん、酒が無くても生きていける。
 若い頃は、浴びるように、美味しいなどと思わず、酔うためにむちゃくちゃ飲んでいたのに。
 そうなってから、段々と、喫茶店が好きになってきた。病院通いのモーニングセット以外でも、時間があれば喫茶店に行く。
 珈琲や、ちょっとばかりの甘いもの、サンドイッチを食べて、ぼーっと過ごすのが、何よりの安らぎだ。小説やエッセイのネタを考える際に、家だと思いつかないことが多く、喫茶店でノートとにらめっこしてネタをひりだすことが多い。

 たまに旅行に出かけても、以前は夜にひとりで飲みに行くのが楽しみだったが、最近はその土地土地の喫茶店を巡ることが増えた。
 ただ、喫茶店巡りするにも、ひとつ難点がある。私は煙草が苦手なのだ。 だいたい、地方に行けば行くほど、「純喫茶」と呼ばれる、古き良きクラシックな喫茶店は喫煙可だ。長居はできない。珈琲頼んで、飲んで、すぐ出てきてしまう。煙草の煙が耐えれれない。
「純喫茶めぐり」は、煙草嫌いの人間は向いてない。とはいえ、最近は禁煙の喫茶店も増えたし、問題はない。
 チェーンのカフェも大好きだ。前述のように煙草の匂いもしないし、あと、誰にもかまわれないのがいい。特に好きなのがドトールで、食べものが美味しい。大豆ミートのバーガーのような、減量中にふさわしいたんぱく質メニューもある。しかも美味しいし。

  飲みに行かなくなったのは、健康上のこともあるけれど、バーやスナックなどの空間には煙草が欠かせないし、「シニカケ日記」にも書いたが、何より狭くて人が多い場所、騒いでる場所が怖くなったのもあるかもしれない。心臓をやられ、糖尿病&高血圧で、コロナどころか風邪を引いても重症化するといわれている身になったので、人が密集して騒いでいる場所は、もう恐怖に近い。動悸がして、息苦しくなる。
 そうなると、酒の席は、もうリスクしかないのだ。

  それにしても、若い頃は、家にきつい酒を置いて、毎日ぐでんぐでんになるまで飲んでいた自分が、こんな生活をするようになるなんて、信じられない。
 病気で倒れなければ、もうちょっと違う生活をしていただろうけれど、結果的にはよかった。これから年を取るだけだから、身体はどんどん老化して駄目になっていくのだもの。
 退院後の健康的な生活で、心身共に楽になった。

 若い頃は、まさか自分がこんな生活を送るなんて、思いもよらなかった。

 病気、いろんな意味で、おそるべし。

 

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